第108回
108AM027|第108回 保健師国家試験 過去問
リスクコミュニケーションに当てはまる活動はどれか。
解答・解説を見る
正解1
正答
1.民生委員の会合でハザードマップを確認する。
この問題のポイント
リスクコミュニケーションの定義を理解し、リスク評価やリスク管理と区別できるかを問う問題です。判断の鍵は2つあります。1つは、関係者の間で情報や意見を相互にやりとりし、リスクの理解を共有する「双方向性」です。もう1つは、行政だけでなく住民や地域の担い手が参加しているかどうかです。選択肢の動作を「調べる・予測する」「組織する・策定する」「共有する・話し合う」に分けて考えると判断しやすくなります。
解説
リスク分析を構成する3つの要素
健康危機や災害への備えは、食品安全の分野で整理されたリスク分析の考え方で説明されることが多く、次の3つの要素で構成されます。
- リスク評価(リスクアセスメント):危害の原因(ハザード)を特定し、起こりやすさや影響の大きさを科学的に見積もる活動です。被害想定、原因究明、疫学調査などが当たります。
- リスク管理(リスクマネジメント):評価の結果をふまえて、リスクを減らすための方針や対策を決め、体制を整えて実行する活動です。計画策定、組織づくり、規制、人や物資の配置などが当たります。
- リスクコミュニケーション:リスク分析の全過程を通じて、行政、専門家、住民、事業者などの関係者が、リスクに関する情報や意見を相互に交換し、理解と信頼を深める活動です。
3つは順番に進む別々の段階ではなく、互いに関連しながら並行して進みます。リスクコミュニケーションは、専門家が決めたことを一方的に知らせる広報とは異なります。受け手の不安や疑問、地域の実情を聞き取り、それを管理側の判断に反映させる双方向の過程である点が本質です。
選択肢1がリスクコミュニケーションに当たる理由
ハザードマップは、洪水・土砂災害・津波などで被害が想定される区域や、避難場所・避難経路を地図上に示したもので、市町村が作成・公表しています。地図そのものは被害想定(リスク評価)の成果物です。しかし、それを民生委員の会合で一緒に確認する場面では、次のような双方向のやりとりが生まれます。
- 行政が持つリスク情報を、地域の担い手に伝える。
- 民生委員が、担当地区の高齢者や障害者の住まい、避難の難しさなどの実情を行政に返す。
関係者が同じ情報を見ながらリスクの認識をそろえ、意見を交わす点で、リスクコミュニケーションの典型例といえます。
民生委員は、民生委員法に基づき厚生労働大臣から委嘱され、児童委員も兼ねる地域の相談・支援の担い手です。災害対策では、市町村が作成する避難行動要支援者名簿の提供先(避難支援等関係者)となり、安否確認や避難支援に関わります。平常時に名簿を提供するには、原則として本人の同意が必要です。平常時からハザードマップを通じてリスクを共有しておくことは、発災時の要配慮者支援に直結します。
保健師活動との関係
保健師は、地区組織や住民の会合、健康教育の場を通じて、災害・感染症・食品などのリスク情報を住民と共有し、住民の受け止め方を把握する立場にあります。防災訓練、地域の防災マップづくり、感染症流行時の住民説明会なども、情報を伝えるだけで終わらせず住民の声を施策に生かす場とすれば、リスクコミュニケーションになります。
なお、危機の発生中・発生直後に行う迅速な情報発信はクライシスコミュニケーションと呼ばれます。平常時から継続的に行うリスクコミュニケーションとは区別されることがあります。
選択肢の確認
1.民生委員の会合でハザードマップを確認する。:正答。行政が示すリスク情報を地域の支援の担い手と共有し、地区の実情や意見を交わしながら理解をそろえる活動です。関係者間で情報と意見を相互に交換するという、リスクコミュニケーションの定義に合致します。
2.災害派遣医療チーム〈DMAT〉を組織する。:DMATは、災害急性期(おおむね48時間以内)に被災地で活動できるよう専門的な訓練を受けた医療チームで、医師・看護師・業務調整員で構成されます。これを組織することは対応体制を整えるリスク管理に当たり、関係者との情報・意見の交換そのものではありません。
3.災害が起こったときの被害を予測する。:地震や豪雨などが起きた場合の人的・物的被害の規模や範囲を見積もる被害想定は、リスクの大きさを科学的に見積もるリスク評価に当たります。予測結果を住民に説明して意見を交わす段階になって、初めてリスクコミュニケーションになります。
4.食中毒の原因となる菌を調べる。:食中毒が発生すると、保健所は患者・食品・施設を調査し、原因菌や原因食品を特定します。これは危害の原因を明らかにする活動で、リスク評価(原因究明)に位置づけられます。調査結果を公表し、再発防止について事業者や住民と話し合う場面があれば、コミュニケーションの要素が加わります。
5.市の防災基本計画を策定する。:災害への備えや対応の方針を計画として定めることは、対策を体系化するリスク管理に当たります。なお災害対策基本法では、防災基本計画は国の中央防災会議が作成し、市町村は市町村防災会議が地域防災計画を作成する仕組みです。策定の過程で住民の意見を聴くことはあっても、策定そのものは管理の活動です。
覚えるポイント
- リスク分析は3つの要素で構成されます。リスク評価は科学的に見積もる、リスク管理は対策を決めて実行する、リスクコミュニケーションは関係者間で情報・意見を相互に交換する活動です。
- 選択肢は動作で見分けます。「調べる・予測する」は評価、「組織する・策定する・規制する」は管理、「関係者と共有する・話し合う」はコミュニケーションです。
- リスクコミュニケーションの本質は、双方向性、関係者の参加、信頼の構築です。一方的な広報とは区別し、危機発生時の迅速な情報発信(クライシスコミュニケーション)とも区別して整理します。
- 災害対策基本法では、防災基本計画は中央防災会議が作成し、地域防災計画は都道府県・市町村の防災会議が作成します。
- DMATは、災害急性期(おおむね48時間以内)に活動する訓練を受けた医療チームです。精神保健医療を担うのはDPAT(災害派遣精神医療チーム)です。
- 避難行動要支援者名簿は市町村が作成します。平常時に民生委員などの避難支援等関係者へ提供する際は、原則として本人の同意が必要です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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