第108回

108AM011|第108回 保健師国家試験 過去問

Aさん(35歳、男性、会社員)は身長170 cm、体重60 kgである。事業所の保健師は、Aさんから「先日、潰瘍性大腸炎と診断され、外来通院で治療することになりました。会社の食堂で食事をすることが多いため、気を付けることはありますか」と相談を受けた。Aさんに対する保健指導で適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.「食物繊維が少ない食事を選んでください」

この問題のポイント

潰瘍性大腸炎と診断されたばかりの会社員に、食事の選び方を助言する問題です。判断の鍵は2つあります。1つは、大腸粘膜に炎症があり下痢や血便を起こす疾患であること、もう1つは、身長170 cm・体重60 kgで痩せても太ってもいないことです。炎症のある腸への刺激を減らす「低残渣・低脂肪」と、消耗を補う「高エネルギー・高蛋白」の組み合わせを知っていれば解けます。

解説

疾患の特徴

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性炎症性腸疾患で、指定難病です。

  • 病変は直腸から始まり、口側へ連続して広がります。炎症は主に粘膜層にとどまります。
  • 若年成人に多く発症し、下痢、粘血便、腹痛を主な症状として、再燃と寛解を繰り返します。
  • 治療は5-アミノサリチル酸製剤(メサラジンなど)が中心です。重症度に応じて副腎皮質ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを使います。
  • 多くの患者さんは外来で治療を続けながら働いています。

食事の考え方

食事の目的は、炎症のある大腸に余計な負担をかけないことと、下痢や炎症による消耗を補うことの2つです。

  • 食物繊維(特に不溶性)は消化されずに便の量を増やし、腸の蠕動を促し、炎症のある粘膜を物理的に刺激します。そのため、症状がある時期は低残渣の食事が基本です。
  • 脂肪の多い食事は下痢や腹痛を起こしやすいため、控えめにします。
  • 下痢・出血・炎症で蛋白質とエネルギーが失われるため、これらは制限せず十分にとります。
  • 香辛料、アルコール、カフェイン、炭酸飲料、冷たすぎる飲み物なども腸を刺激するので控えめにします。

まとめると、減らすのは食物繊維と脂肪、減らさないのはエネルギーと蛋白質です。なお、寛解期にまで厳しい制限を続ける必要はありません。症状を悪化させた食品を本人が把握し、偏りのない食事を心がけることが大切です。

Aさんの状況に当てはめる

AさんのBMIは、60 ÷(1.70 × 1.70)= 60 ÷ 2.89 ≒ 20.8 です。普通体重(18.5以上25未満)なので、エネルギーを制限する理由はありません。

診断直後で外来治療を始める段階なので、症状のある時期と考え、腸にやさしい食事を自分で選べるよう支援します。社員食堂での具体的な選び方は次のとおりです。

  • 選ぶとよいもの:白飯・うどん・おかゆ、白身魚・鶏ささみ・卵・豆腐のおかず、やわらかく煮た野菜
  • 避けたいもの:揚げ物、脂の多いラーメンやカツ類、辛いカレー、ごぼう・たけのこなどの根菜やきのこ・海藻を多く使った料理

産業保健としての支援

事業所の保健師は、食事だけでなく治療と仕事の両立を支える視点も持ちます。たとえば、通院のための休暇の取りやすさ、トイレに行きやすい職場環境、症状が悪化したときの相談先などです。指定難病として、重症度などに応じて医療費助成の対象になりうることも伝えるとよい情報です。

選択肢の確認

1.「脂肪の制限はありません」:脂肪の多い食事は腸の蠕動を強め、下痢や腹痛を起こしやすいため、特に活動期には控えめにすることが勧められます。「制限はない」と伝えると、揚げ物や脂の多い料理を気にせず選ぶことにつながるため不適切です。脂肪制限は同じ炎症性腸疾患であるクローン病でより重視されますが、潰瘍性大腸炎でも低脂肪が基本です。

2.「低蛋白質の食事を選んでください」:炎症や下痢、血便によって蛋白質が失われやすく、低アルブミン血症や体重減少を起こしやすいため、良質な蛋白質を十分にとる必要があります。低蛋白食は慢性腎臓病(腎不全)や、肝性脳症を伴う肝硬変などで用いる食事なので、取り違えないようにします。

3.「食物繊維が少ない食事を選んでください」:正答。食物繊維を減らした低残渣食は、便の量を減らして腸の蠕動と粘膜への物理的な刺激を抑え、下痢や腹痛の悪化を防ぎます。食堂では根菜、きのこ、海藻、こんにゃく、豆類の多い料理を避けるなど、具体的な選び方を添えて伝えると実践しやすくなります。

4.「カロリーが高くならないようにしてください」:AさんはBMI約20.8の普通体重で、肥満はありません。潰瘍性大腸炎では炎症と下痢で消耗し体重が減りやすいため、エネルギーは十分にとる必要があります。カロリーを抑える指導は栄養状態の悪化を招くので不適切です。エネルギー制限は、肥満や2型糖尿病などで検討される指導です。

覚えるポイント

  • 炎症性腸疾患の食事は「低残渣・低脂肪・高エネルギー・高蛋白」です。減らすのは食物繊維と脂肪、減らさないのはエネルギーと蛋白質です。
  • 刺激物(香辛料、アルコール、カフェイン、炭酸飲料、冷たい飲み物)も控えめにします。寛解期は過度に制限せず、悪化させる食品を個別に把握します。
  • 潰瘍性大腸炎は、直腸から連続性に広がり、粘膜層が中心で、粘血便が特徴、大腸癌のリスクがあります。クローン病は、口腔から肛門までどこにでも非連続性に起こり、回盲部に多く、全層性の炎症で縦走潰瘍・敷石像・痔瘻がみられ、低脂肪がより重要です。
  • 制限食の適応は疾患ごとに区別します。低蛋白食は腎不全や肝性脳症、エネルギー制限は肥満や糖尿病などが対象です。
  • BMI=体重(kg)÷身長(m)²です。日本肥満学会の基準では、18.5未満が低体重、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満です。
  • 事業所の保健師は、食事指導とあわせて、通院やトイレ環境など治療と仕事の両立を支援します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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