第108回

108AM026|第108回 保健師国家試験 過去問

平成30年(2018年)の労働安全衛生調査(実態調査)で、労働者の仕事や職業生活における強い不安、悩み、ストレスの内容に関して最も割合が高いのはどれか。

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正解5

正答

5.仕事の質・量

この問題のポイント

厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)で、労働者が挙げた「強い不安、悩み、ストレス」の内容の順位を問う問題です。平成30年調査では「仕事の質・量」が約6割で第1位となり、「仕事の失敗、責任の発生等」と「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が3割台で続きました。調査の種類や年次によって項目名や順位が変わることに注意しましょう。さらに、この結果が職場のメンタルヘルス対策(ストレスチェック制度や職場環境改善)にどう結びつくかまで理解しておくと、関連問題にも対応できます。

解説

問題文の手がかりは「平成30年(2018年)」「労働安全衛生調査(実態調査)」「最も割合が高い」の3点です。この種の統計は、調査の種類や年次によって項目の立て方や順位が異なります。そのため、どの調査の何年の結果を問われているかを確認してから判断します。

調査の仕組み

労働安全衛生調査(実態調査)は、厚生労働省が行う統計調査です。事業所を対象とする事業所調査と、そこで働く労働者を対象とする個人調査で構成されています。本問の内容は個人調査の結果です。

個人調査ではまず、現在の仕事や職業生活に関して、強い不安、悩み、ストレスとなっている事柄があるかを尋ねます。「ある」と答えた労働者には、その内容を主なもの3つ以内で選んでもらいます。複数回答なので、各項目の割合を合計すると100%を超えます。割合の分母は労働者全体ではなく「強いストレスとなっている事柄がある労働者」である点も押さえておきましょう。

平成30年調査の結果

  • 強いストレスとなっている事柄がある労働者は58.0%で、労働者のおよそ6割にあたります。
  • その内容は「仕事の質・量」が59.4%で最も多く、2位以下を大きく引き離しています。
  • 2位は「仕事の失敗、責任の発生等」の34.0%、3位は「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」の31.3%です。
  • 「役割・地位の変化等」や「会社の将来性」は、上位3項目より低い割合です。

前年(平成29年)の調査でも「仕事の質・量」が第1位でした。仕事の負荷そのものが最大のストレス要因であるという構図は、一時的なものではありません。

その後の調査での項目の変更

本問の平成30年調査を含め、令和2年調査までは「仕事の質・量」が1つの項目でした。令和2年調査でも、この項目が56.7%で第1位です。令和3年調査からは「仕事の量」と「仕事の質」に分けて集計されるようになりました。同年の結果は、「仕事の量」43.2%が第1位、「仕事の失敗、責任の発生等」33.7%が第2位、「仕事の質」33.6%が第3位でした。

このため、令和2年以前の「仕事の質・量」の割合と、令和3年以降の「仕事の量」「仕事の質」の割合は、そのまま比較できません。ただし、令和3年調査の上位3項目もすべて仕事の負荷や責任に関するものです。仕事そのものが主なストレス要因であるという読み取りは変わりません。

職場のメンタルヘルス対策との結びつき

仕事の量的・質的な負担は、Karasekの仕事の要求度-コントロールモデルでいう「仕事の要求度」にあたります。要求度が高く裁量(コントロール)が低い「高ストレイン」の状態で、ストレス反応が強まるとされます。このモデルに社会的支援を加えた要求度-コントロール-支援モデルでは、上司や同僚からの支援が、その影響を和らげる要因とされます。

