第109回

109PM030|第109回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

平成23年(2011年)から平成29年(2017年)までの日本の精神疾患患者の動向で正しいのはどれか。2つ選べ。

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正解2・5

正答

2.気分障害の患者数が最も多い。
5.Alzheimer〈アルツハイマー〉病の患者数は増加傾向である。

この問題のポイント

厚生労働省の患者調査にもとづいて、精神疾患を有する患者数の推移を問う保健統計の問題です。押さえるべき流れは3点です。総数と外来は増加し、入院は減少していること。疾患別では3回の調査を通じて気分障害が最多であること。高齢化に伴って、アルツハイマー病などの認知症と75歳以上の外来患者が増えていること。選択肢1・3・4はいずれもこの流れと逆向きの記述なので、傾向の向きを正しく押さえていれば2つの正答を選べます。

解説

精神疾患の患者数は、3年ごとに実施される厚生労働省の患者調査で把握します。用いるのは「総患者数」です。調査日に医療施設を受診していなくても、継続的に医療を受けている人を含めて推計した数です。設問の平成23年から平成29年は、平成23年・26年・29年の3回の調査にあたります。なお平成23年の調査は、東日本大震災の影響で宮城県の一部と福島県を除いて集計されています。

全体の動き

  • 総患者数は調査のたびに増加し、平成29年の患者調査では約420万人です。
  • 増加の大部分は外来患者によるものです。
  • 入院患者数は約30万人で、緩やかな減少が続いています。

入院が減っている背景には、「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の方向性があります。長期入院者の地域移行・地域定着の支援や、精神病床の機能分化が進められてきました。平成29年(2017年)には「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築という理念も示されています。保健師は退院後の地域生活を支える立場でこの流れに関わります。入院と外来で推移が逆向きであることは、実践のうえでも重要です。

疾患別の内訳
傷病分類別にみると、うつ病や双極性障害を含む気分障害が、平成23年・26年・29年の3回の調査すべてで最も多くなっています。平成29年の患者調査では、気分障害が127.6万人で最多でした。次いで、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害が83.3万人です。これには不安障害や適応障害などが含まれ、以下「神経症性障害等」とします。その次が統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害で79.2万人です。以下「統合失調症等」とします。

ただし、2番目は年次によって異なります。平成23年・26年は、気分障害に次いで統合失調症等が多くなっていました。この期間に神経症性障害等が大きく増えたことで、平成29年に順位が入れ替わっています。

一方、入院患者に限ると統合失調症等が最も多くなります。「総数・外来の最多」と「入院の最多」が異なる点は、繰り返し問われる混同ポイントです。

高齢化の影響
アルツハイマー病の患者数は、3回の調査を通じて増加しています。背景として次の2点が挙げられます。

  • 高齢化の進展
  • 認知症の早期診断・早期対応を進める施策(認知症施策推進総合戦略〈新オレンジプラン〉など)の広がり

年齢階級別の外来患者数でも、75歳以上が増えています。認知症は高齢になるほど多くなります。そのため、アルツハイマー病の増加と75歳以上の外来患者の増加は、同じ高齢化の流れとして理解できます。

統計を読むときの注意
受療者数の増加は、必ずしも病気そのものが増えたことを意味しません。精神疾患への理解が広がり、職域や地域でのメンタルヘルス対策が進んだことで、受診につながる人が増えた影響も含まれます。保健統計を読むときは、この区別を意識しておくことが大切です。

選択肢の確認

1.総患者数は減少傾向にある。:患者調査で精神疾患を有する総患者数は、平成23年・26年・29年と調査のたびに増え、平成29年には約420万人に達しています。外来患者の大幅な増加が総数を押し上げており、減少傾向ではありません。減っているのは入院患者数なので、選択肢3の内容と取り違えないようにします。

2.気分障害の患者数が最も多い。:正答。うつ病・双極性障害などを含む気分障害は、傷病分類別の総患者数で、平成23年・26年・29年のいずれの調査でも最多です。平成29年は、気分障害127.6万人に、神経症性障害等83.3万人、統合失調症等79.2万人が続きます。一方、平成23年・26年は統合失調症等が2番目でした。入院患者に限ると統合失調症等が最多になるため、「どの集団での最多か」も区別して覚えます。

3.入院患者数は増加傾向に転じている。:入院患者数は約30万人規模で、この期間も緩やかな減少が続いています。これは長期入院者の地域移行の推進や精神病床の機能分化による動きで、「増加に転じた」という事実はありません。外来患者や総数が増えていることと混同させる選択肢です。

4.外来患者数では75歳以上の患者が減少傾向にある。:年齢階級別の外来患者数では75歳以上が増加しており、減少傾向とは逆の動きです。高齢化に伴う認知症の外来受療の増加が背景にあり、選択肢5と同じ流れで判断できます。

5.Alzheimer〈アルツハイマー〉病の患者数は増加傾向である。:正答。高齢化の進展と、認知症の早期発見・早期受診を促す施策の広がりを背景に、アルツハイマー病の患者数は3回の調査を通じて増加しています。精神疾患の総患者数の増加にも寄与しており、75歳以上の外来患者の増加とも結びついた動きです。

覚えるポイント

  • 精神疾患を有する総患者数(患者調査)は増加傾向で、平成29年は約420万人です。増加の主体は外来患者です。
  • 入院患者数は約30万人で減少傾向です。「入院医療中心から地域生活中心へ」という施策の流れとセットで覚えます。
  • 疾患別の最多は、総数・外来では気分障害、入院では統合失調症等です。総数の2番目は、平成23年・26年は統合失調症等、平成29年は神経症性障害等です。
  • 高齢化を背景に、アルツハイマー病などの認知症と、75歳以上の外来患者が増加しています。
  • 精神疾患は、平成25年度(2013年度)からの医療計画で5疾病の1つに位置づけられています。
  • 令和2年(2020年)の患者調査から、総患者数の推計方法が変更されました。同年の精神疾患の総患者数は600万人を超えましたが、それ以前の年次とは単純に比較できません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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