第108回

108PM021|第108回 保健師国家試験 過去問

平成29年度(2017年度)の傷病分類別医科診療医療費で、医療費が最も多いのはどれか。

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正解3

正答

3.循環器系の疾患

この問題のポイント

厚生労働省「国民医療費」の傷病分類別医科診療医療費で、どの疾患群に最も医療費が使われているかを問う保健統計の問題です。循環器系の疾患が医科診療医療費の約2割を占めて第1位です。循環器系の疾患には、患者数が多く長期の通院と服薬が続く高血圧性疾患と、入院やリハビリテーションを要する脳血管疾患・心疾患が含まれます。死因順位(悪性新生物が第1位)や患者調査の受療率の順位と混同しないことが判断の鍵です。

解説

国民医療費の範囲

国民医療費は、その年度に医療機関などで保険診療の対象となりうる傷病の治療に使われた費用の推計です。

  • 含まれるもの:医科診療医療費、歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費、療養費など
  • 含まれないもの:正常な妊娠・分娩、健康診断や予防接種など健康の維持・増進を目的とする費用、固定した身体障害のための義眼・義肢など、差額ベッドなどの保険外の患者負担

このうち医科診療医療費は国民医療費の約7割を占めます。本問の「傷病分類別医科診療医療費」は、医科診療医療費を主傷病ごとに、ICD-10に準拠した分類で集計したものです。歯科診療医療費と薬局調剤医療費はこの集計に入らない点に注意します。

平成29年度の順位

平成29年度(2017年度)の国民医療費(厚生労働省)では、順位は次のとおりです。

  • 第1位:循環器系の疾患(医科診療医療費の約2割)
  • 第2位:新生物〈腫瘍〉(約1割半ば)
  • 以下:筋骨格系及び結合組織の疾患、損傷・中毒及びその他の外因の影響など

呼吸器系・消化器系・精神の疾患は、いずれも1割に届きません。年齢階級別にみると、65歳未満では新生物〈腫瘍〉が最多、65歳以上では循環器系の疾患が最多です。国民医療費の約6割は65歳以上に使われているため、全体では循環器系の疾患が第1位になります。

循環器系の疾患が多くなる理由

  • 高血圧性疾患:患者数が非常に多い傷病で、降圧薬による治療と定期通院が長年続きます。
  • 脳血管疾患:急性期の治療に加え、入院が長期化しやすく、回復期リハビリテーションや後遺症への対応も必要です。
  • 虚血性心疾患・心不全:カテーテル治療や手術を行うことがあり、心不全では増悪による再入院を繰り返しがちです。

「患者数の多さ」と「1人あたりの治療期間の長さ」の両方がそろうため、総額が大きくなります。なお、人工透析の原因となる慢性腎臓病・腎不全は「腎尿路生殖器系の疾患」に分類され、循環器系には入りません。

他の統計との違い

  • 人口動態統計(平成29年):死因の第1位は悪性新生物で、心疾患、脳血管疾患が続きます。
  • 患者調査(平成29年):入院受療率が最も高いのは精神及び行動の障害、外来受療率が最も高いのは消化器系の疾患(歯科疾患を含む)です。

「死亡数」「受療している患者数」「医療費」では、それぞれ第1位の傷病が異なります。どの統計の何の指標を問われているかを確認してから答える習慣が大切です。

保健師活動とのつながり

医療費で循環器系の疾患が最多であることは、高齢者医療確保法に基づく特定健康診査・特定保健指導など、生活習慣病の発症予防と重症化予防に取り組む根拠になります。市町村の保健師が国保データベース(KDB)などで地域の医療費を分析すると、高血圧や脳血管疾患の医療費が大きな割合を占めることが多く、優先課題を決める材料になります。

令和に入ってからの年度の国民医療費でも、循環器系の疾患が第1位、新生物〈腫瘍〉が第2位という順位は続いています。

選択肢の確認

1.精神および行動の障害:患者調査では入院受療率が最も高い分類で、統合失調症などで入院期間が長いことが特徴です。しかし医科診療医療費に占める割合は1割に満たず、総額では選択肢3や選択肢5に及びません。「入院患者が多い」ことを「医療費が最多」と取り違えやすい選択肢で、入院受療率を問う問題であれば正答になります。

2.呼吸器系の疾患:肺炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、急性上気道感染症などを含み、受療者は多い分類です。ただし急性上気道感染症のように1件あたりの医療費が小さいものが多く、医科診療医療費に占める割合は1割未満です。総額は選択肢3や選択肢5を大きく下回ります。肺炎が高齢者の死因の上位にあることから、医療費も多いと誤解しやすい点に注意します。

3.循環器系の疾患:正答。高血圧性疾患、脳血管疾患、虚血性心疾患・心不全などを含み、平成29年度の傷病分類別医科診療医療費で約2割を占めて第1位です。患者数の多さと、長期の通院・服薬、入院、リハビリテーションが重なることが、総額を押し上げています。

4.消化器系の疾患:患者調査の外来受療率では最も高い分類ですが、これはう蝕や歯周病などの歯科疾患がこの分類に含まれるためです。傷病分類別医科診療医療費は歯科診療医療費を含まないので、この分類の医療費は1割に届かず、選択肢3には及びません。外来受療率の順位と医療費の順位を混同すると選びやすい選択肢です。

5.新生物〈腫瘍〉:手術・薬物療法・放射線療法など高額な治療が多く、医科診療医療費は第2位(約1割半ば)です。65歳未満に限れば最も多く、人口動態統計の死因でも悪性新生物が第1位です。しかし全年齢の総額では選択肢3に次ぐ位置です。「死因第1位=医療費第1位」と考えると誤る、最も紛らわしい選択肢です。

覚えるポイント

  • 傷病分類別医科診療医療費は、第1位が循環器系の疾患(約2割)、第2位が新生物〈腫瘍〉です。65歳未満では新生物、65歳以上では循環器系が最多です。
  • 「死因の第1位は悪性新生物、医療費の第1位は循環器系の疾患」と、統計による順位の違いをセットで覚えます。
  • 患者調査の受療率は、入院では精神及び行動の障害、外来では消化器系の疾患(歯科疾患を含む)が最も高くなります。
  • 国民医療費には、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種、義眼・義肢、差額ベッドなどの保険外負担は含まれません。医科診療医療費は全体の約7割です。
  • 国民医療費の約6割は65歳以上に使われています。財源は保険料が約5割、公費が約4割、患者負担が約1割です。
  • 人工透析の原因となる腎不全は腎尿路生殖器系、歯科疾患は消化器系に分類されるなど、ICD-10の大分類の範囲も確認しておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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