第109回

109PM016|第109回 保健師国家試験 過去問

A事業所の社員食堂で毎月行う調理従事者20名の便の細菌検査で、Bさんから腸管出血性大腸菌が検出された。Bさんは特に症状がないが、受診した診療所の医師から腸管出血性大腸菌の無症状病原体保有者と診断された。この診断後の対応で正しいのはどれか。

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正解4

正答

4.Bさんは病原体を保有しなくなるまで飲食物に直接触れる業務への就業が制限される。

この問題のポイント

感染症法の類型ごとに、届出、入院、就業制限、施設への措置のどれが適用されるかを問う問題です。判断の鍵は次の3つを結びつけることです。「腸管出血性大腸菌」は三類感染症です。三類では「無症状病原体保有者」も届出と就業制限の対象になります。「調理従事者」の仕事は飲食物に直接触れる業務にあたります。

解説

問題文の手がかり

Bさんは社員食堂の調理従事者で、毎月の定期検便によって症状のないまま腸管出血性大腸菌が見つかりました。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、調理従事者は月1回以上検便を受け、その検査に腸管出血性大腸菌を含めることが求められています。この事例は、その仕組みが働いて保菌者が見つかった典型的な場面です。医師は「無症状病原体保有者」と診断しています。症状がなくても便中に菌を排出しているため、手指を介して食品を汚染し、集団感染を起こすおそれがあります。

腸管出血性大腸菌感染症の特徴

ベロ毒素(志賀毒素)を産生する大腸菌による感染症で、代表的な血清型はO157です。少ない菌量でも感染が成立するため、食品を介した集団発生に加えて、家族内や保育施設での二次感染も起こります。重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併します。HUSは溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害を特徴とし、小児と高齢者で特に注意が必要です。食品を扱う人が保菌していることは、公衆衛生上、大きな危険になります。

感染症法の類型と主な措置

  • 一類感染症:入院勧告・入院措置、就業制限、消毒に加え、建物への立入制限・封鎖や交通の制限まで行われます。
  • 二類感染症:入院勧告・入院措置、就業制限、消毒などが行われます。
  • 三類感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス):就業制限と消毒などが行われますが、入院勧告・入院措置はありません。
  • 四類感染症:動物や飲食物などの物件を介して人に感染するもので、消毒などの対物措置が中心です。
  • 五類感染症:発生動向の把握と情報の公開が中心です。

三類感染症は、飲食物を介して集団発生を起こしうる一方、特定の業務に就かなければまん延は防げると考えられています。そのため、人を隔離する入院までは求めず、業務を限定した就業制限で対応します。

届出から就業制限解除までの流れ

  • 診断した医師は、三類感染症の患者と無症状病原体保有者について、直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ます。
  • 届出を受けた都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長。実務は保健所)は、本人に書面で通知します。
  • 通知を受けた人は、三類では「飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務」に、病原体を保有しなくなるまで従事できません。
  • 検便で菌が検出されないことが確認されれば、制限は解除されます。腸管出血性大腸菌では、連続2回の検便で陰性を確認するのが一般的な運用です。

就業制限は、働くこと自体を禁じるものではありません。事務など飲食物に直接触れない業務への配置転換は可能です。保健所の保健師には次のような役割があります。

  • 本人に制限の意味と期間を説明し、職場が過剰に反応して不利益な扱いや偏見が生じないよう調整する
  • 家族や他の調理従事者への健康診断(検便)の勧告を行う
  • 感染源を探る積極的疫学調査を行う
  • 手洗いなどの衛生指導を行う

選択肢の確認

1.Bさんは感染症指定医療機関に入院する必要がある。:入院勧告・入院措置の対象は一類・二類感染症(新型インフルエンザ等感染症なども含む)であり、三類感染症は対象外です。Bさんは無症状で、治療上も入院は必要ありません。感染症指定医療機関(特定・第一種・第二種)は、一類・二類などの患者の入院先として指定されている医療機関です。「感染症なら入院」と短絡しないように注意しましょう。

2.2類感染症として受診した診療所の医師から発生届が提出される。:腸管出血性大腸菌感染症は二類ではなく三類感染症なので、三類として届け出られます。「診断した医師が直ちに保健所に届け出る」という部分は正しいため、類型の取り違えを狙った選択肢です。二類には結核、ジフテリア、急性灰白髄炎、SARS、MERS、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)が含まれ、腸管感染症は入っていません。

3.社員食堂はBさんが職場に復帰できるまで業務を休止しなければならない。:感染症法で建物の立入制限や封鎖ができるのは一類感染症だけです。三類で制限されるのは、あくまでBさん個人の特定業務への就業です。保健所が汚染のおそれがある場所の消毒を指示したり、同僚の検便を勧めたりすることはあります。しかし、保菌者が1名見つかったというだけで食堂の休止が義務づけられるわけではありません。食中毒が発生した場合は、食品衛生法に基づいて営業停止などが行われることがあり、これと混同しないようにしましょう。

4.Bさんは病原体を保有しなくなるまで飲食物に直接触れる業務への就業が制限される。:正答。三類感染症の無症状病原体保有者は、感染症法に基づく就業制限の対象です。制限される業務は飲食物に直接接触する業務で、期間は病原体を保有しなくなるまで(検便で陰性が確認されるまで)です。症状の有無ではなく、菌を保有しているかどうかで判断される点が重要です。

覚えるポイント

  • 三類感染症は、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスの5疾患です。いずれも経口感染する腸管感染症です。
  • 入院勧告・入院措置は一類・二類(と新型インフルエンザ等感染症など)で行われ、三類にはありません。三類の中心的な措置は就業制限です。
  • 三類の就業制限は、飲食物に直接接触する業務を対象とし、病原体を保有しなくなるまで続きます。無症状病原体保有者も対象になります。配置転換で働き続けることはできます。
  • 一〜四類は、診断した医師が直ちに保健所経由で届け出ます。建物の封鎖や交通の制限ができるのは一類だけです。
  • 調理従事者は月1回以上検便を受け、その検査に腸管出血性大腸菌を含めます。加熱調理では、食品の中心温度を75℃で1分間以上保つことが基準です。
  • 腸管出血性大腸菌感染症では、合併症の溶血性尿毒症症候群(溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害)と、家族内などの二次感染予防がよく問われます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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