第109回

109PM014|第109回 保健師国家試験 過去問

健康危機管理で感染症の発生時の対応はどれか。

解答・解説を見る

正解1

正答

1.積極的疫学調査の実施

この問題のポイント

健康危機管理の活動は、「発生の未然防止」「発生に備えた準備」「発生時の対応」「被害の回復」の段階に分けて整理できます。この問題では、各選択肢がどの段階に当たるかを見分けます。手がかりは問題文の「発生時の対応」で、感染症の患者などが実際に出たあとに行う活動を選びます。平時から続ける監視(サーベイランス)や、医療体制の整備・人材育成といった準備活動と区別できるかが問われています。

解説

健康危機管理の段階

健康危機管理とは、感染症、食中毒、飲料水、医薬品などが原因で住民の生命と健康の安全が脅かされる事態に対し、健康被害の発生予防、拡大防止、治療などを行う業務をいいます。地域では保健所が健康危機管理の拠点です。活動は時間の流れに沿って、次の段階で整理されます。

  • 発生の未然防止:平時の監視・指導、サーベイランスによる情報の収集・分析・提供、普及啓発など
  • 発生に備えた準備:マニュアルの作成、医療体制・連絡体制の整備、関係機関との訓練や研修、物資の備蓄など
  • 発生時の対応:原因の究明、被害拡大の防止、医療の確保、住民への情報提供など
  • 被害の回復:健康相談や心のケア、対応の事後評価、再発防止策の検討など

積極的疫学調査の役割

感染症が発生したとき、保健所がまず取り組むのは、何が、どこから、どのように広がっているのかを明らかにすることです。これを担うのが積極的疫学調査です。

感染症法第15条に基づき、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区の長を含む)が職員に質問や調査をさせるもので、実際には保健所の保健師や医師などが行います。対象は次のとおりです。

  • 感染症の患者
  • 疑似症患者
  • 無症状病原体保有者
  • 感染症を人にうつすおそれのある動物の所有者・管理者
  • その他の関係者

調査では、次のような情報を聞き取り、必要に応じて検体を確保して、感染源と感染経路を推定します。

  • 発症日と症状
  • 発症前の行動歴や食事
  • 渡航歴
  • 接触した人

施設で集団発生が起きた場合は、発症日時ごとの患者数を示した流行曲線から、共通の感染源への一度の曝露なのか、人から人への伝播なのかを推測します。これもこの段階の作業です。

調査の結果は、次のような感染拡大防止の措置に直結します。

  • 接触者の健康観察や健康診断
  • 就業制限
  • 入院の勧告
  • 消毒

つまり積極的疫学調査は、発生時の対応の出発点であり、中心となる活動です。

聞き取りでは、行動歴や人間関係など、本人が知られたくない事柄にも踏み込みます。保健師には、次のような配慮も求められます。

  • 調査の目的を説明して協力を得る
  • プライバシーを守る
  • 患者や家族が差別や偏見にさらされないようにする

一方、選択肢2〜4も感染症対策に欠かせない活動です。ただし、いずれも平時から継続して行う監視や、発生に備えた体制づくり・人材育成に当たります。特に選択肢3は名称に「発生」という語が含まれるため、発生時の対応と取り違えやすい点に注意します。

選択肢の確認

1.積極的疫学調査の実施:正答。感染症が発生したときに、患者や接触者などから発症の経過、行動歴、接触状況を聞き取り、感染源と感染経路を明らかにする調査です。その結果が、接触者の健康観察や健康診断、消毒、就業制限などの措置にそのままつながるため、発生時の対応の中心になります。