ストレスチェックで標準的に用いられる職業性ストレス簡易調査票(57項目)も、次のような内容を測定します。

  • 心理的な仕事の負担(量・質)
  • 仕事のコントロール度
  • 上司・同僚からの支援
  • 心身のストレス反応

ストレスチェック制度の要点は次のとおりです。

  • 労働安全衛生法に基づく制度で、2015年12月に施行されました。
  • 出題当時は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施義務があり、50人未満の事業場は努力義務でした。その後、2025年の法改正で、50人未満の事業場にも義務が拡大されることになりました(施行は公布後3年以内)。
  • 実施者は、医師、保健師、または所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。
  • 結果は本人に直接通知され、本人の同意なく事業者に提供することはできません。
  • 高ストレス者として面接指導が必要とされた労働者が申し出た場合、事業者には医師による面接指導を行う義務があります。
  • 集団分析と、それに基づく職場環境改善は努力義務です。

産業保健に携わる保健師にとって、この調査結果は大切な視点を示しています。ストレスの最大の要因が仕事の質・量である以上、個人のセルフケアを支援するだけでは十分ではありません。基本となるのは、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が示す4つのケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)を組み合わせることです。なかでも、業務量の調整、業務分担や手順の見直し、裁量の拡大といった職場環境の改善を、事業者や管理監督者とともに進めることが対策の柱になります。

選択肢の確認

1.役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換等):昇進・昇格や配置転換に伴う役割や責任の変化を挙げる労働者も一定数います。しかし平成30年調査では上位3項目に入っておらず、最も割合が高い項目ではありません。異動や昇進の時期に不調が表れやすいことは、産業保健の実践では大切な視点です。ただし、全体の順位は高くないことと区別して覚えます。

2.対人関係(セクハラ・パワハラを含む。):平成30年調査では31.3%で第3位でした。ハラスメント対策が社会的に注目されているため最多と思い込みやすい項目ですが、上位2項目より低い割合です。また、労働安全衛生調査が始まる前の平成24年の労働者健康状況調査では、「職場の人間関係の問題」が最も多くなっていました。古い資料の知識と混同しないよう注意します。

3.仕事の失敗、責任の発生等:平成30年調査では34.0%で第2位でした。ミスへの不安や責任の重さは上位に入る要因です。しかし、約6割を占める選択肢5との差は大きく、最多ではありません。

4.会社の将来性:経営状況や業績の先行きへの不安を指す項目で、平成30年調査では上位3項目に入っていません。業績悪化や組織再編が起きている職場では意識されやすい不安です。ただし全体としては、仕事そのものの負荷、失敗・責任、対人関係に比べて低い割合です。

5.仕事の質・量:正答。平成30年調査では、強いストレスとなっている事柄がある労働者の59.4%がこの項目を挙げ、第1位でした。業務量の多さや時間的な切迫、求められる内容の難しさや水準の高さなど、仕事の負荷そのものを表す項目です。前年の平成29年調査や令和2年調査でも第1位で、職場の代表的なストレス要因といえます。

覚えるポイント

  • 平成30年の労働安全衛生調査(実態調査)では、強いストレスとなっている事柄がある労働者は58.0%(約6割)でした。
  • 同調査のストレスの内容は、1位「仕事の質・量」59.4%、2位「仕事の失敗、責任の発生等」34.0%、3位「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」31.3%です。主なもの3つ以内の複数回答で、分母はストレスとなる事柄がある労働者です。
  • 「仕事の質・量」は令和2年調査まで1つの項目でした。令和3年調査から「仕事の量」と「仕事の質」に分けて集計されています。問われている調査年に合わせて、項目名を読み分けます。
  • 仕事の要求度が高く、裁量が低い状態がストレスを強めます(Karasekの仕事の要求度-コントロールモデル)。仕事の量・質が最大の要因であることから、セルフケア支援に加えて、業務量や業務内容の見直しといった職場環境の改善が重要です。
  • ストレスチェックは労働安全衛生法に基づき年1回行います。出題当時は常時50人以上の事業場で義務(50人未満は努力義務)でした。結果は本人に通知し、本人の同意なく事業者へ提供することはできません。面接指導が必要とされた高ストレス者が申し出た場合は、医師による面接指導を行います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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