第108回

108PM028|第108回 保健師国家試験 過去問

平成29年(2017年)患者調査の疾病分類別の結果を表に示す。【表】 |受療率(人口10万対)||平均在院日数(日) |外来|入院| A|1|2|54.1 B|145|100|17.1 C|206|199|277.1 D|702|180|38.1 E|1,021|52|10.8 【表ここまで】 Cに当てはまる疾患はどれか。

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正解5

正答

5.精神および行動の障害

この問題のポイント

患者調査の傷病分類ごとに、外来受療率・入院受療率・平均在院日数の特徴を読み分ける問題です。Cの決め手は2つあります。平均在院日数が277.1日と、ほかの行(10.8〜54.1日)より桁違いに長いこと。そして入院受療率(199)が外来受療率(206)とほぼ同じ高さにあることです。これは長期入院が多い精神及び行動の障害の特徴です。残りの4行も、疾患の特徴から割り付けて確認できます。

解説

表は、平成29年患者調査の5つの傷病分類を並べたものです。受療率(人口10万対)を外来と入院に分けて示し、右端に平均在院日数(日)を載せています。Cの2つの特徴が何を意味するかは、これらの指標の求め方を知ると理解しやすくなります。

患者調査の指標の意味

患者調査は、厚生労働省が3年ごとに行う基幹統計調査です。対象は、層化無作為抽出した病院・一般診療所・歯科診療所です。10月中旬の、施設ごとに決めた1日に受療した入院・外来の患者と、9月の1か月間に退院した患者を調べます。

  • 受療率(人口10万対):調査日に受療した推計患者数を、人口10万人あたりに換算した値です。ある1日を切り取った断面の数値です。
  • 平均在院日数:9月中に退院した患者の在院日数を平均した値です。

入院受療率は断面の数値なので、入院する人の多さだけでなく入院期間の長さにも左右されます。考え方は「有病率≒罹患率×平均有病期間」と同じです。入院が長く続く疾患ほど、調査日に入院している患者が積み上がり、入院受療率が高く出ます。

Cが精神及び行動の障害である理由

表のDやEのように、多くの傷病では外来受療率が入院受療率を大きく上回ります(平成29年患者調査の全傷病の総数では5倍以上)。ところがCは外来206・入院199と両者がほぼ並んでいます。平均在院日数277.1日も、ほかのどの行の5倍以上です。これは入院が年単位に及ぶ患者が多いことを示すパターンで、精神及び行動の障害の特徴です。入院受療率も表の中でCが最も高く、循環器系のDが続きます。

精神及び行動の障害の入院患者で最も多いのは統合失調症などです。気分障害や、血管性及び詳細不明の認知症もこの分類に含まれます。ただし、アルツハイマー病は「神経系の疾患」に分類され、ここには入りません。

わが国は人口あたりの精神病床数が国際的にみて多く、長期入院が長年の課題です。その中には、症状が安定していても退院後の住まいや支援が整わないために入院が続く「社会的入院」も含まれます。国は精神保健医療福祉の改革ビジョン(2004年)で「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針を示しました。現在は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムづくりを進めています。保健師が長期入院者の地域移行・地域定着支援に取り組む理由を、数字で裏づける統計といえます。なお、その後の患者調査でも、この分類の平均在院日数がほかより桁違いに長い傾向は変わっていません。

