第108回
108AM013|第108回 保健師国家試験 過去問
乳幼児の予防接種が任意接種である疾病はどれか。
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正解3
正答
3.流行性耳下腺炎
この問題のポイント
予防接種法に基づく定期接種と、法律に基づかない任意接種の区別を問う問題です。出題当時(2022年2月)の乳幼児の定期接種の一覧を思い浮かべ、そこに含まれない疾病を選びます。B型肝炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、ロタウイルス感染症はいずれも定期接種で、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)だけが任意接種でした。
解説
手がかりは「乳幼児」と「任意接種」の2語です。疾病の重さや流行状況で判断するのではなく、制度上どの区分に位置づけられているかを知っているかが問われています。
予防接種の区分は次のとおりです。
- 定期接種:予防接種法で対象疾病・対象者・接種期間が定められ、市町村長が実施主体となります。A類疾病は、集団での発生・まん延の予防や重症化しやすい疾病の予防を主な目的とします。対象者(乳幼児では保護者)には接種の努力義務があり、市町村は接種を勧奨します。費用は市町村が負担し、多くの自治体では自己負担なく受けられます。B類疾病は個人の発病・重症化の予防が主な目的で、努力義務はありません。出題当時のB類は、高齢者のインフルエンザと肺炎球菌感染症でした。
- 任意接種:法律に基づかず、本人や保護者の希望で受ける接種です。費用は原則自己負担で、自治体によっては独自の助成があります。
- 健康被害の救済:定期接種では予防接種法に基づく救済制度が適用されます。任意接種では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度の対象になります。同じワクチンでも、定められた対象年齢を外れて受けると任意接種の扱いになります。
出題当時、乳幼児期に受けるA類疾病の定期接種には次のものがありました。
- Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス感染症
- 四種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・急性灰白髄炎)
- 結核(BCG)、麻しん・風しん(MR)、水痘、日本脳炎
選択肢のうち流行性耳下腺炎だけがこの一覧にありません。
流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる感染症で、主に飛沫と接触で広がります。耳下腺などの唾液腺が腫れるのが特徴です。合併症には無菌性髄膜炎、回復が難しい感音難聴(ムンプス難聴)、思春期以降の精巣炎などがあります。1989年から1993年にかけては、麻しんの定期接種で麻しん・おたふくかぜ・風しん混合(MMR)ワクチンを選べる時期がありました。しかし、おたふくかぜ成分による無菌性髄膜炎が問題となり中止されました。その後、おたふくかぜワクチンは単独の任意接種として続いています。定期接種化は国の審議会で検討課題とされてきました。
関連して、流行性耳下腺炎は感染症法の5類感染症(小児科定点把握)です。学校保健安全法による出席停止期間は「耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」です。
保健師は、乳幼児健診や新生児訪問で母子健康手帳の接種記録を確認します。定期接種の未接種者には勧奨を行います。任意接種については、効果・副反応・費用を説明し、保護者が納得して判断できるよう支援します。定期と任意の区別は、保護者への説明の正確さに直結する知識です。
選択肢の確認
1.B型肝炎:2016年10月から予防接種法のA類疾病として定期接種に加えられ、1歳に至るまでに3回接種します。乳幼児期にHBVに感染すると持続感染(キャリア化)しやすく、将来の慢性肝炎・肝硬変・肝細胞癌につながります。そのため、家族内などの水平感染も含めて乳児期に予防する意義が大きい疾病です。HBs抗原陽性の母親から生まれた児には、出生直後からHBグロブリンとワクチンを用いる母子感染予防が健康保険で行われ、この場合は定期接種の対象外になります。定期接種化以前は任意接種だったため、古い知識と混同しないよう注意します。
2.急性灰白髄炎:いわゆるポリオで、ポリオウイルスが経口感染し、脊髄前角細胞が障害されて弛緩性麻痺を起こします。古くから定期接種の対象です。2012年9月に、ワクチン関連麻痺を避けるため経口生ワクチンから不活化ワクチンへ切り替えられました。同年11月からは、ジフテリア・百日せき・破傷風と合わせた四種混合ワクチンとして乳児期に接種されています。ワクチンの種類が変わっても定期接種であることは変わりません。なお現在は、2024年4月からHibを加えた五種混合ワクチンも定期接種に用いられています。
3.流行性耳下腺炎:正答。おたふくかぜワクチン(弱毒生ワクチン)は予防接種法の定期接種に含まれておらず、出題当時は保護者の希望により原則自己負担で受ける任意接種でした。難聴や髄膜炎などの合併症を防ぐ効果は重要です。日本小児科学会は1歳以上での1回目と就学前の2回目の接種を推奨しており、費用を助成する自治体もあります。「接種が勧められている」ことと「定期接種である」ことは別の話だと整理しておきます。
4.ロタウイルス感染症:2020年10月から定期接種(A類疾病)となり、同年8月1日以降に生まれた乳児が対象です。経口の生ワクチンで、1価(2回接種)と5価(3回接種)があります。初回接種の時期が遅くなると腸重積症のリスクが高まるとされるため、初回は生後14週6日までに行うことが推奨されています。接種後は、不機嫌・嘔吐・血便などの腸重積症を疑う症状に注意するよう保護者に伝えます。定期接種化が比較的新しいため、任意接種だった時期の知識と取り違えやすい選択肢です。
覚えるポイント
- 定期接種は予防接種法に基づき市町村長が実施します。A類は努力義務と勧奨があり、費用は公費です。B類は努力義務がありません。任意接種は法律に基づかず、原則自己負担です。
- 乳幼児の定期接種は、Hib、小児肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、四種混合(D・P・T・ポリオ)、BCG、MR、水痘、日本脳炎です。
- 定期接種化の時期は、Hib・小児肺炎球菌が2013年4月、水痘が2014年10月、B型肝炎が2016年10月、ロタウイルスが2020年10月です。
- 乳幼児の任意接種の代表は、おたふくかぜと小児のインフルエンザです。
- 健康被害の救済は、定期接種なら予防接種法、任意接種ならPMDAの医薬品副作用被害救済制度です。定期接種のワクチンでも、対象年齢外で受ければ任意接種の扱いになります。
- 生ワクチンは、BCG、MR、水痘、ロタウイルス(経口)、おたふくかぜです。ポリオは2012年に不活化ワクチンへ切り替わりました。
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