2.感染症指定医療機関の指定:感染症の患者の入院や医療を担当する医療機関をあらかじめ決めておく医療体制の整備であり、発生に備えた準備の段階に当たります。指定された医療機関が実際に医療を担うのは発生時ですが、「指定する」行為そのものは平時の体制づくりです。出題当時の感染症法(第6条)では、感染症指定医療機関は、特定・第一種・第二種感染症指定医療機関と結核指定医療機関をまとめた呼び方で、それぞれ役割が異なります。特定(厚生労働大臣が指定)と第一種・第二種(都道府県知事が指定)は、対象となる感染症の患者の入院を担当する病院です。結核患者の入院も、入院勧告に基づき、主に結核病床をもつ第二種感染症指定医療機関で行われます。これに対し、結核指定医療機関は、都道府県知事が指定する病院・診療所・薬局などです。入院勧告の受け入れのための指定ではなく、結核の適正な医療(主に通院医療)を担当します。この医療の費用は、感染症法第37条の2により、患者の申請に基づいて医療保険を優先して適用し、残りを公費が補います。保険と公費を合わせて95%が賄われ、自己負担は5%です。なお、出題後の2024年4月からは、協定指定医療機関の仕組みも加わりました。新型インフルエンザ等感染症などの流行に備えて、都道府県が医療機関と医療措置協定を結び、都道府県知事が指定するものです。第一種協定指定医療機関は病床を確保して入院を担い、第二種協定指定医療機関は発熱外来や自宅療養者等への医療を担います。これも平時の準備に当たります。

3.感染症発生動向調査の実施:感染症法に基づき、医師の届出や指定届出機関(定点)からの報告をもとに、感染症の発生状況を平時から継続的に集めて分析し、結果を公表・還元する仕組み(サーベイランス)です。流行の兆しを早く見つけることや、予防のための情報提供に役立つもので、健康危機管理では未然防止・早期探知の段階に位置づけられます。名称に「発生」とあっても、個々の発生事例の原因を調べて拡大を止める活動ではありません。

4.地域DOTSの関係機関への研修の実施:地域DOTSは、DOTS(直接服薬確認療法)を地域で行う取り組みです。結核患者が治療を最後までやり遂げられるよう、退院後や外来治療中も、保健所が中心となって医療機関、薬局、訪問看護ステーション、福祉施設などと連携し、服薬を支援します。関係機関への研修は、支援に携わる人の知識や技術を高め、連携体制を整えておく平時の人材育成・体制づくりであり、発生に備えた準備に当たります。また、個々の患者への服薬支援そのものも、発生直後の原因究明ではありません。治療の完遂によって再発や薬剤耐性化を防ぐことを目的とした、継続的な支援です。

覚えるポイント

  • 健康危機管理は「未然防止 → 発生に備えた準備 → 発生時の対応 → 被害の回復」の段階で整理します。監視(サーベイランス)は未然防止、体制整備・訓練・研修は準備に当たり、どちらも平時の活動です。原因究明と拡大防止は発生時の活動です。
  • 積極的疫学調査は、感染症法第15条に基づき都道府県知事等が行います(実務は保健所)。患者・疑似症患者・無症状病原体保有者・関係者から聞き取り、感染源と感染経路を明らかにします。その情報をもとに、健康診断の勧告、就業制限、入院の勧告、消毒などの措置を行います。
  • 感染症発生動向調査は、全数把握と定点把握からなる平時からのサーベイランスです。医師の届出は、一類〜四類感染症と新型インフルエンザ等感染症は直ちに、五類感染症の全数把握対象は7日以内です(麻しん・風しんなど一部は直ちに)。
  • 特定感染症指定医療機関(厚生労働大臣が指定)と第一種・第二種感染症指定医療機関(都道府県知事が指定)は、感染症患者の入院を担当する病院です。結核患者の入院先は、主に結核病床をもつ第二種感染症指定医療機関です。
  • 結核指定医療機関は、都道府県知事が指定する病院・診療所・薬局などで、結核の適正な医療(主に通院医療)を担当します。その費用は第37条の2により保険と公費を合わせて95%が賄われ、自己負担は5%です。入院勧告による入院の医療費を公費負担する第37条とは別の仕組みです。
  • 地域DOTSは、入院中の院内DOTSに続き、退院後や外来治療中に行う結核の服薬支援で、保健所を中心とした多機関連携で進めます。関係機関への研修は、準備段階の活動に位置づけられます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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