ほかの行の割り付け

  • A(外来1・入院2・54.1日)=結核:受療率が極めて低く、患者数の少ない疾患です。ただし、喀痰塗抹陽性の肺結核など感染性のある患者は、感染症法(結核は二類感染症)に基づく入院勧告の対象です。菌の陰性化が確認されるなど感染のおそれがなくなるまで入院するため、在院日数は約2か月と長めになります。入院が外来を上回るのは表でAだけで、入院期間の長さが断面の数値に表れています。標準治療は6か月以上続くため、退院後は保健所がDOTS(直接服薬確認療法)で服薬の継続を支えます。
  • B(外来145・入院100・17.1日)=悪性新生物〈腫瘍〉:手術や化学療法のための入院が多く、入院受療率は高めです。一方で、治療の低侵襲化や外来化学療法の普及により、入院期間は短くなっています。
  • D(外来702・入院180・38.1日)=循環器系の疾患:高血圧性疾患の通院が多いため外来受療率が高くなります。脳血管疾患の入院(リハビリテーションを含む)で入院受療率も高く、外来・入院とも上位の分類です。心疾患のカテーテル治療のような短期入院も含むため、在院日数は中程度になります。
  • E(外来1,021・入院52・10.8日)=消化器系の疾患:患者調査は歯科診療所も対象とし、う蝕や歯肉炎及び歯周疾患は「消化器系の疾患」に分類されます。そのため外来受療率が最も高くなります。入院は急性期の短期入院が中心で、在院日数は表の中で最も短くなっています。

表の問題では、まず極端な値(ここでは277.1日)で1行を確定させます。残りを疾患の特徴で埋め、全体のつじつまが合うか確かめると確実です。

選択肢の確認

1.結核:外来1・入院2と受療率が極めて低いAに当てはまるため、Cには該当しません。感染性のある患者は感染症法に基づく入院勧告で入院治療を受けるので、在院日数は54.1日と長めです。それでも2か月程度であり、Cの277.1日には遠く及びません。

2.消化器系の疾患:外来受療率が1,021と最も高く、平均在院日数が10.8日と最も短いEに当てはまります。歯科診療所で治療するう蝕や歯周疾患までこの分類に含まれるため、外来が非常に多くなります。一方、入院は短期で終わるものが中心で、長期入院が特徴のCとは正反対の姿です。

3.循環器系の疾患:外来702・入院180・平均在院日数38.1日のDに当てはまります。高血圧性疾患の通院と脳血管疾患の入院で外来・入院とも受療率は高いものの、在院日数はCの7分の1程度です。入院受療率の高さだけを見るとCと迷いやすいので、在院日数で区別します。

4.悪性新生物〈腫瘍〉:入院受療率100・平均在院日数17.1日のBに当てはまります。死因の第1位を占め、手術や化学療法のための入院は多い疾患です。しかし、治療の低侵襲化や外来化学療法の普及で入院は短期化しており、年単位の入院が多いCの姿とは合いません。

5.精神および行動の障害:正答。平均在院日数277.1日という突出した長さと、入院受療率199が外来受療率206とほぼ並ぶ点が、長期入院の多いこの分類の特徴と一致します。入院の中心は統合失調症などで、社会的入院を含む長期入院が在院日数を押し上げています。

覚えるポイント

  • 患者調査は厚生労働省が3年ごとに行う基幹統計調査です。受療率は10月の1日を切り取った断面の値、平均在院日数は9月中の退院患者から求めます。病床の種類別(精神病床・一般病床など)の平均在院日数は病院報告で示され、計算方法も異なります。
  • 平均在院日数が桁違いに長く、入院受療率も最も高いのは「精神及び行動の障害」です(平成29年患者調査で平均在院日数277.1日)。入院の中心は統合失調症などで、アルツハイマー病はこの分類ではなく「神経系の疾患」に入ります。
  • 外来受療率の最上位は、う蝕・歯周疾患を含む「消化器系の疾患」です。「循環器系の疾患」は、高血圧性疾患の通院と脳血管疾患の入院により、外来・入院とも受療率が高くなります。
  • 結核は受療率が極めて低くても、感染症法に基づく入院で在院日数は長めです。悪性新生物は入院受療率が高めでも在院日数は短めです。対比で押さえます。
  • 受療率や有病率のような断面の値は「発生の多さ×期間の長さ」で決まります。長期入院の疾患ほど入院受療率が高く出ます。

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