第109回

109AM036|第109回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

健康危機管理に関する保健所の業務はどれか。2つ選べ。

解答・解説を見る

正解1・3

正答

1.食中毒発生時の調査
3.感染症患者を診断した医師からの届け出の受付

この問題のポイント

地域における健康危機管理の拠点である保健所が、法令上どの業務を担うかを問う問題です。判断の鍵は、保健所は発生情報の受付と原因究明の調査を担い、国への報告や施設の指定取消しなどの行政処分は都道府県知事などが行うという役割分担を見分けることです。保育所の事故報告のように、もともと保健所を経由しない仕組みも見抜く必要があります。

解説

保健所の位置づけ

保健所は地域保健法に基づいて、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置する機関です。地域保健対策の推進に関する基本的な指針では、「地域における健康危機管理の拠点」と位置づけられています。健康危機とは、感染症、食中毒、飲料水、医薬品などが原因で住民の生命や健康の安全が脅かされる事態をいいます。保健所は、平常時の監視と備え、発生時の情報収集・原因究明・拡大防止、事後の評価までを一貫して担います。

届出と報告の流れ

健康危機に関わる法律の多くは、次のように似た流れを定めています。

  • 感染症(感染症法):診断した医師が、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ます。都道府県知事はそれを厚生労働大臣に報告します。
  • 食中毒(食品衛生法):診断した医師が、直ちに最寄りの保健所長に届け出ます。保健所長は都道府県知事等に報告するとともに、調査を行います。都道府県知事等は厚生労働大臣に報告し、患者が多数の場合などは直ちに報告します。
  • 狂犬病(狂犬病予防法、犬などの動物の場合):診断した獣医師(獣医師がいない場合は所有者)が保健所長に届け出ます。保健所長は都道府県知事に報告し、都道府県知事が厚生労働大臣への報告と隣接都道府県知事への通報を行います。

どの流れでも、保健所は現場から最初に情報が届く窓口であり、実地の調査を行う機関です。一方、国への報告は都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)の役割です。この構造を押さえると、選択肢を法令の文言から判断できます。

保健所が行う具体的な業務

食中毒では、保健所の食品衛生監視員などが次のような調査を行い、原因食品と病因物質を特定します。

  • 患者や喫食者への聞き取りと喫食状況の調査
  • 検便や残品などの検体採取と検査
  • 原因と疑われる施設への立入調査

その結果が、都道府県知事等による営業禁止・停止などの措置や、再発防止の指導につながります。

感染症では、次の疾患を診断した医師の届出を保健所が受理します。

  • 一類〜四類感染症(直ちに届出)
  • 五類感染症のうち全数把握の疾患(原則7日以内。麻しん・風しんなど一部は直ちに)
  • 新型インフルエンザ等感染症 など

受理した後、保健所は積極的疫学調査、接触者の健康観察、入院勧告や就業制限の手続きなどを進めます。五類の定点把握疾患は、指定届出機関(定点医療機関)が保健所へ届け出ます。出題当時、新型コロナウイルス感染症は新型インフルエンザ等感染症に位置づけられ、保健所が届出を受けていました。2023年5月からは五類感染症(定点把握)に移行しています。

保健師は保健所において、これらの疫学調査、患者・家族への支援、関係機関との連絡調整の中心を担います。「届出を受けたら調査し、拡大を防ぐ」という流れは、実践でもそのまま使う知識です。

選択肢の確認

1.食中毒発生時の調査:正答。食品衛生法では、医師から食中毒の届出を受けた保健所長が、都道府県知事等に報告するとともに調査を行うことが定められています。調査は原因食品・病因物質の特定と被害拡大の防止を目的とし、保健所の健康危機管理業務の代表例です。

2.狂犬病発生時の厚生労働大臣への報告:厚生労働大臣へ報告するのは都道府県知事であり、保健所の業務ではありません。狂犬病予防法で保健所長が担うのは、獣医師からの届出の受理と都道府県知事への報告です。人の狂犬病は感染症法の四類感染症ですが、この場合も医師の届出は保健所長を経由して都道府県知事に届き、国への報告は都道府県知事が行います。保健所が関わるテーマではあるものの、「厚生労働大臣への報告」という行為の主体が違う点が誤りのポイントです。

3.感染症患者を診断した医師からの届け出の受付:正答。感染症法では、医師は最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ると定められており、届出を実際に受け付けるのは保健所です。保健所はこの届出を起点に積極的疫学調査などの対応を始めます。

4.保育所で乳児が突然死したときの届け出の受理:保育所などで起きた死亡などの重大事故は、施設・事業者から保育の実施主体である市町村へ報告され、市町村から都道府県、国へと上がる仕組みです。保健所が受理するものではありません。また、乳児の予期しない突然死では、検案した医師が異状を認めれば、医師法に基づき24時間以内に所轄警察署へ届け出ます。乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断には解剖が必要とされています。感染症や食中毒が原因と疑われれば保健所も関わりますが、突然死の届出の受理そのものは保健所の業務ではありません。

5.虐待が認定された介護老人福祉施設の指定の取り消し:介護保険法に基づく指定の取消しは、指定権者である都道府県知事が行う行政処分で、保健所の業務ではありません(定員29人以下の地域密着型介護老人福祉施設は市町村長が指定権者です)。高齢者虐待防止法では、施設従事者等による虐待の通報は市町村が受け、事実確認のうえ都道府県に報告します。そのうえで市町村長や都道府県知事が、老人福祉法・介護保険法の権限を適切に行使します。

覚えるポイント

  • 保健所は地域保健法の基本指針で「地域における健康危機管理の拠点」とされています。役割は、届出の受付窓口と原因究明・拡大防止のための調査です。
  • 感染症法の流れは、医師 → 保健所長経由 → 都道府県知事 → 厚生労働大臣です。一類〜四類は直ちに、五類全数把握は原則7日以内(一部は直ちに)に届け出ます。
  • 食品衛生法では、医師が直ちに保健所長へ届け出ます。保健所長は都道府県知事等へ報告し、調査を行います。
  • 狂犬病予防法の流れは、獣医師 → 保健所長 → 都道府県知事 → 厚生労働大臣です。人の狂犬病は感染症法の四類感染症です。
  • 国への報告や施設の指定・取消しは、都道府県知事などの権限です。保育所の事故報告は市町村、異状死体の届出は警察署、施設での高齢者虐待の通報は市町村が受けます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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