第109回

109PM015|第109回 保健師国家試験 過去問

市全域が被害を受ける地震が発生し、1か月が過ぎた。避難所に避難していた被災者の多くが応急仮設住宅へ移動した。この時期に応急仮設住宅の入居者に対して行う保健活動で優先度が高いのはどれか。

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正解2

正答

2.巡回訪問し健康状態を把握する。

この問題のポイント

災害の時期によって保健活動の重点が変わることを理解しているかを問う問題です。判断の手がかりは「発災から1か月」「避難所から応急仮設住宅へ移動した」という2つの情報です。住民の生活が集団生活から個別の住戸へ移り、健康問題が周囲から見えにくくなる時期だと読み取れるかが鍵になります。この時期は、保健師が自ら出向いて入居者一人ひとりの状態を把握すること(アウトリーチによる実態把握)が最優先です。

解説

問題文から時期を読み取る

「市全域が被害を受ける地震」とあるので、多くの住民が長期にわたって生活の立て直しを迫られる大規模災害です。「1か月が過ぎた」「多くが応急仮設住宅へ移動した」ことから、避難所対策が中心だった時期は終わりつつあります。仮設住宅での生活が始まり、復旧・復興期へ移っていく段階だと判断できます。応急仮設住宅は、災害救助法に基づく救助の一つとして提供される住まいです。

災害時の保健活動は、時期ごとに重点が次のように移ります。

  • 発災直後:救命と医療の確保、安否確認、要配慮者の把握、医療救護体制の立ち上げ
  • 避難所生活が中心の時期:感染症や食中毒の予防、エコノミークラス症候群の予防、慢性疾患の悪化防止、トイレや食事など衛生環境の整備
  • 仮設住宅への移行期以降:個別訪問による健康状態の把握、孤立や閉じこもりの防止、心の健康への支援、新しいコミュニティづくり
  • 恒久住宅への移行期:移った先の地域での関係づくりと、地域社会への溶け込みの支援

仮設住宅へ移ると何が起こるか

避難所では多くの人が同じ空間で過ごし、保健医療チームも巡回していました。そのため、体調の変化に周りが気づきやすい環境でした。仮設住宅では世帯ごとに住戸が分かれ、もとの近所とは離れた場所に入居することも多いため、人とのつながりが途切れやすくなります。

その結果、次のような問題が起こりやすくなり、しかも外からは見えにくくなります。

  • 閉じこもりと、それに伴う生活不活発病(活動量が落ちて心身の機能が低下する状態)
  • 飲酒量の増加
  • 抑うつや不眠
  • 受診や服薬の中断による持病の悪化

阪神・淡路大震災では、仮設住宅での孤独死が大きな社会問題になりました。この教訓から、入居後の見守りと訪問活動が重視されるようになっています。

正答に至る判断

入居したばかりのこの時期、保健師はまだ入居者一人ひとりの状態をつかめていません。支援が必要な人を見つけるには、相談に来るのを待つのではなく、保健師の側から住戸を巡回して確認する必要があります。確認する内容は、健康状態、受診や服薬の状況、食事・睡眠・飲酒、心の状態、家族や近隣とのつながりなどです。

これは公衆衛生看護の基本的な流れである「実態把握 → 支援の優先度の判断 → 個別支援や社会資源へのつなぎ」の出発点にあたります。訪問によって住民との信頼関係もでき、その後の集会所での交流の場づくり、自治会づくりの支援、精神保健の専門職への紹介の土台になります。

選択肢の確認

1.心のケアチームを派遣する。:仮設住宅の時期は、喪失体験や生活再建への不安から心の問題が表面化しやすく、心のケアそのものは重要です。しかし、誰にどの程度の支援が必要かは、訪問などで状態を把握してはじめて判断できます。また、精神科医療・精神保健の外部支援チームは、東日本大震災の経験を踏まえてDPAT(災害派遣精神医療チーム)として体制化されました。これは被災都道府県の要請に基づいて派遣され、急性期から活動するものです。市の保健師が入居者に直接行う活動ではなく、把握の結果として必要な人を専門職につなぐという位置づけになります。

2.巡回訪問し健康状態を把握する。:正答。集団生活から個別の住戸での生活へ移り、健康問題が見えにくくなるこの時期には、保健師が出向いて健康状態と生活状況を把握することが支援の第一歩になります。特に、単身の高齢者、障害のある人、慢性疾患のある人など要配慮者に重点を置きます。把握した情報をもとに、受診の勧め、専門職への紹介、交流の場づくりへとつなげていきます。

3.エコノミークラス症候群の予防方法を伝える。:エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症)は、狭い場所で長時間同じ姿勢をとることに加え、トイレを気にして水分を控えることによる脱水で起こりやすくなります。予防啓発の重点は、車中泊や狭い避難所生活が続く発災直後から避難所期です。新潟県中越地震(2004年)や熊本地震(2016年)では、車中泊をしていた人の発症が問題になりました。仮設住宅では足を伸ばして眠れる個別の居住空間が確保されるため、この時期の最優先課題ではありません。ただし、閉じこもって活動量が落ちれば、仮設住宅でも注意は必要です。

4.感染症予防策についての健康教育を実施する。:インフルエンザ、ノロウイルス感染症、食中毒などは、多数の人が密集して寝食をともにし、手洗いやトイレの環境も不十分になりやすい避難所で集団発生しやすくなります。そのため、感染症予防は避難所期の重点課題です。仮設住宅では世帯ごとに住戸が分かれ、水回りなどの生活環境も整うので、集団感染のリスクは避難所より下がります。予防の啓発が不要になるわけではありませんが、入居直後に集団向けの健康教育を行うより、一人ひとりの状態を把握するほうが優先されます。

覚えるポイント

  • 災害時の保健活動は時期で重点が変わります。発災直後は救命と安否確認、避難所期は感染症・食中毒・エコノミークラス症候群・慢性疾患の悪化の予防、仮設住宅期は個別の把握と孤立の防止が中心です。
  • 仮設住宅への移行期は、健康問題が「見えにくくなる」時期です。保健師が出向く巡回訪問(アウトリーチ)で実態を把握することが第一歩です。
  • 仮設住宅で起こりやすい問題は、閉じこもり、生活不活発病、アルコール関連問題、抑うつ・不眠、服薬の中断、孤独死です。
  • 生命の危険が差し迫っていない場面で「まず行う」「優先度が高い」を問われたら、実態把握(アセスメント)が支援や教育より先です。
  • エコノミークラス症候群のリスクは、車中泊、狭い空間、水分制限です。予防は、足の運動、こまめな水分補給、ゆったりした服装、弾性ストッキングです。
  • 心のケアの外部支援はDPAT(災害派遣精神医療チーム)として体制化されています。中長期には地域の保健活動の中で必要な人を把握し、専門職へつなぎます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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