第108回
108AM012|第108回 保健師国家試験 過去問
平成30年(2018年)の日本におけるHIV感染者の患者動向で正しいのはどれか。
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正解4
正答
4.日本国籍女性の感染経路は異性間の性的接触が最も多い。
この問題のポイント
厚生労働省エイズ動向委員会の「エイズ発生動向年報」をもとに、日本のHIV感染者・エイズ患者の特徴を問う問題です。判断に必要なのは、感染経路(性的接触が大部分を占め、男性は同性間、女性は異性間が中心)、国籍別の内訳(日本国籍の男性が大多数)、年次推移(HIV感染者単独とエイズ患者を合わせた総数では最多の年が異なり、2010年代後半は減少傾向)の3点です。
解説
統計の出どころ
HIV感染症(後天性免疫不全症候群を含む)は、感染症法で全数把握の対象となる5類感染症です。診断した医師は7日以内に保健所へ届け出ます。届出は次の2つに分けて集計され、エイズ動向委員会が毎年の発生動向として公表しています。
- 新規HIV感染者:エイズを発症する前にHIV感染が判明した人
- 新規エイズ患者:診断された時点ですでにエイズを発症していた人
「HIV感染者」単独の数値と、エイズ患者を加えた総数は区別して読みます。また、届出はその年に診断・報告された数であり、その年に新たに感染した人数そのものではありません。
感染経路の特徴
2018年の新規HIV感染者では、感染経路の8割以上が性的接触です。そのうち最も多いのは男性同性間の性的接触で、異性間の性的接触がこれに続きます。静注薬物使用や母子感染による報告はごくわずかです。
性別で分けると傾向がはっきりします。男性では同性間の性的接触が最も多い経路です。女性では同性間の性的接触による感染はまれなので、異性間の性的接触が中心になります。日本国籍の女性は報告数そのものが男性よりはるかに少ないものの、経路の大部分は異性間の性的接触です。
国籍・性別・年齢の内訳
新規報告の大部分は男性で、その男性の大多数が日本国籍です。外国国籍の報告は一定数ありますが、男性の半数を超えるような規模ではありません。年齢は20〜40歳代が中心で、性的に活発な世代に多いという特徴があります。
年次推移
新規HIV感染者単独の年間報告数は2008年の1,126件が最多です。一方、新規エイズ患者を加えた総数は2013年の1,590件が最多であり、両者を混同しないようにします。その後、2010年代後半には減少傾向となり、2018年はHIV感染者940件、エイズ患者377件、合計1,317件でした。2008年の合計1,557件も下回っており、「2008年から増加している」とはいえません。
一方で、報告全体の約3割は、エイズを発症して初めてHIV感染が判明した例(いわゆる「いきなりエイズ」)です。この割合が大きく下がっていないことは、検査を受けて早く診断される機会が不十分であることを示しており、重要な課題とされています。
公衆衛生看護での意味
こうした内訳は、誰にどのような予防啓発と検査勧奨を届けるかを決める根拠になります。
- 男性同性間の性的接触が最多であることから、MSM(男性と性行為をする男性)に向けた啓発と検査機会の確保が重点になります。
- 女性では異性間の性的接触が中心なので、パートナーを含めた予防啓発が求められます。
- 妊婦健診でのHIV抗体検査は、母子感染の予防につながります。
- 保健所では無料・匿名でHIV検査を受けられます。早期に診断して抗HIV療法を始めれば、エイズの発症を防げます。さらに、ウイルス量が検出限界未満に抑えられていれば性的接触で他者に感染させないこと(U=U)も示されており、早期診断は本人と周囲の双方にとって意味があります。
選択肢の確認
1.新規感染の約60%は性的接触である。:2018年の新規HIV感染者では、性的接触が感染経路の8割以上を占めており、約60%という数値は実際より少なく示しています。「性的接触が大部分」という傾向自体は正しいので、割合の数値をずらした記述に惑わされないことが大切です。性的接触の中では男性同性間が最多であることも併せて押さえておきます。
2.発生の総数は2008年から増加している。:HIV感染者単独の最多は2008年ですが、エイズ患者を合わせた総数の最多は2013年です。総数は2008年1,557件、2013年1,590件、2018年1,317件で、2010年代後半は減少傾向です。したがって、2008年から一貫して増加しているという記述は当てはまりません。報告区分と年次を合わせて比較します。
3.男性では外国籍の者が半数以上を占めている。:男性の新規報告の大多数は日本国籍の者であり、外国国籍の者は一部にとどまります。外国国籍の報告は一定数ありますが、半数を超える規模ではありません。日本のHIV対策の中心となる対象は、日本国籍の男性、特に男性同性間の性的接触による感染です。
4.日本国籍女性の感染経路は異性間の性的接触が最も多い。:正答。女性では同性間の性的接触による感染はまれで、日本国籍の女性の感染経路は異性間の性的接触が最も多くなっています。男性(同性間が最多)との違いとして問われやすいポイントです。
覚えるポイント
- HIV感染症は感染症法の5類感染症で全数把握の対象です。診断した医師は7日以内に保健所へ届け出ます。報告は「新規HIV感染者」と「新規エイズ患者」に分けて集計されます。
- 感染経路は性的接触が8割以上を占めます。男性は同性間の性的接触が最多、女性は異性間の性的接触が中心で、静注薬物使用や母子感染はわずかです。
- 報告の大部分は日本国籍の男性で、年齢は20〜40歳代が中心です。
- 新規HIV感染者単独の最多は2008年の1,126件、エイズ患者を合わせた総数の最多は2013年の1,590件です。2018年の総数は1,317件で、2010年代後半は減少傾向です。
- 新規報告の約3割は、エイズを発症してから感染が判明した「いきなりエイズ」です。保健所の無料・匿名検査などによる早期診断の推進が課題です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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