第109回
109AM037|第109回 保健師国家試験 過去問
累積罹患率の計算に必要なのはどれか。2つ選べ。
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正解3・4
正答
3.観察期間に新たに発生した患者数
4.観察開始時点での観察対象集団の人数
この問題のポイント
疫学で疾病の頻度を表す指標のうち、累積罹患率の分子と分母を問う問題です。「累積」という語から、一定期間に集団のうちどれだけの割合が新たに発症したかを表す指標だと読み取れれば、分子は新規発生患者数、分母は観察開始時の集団の人数と決まります。観察人年を使う罹患率、既存の患者を数える有病率との区別が判断の鍵です。
解説
累積罹患率の定義
累積罹患率は、観察開始時点で疾病を持たない集団を一定期間追跡し、その期間に新たに発症した人の割合を示す指標です。リスク、罹患割合とも呼ばれます。
- 累積罹患率 = 観察期間に新たに発生した患者数 ÷ 観察開始時点での観察対象集団(疾病を持たない人)の人数
分子に数える人は分母の中から出てくる人でなければなりません。分母は「この期間に発症する可能性を持っていた人」であり、観察開始時点ですでに疾病を持っている人は新たに発症しないため除きます。コホート研究では、ベースライン時点で疾病のない人を観察対象集団として設定するのが原則です。そのため、選択肢4の人数がそのまま分母になります。
累積罹患率は割合なので0〜1(0〜100%)の範囲をとり、単位はありません。観察期間の長さで値が変わるため、「5年累積罹患率」のように期間を必ず添えます。また、開始時の全員を期間の終わりまで追跡できることが前提です。途中で脱落や他の原因による死亡が多いと、その人がその後に発症したかどうかが分からず、値が過小に見積もられます。
罹患率(罹患密度)との違い
追跡期間が人によって異なる場合は、罹患率を用います。
- 罹患率 = 観察期間に新たに発生した患者数 ÷ 各観察対象者の観察期間の総和(観察人年)
たとえば疾病のない1,000人を5年間追跡し、全員の追跡を完了して50人が新たに発症したとします。5年累積罹患率は50÷1,000=0.05(5%)です。同じ集団で罹患率を求める場合、発症した人はその時点で観察人年の計算を終えます。発症者50人が平均2.5年で発症したとすると、観察人年は950人×5年+50人×2.5年=4,875人年です。罹患率は50÷4,875≒0.0103で、1,000人年あたり約10.3となります。罹患率には「人年あたり」という単位が付く点が、累積罹患率との大きな違いです。
有病率との違い
有病率は、ある時点(または期間)に疾病を持っている人(既存の患者を含む)の数を、その時点の人口で割った指標です。「観察開始時点での患者数」は、この時点有病率の分子にあたります。罹患率と有病率の間には、状況が安定していて有病率が低い場合に「有病率≒罹患率×平均有病期間」という関係が成り立ちます。慢性疾患は罹患が少なくても有病期間が長いため、有病率が高くなります。
実践とのつながり
集団食中毒の調査で用いる発病率(アタックレート)は、喫食者のうち発症した人の割合であり、累積罹患率の一種です。また、コホート研究で求める相対危険(リスク比)は「曝露群の累積罹患率÷非曝露群の累積罹患率」、寄与危険はその差として計算します。保健師が地域の健康課題の大きさを評価したり、健康危機発生時に原因食品を推定したりする際の基礎になる考え方です。
選択肢の確認
1.観察開始時点での患者数:観察開始時点ですでに疾病を持っている人の数は、時点有病率の分子にあたる数値です。累積罹患率は新たな発症だけを数える指標なので、既存の患者は分子に含めません。分母からも除外される人たちです。コホートを設定するときに対象から除く確認には使いますが、計算式を構成する要素ではありません。有病率の考え方と取り違えやすい選択肢です。
2.各観察対象者の観察期間の総和:観察期間の総和は観察人年のことで、これを分母に用いるのは罹患率(罹患密度)です。途中参加・脱落・死亡などで追跡期間がそろわない集団に適した指標で、単位は「人年あたり」になります。累積罹患率の計算には用いません。
3.観察期間に新たに発生した患者数:正答。累積罹患率の分子です。観察開始時点で疾病のなかった人のうち、観察期間中に新たに発症した人を数えます。
4.観察開始時点での観察対象集団の人数:正答。累積罹患率の分母です。観察開始時点で疾病を持たず、期間中に発症する可能性のある集団の大きさを表します。
5.観察終了時点での観察対象集団の人数:観察終了時点の人数は、期間中の死亡・転出・追跡不能などによって開始時から変化しています。これを分母にすると、途中で観察から外れた人の発症を分子に数えながら分母から除くことになり、分子と分母の対応が崩れます。累積罹患率の分母は、あくまで「期間の初めに発症の可能性を持っていた人」の人数です。
覚えるポイント
- 累積罹患率=新規発生患者数÷観察開始時の疾病のない人数です。割合(0〜1)で単位はなく、期間を明示します。リスク・罹患割合とも呼ばれます。
- 罹患率=新規発生患者数÷観察人年の総和です。単位は「人年あたり」で、追跡期間がそろわないときに用います。
- 有病率=ある時点(期間)の患者数(既存患者を含む)÷その時点の人口です。安定した状況で有病率が低い場合は、有病率≒罹患率×平均有病期間となります。
- 分母には「分子になりうる人」を入れます。観察開始時点の既存患者は除きます。
- 相対危険は累積罹患率の比、寄与危険は差です。食中毒調査の発病率(アタックレート)も累積罹患率の一種です。
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