第108回

108AM021|第108回 保健師国家試験 過去問

人口3万人の町の保健師は地区によって高脂血症の罹患率が大きく異なっていることに気付いた。罹患率に関連する要因について仮説を立てて検証するために行う調査方法で適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.質問紙調査

この問題のポイント

判断の手がかりは、問題文の「仮説を立てて検証する」という目的と、「人口3万人の町」「地区によって罹患率が大きく異なる」という条件です。仮説を検証するには、多くの住民から同じ項目でデータを集め、統計的に関連を分析する量的な方法が必要です。その代表的なデータ収集方法が質問紙調査です。調査方法を「仮説を生み出す質的方法」と「仮説を確かめる量的方法」に分けて考えられるかが問われています。

解説

保健師は、地区によって罹患率に大きな差があることに気付いています。これは既存資料を整理する記述の段階で、「差がある」という事実が見えた状態です。次の段階では、その差がどの要因と関連しているかについて仮説を立て、それが当てはまるかを確かめます。要因の例は、食習慣、運動習慣、飲酒・喫煙、肥満、健診の受診状況、年齢構成や職業構成などです。設問が求めているのは「探索」ではなく仮説の検証に適した方法であり、ここが最大のポイントです。

研究方法は目的によって次のように選び分けます。

  • 量的研究:数値化できるデータを多数の対象から集め、統計的に差や関連を検討します。仮説の検証に向いており、結果を集団全体に一般化しやすい方法です。質問紙調査や、測定・観察を標準化して行う調査が該当します。
  • 質的研究:人々の言葉や行動を記述データとして集め、その意味や背景、プロセスを深く理解します。まだ分かっていないことを探り、仮説を生み出すのに向いています。フォーカス・グループインタビュー、半構造化面接、参加観察、事例分析などが該当します。

要因と罹患率の関連を検証するには、地区ごとに十分な人数の住民に同じ質問を同じ形式で尋ね、要因の有無や程度と疾患の有無を集計・比較する必要があります。たとえば「高脂血症のある人とない人で脂肪の多い食事の頻度に差があるか」「地区Aと地区Bで運動習慣のある人の割合に差があるか」を、χ²検定などで確かめるイメージです。人口3万人規模の町であれば、全数または無作為に抽出した標本に質問紙を配布・回収することで、統計的分析に耐えるデータ量を比較的少ない費用と労力で得られます。質問項目が標準化されているため、調査者による聞き方のばらつきが生じにくく、地区間の比較もしやすくなります。したがって質問紙調査が最も適切です。

地域診断や事業評価の実践では、質的方法と量的方法を段階的に組み合わせるのが一般的です。まず住民へのインタビューで生活実態や価値観をつかんで仮説を立てます。次にその仮説をもとに質問紙の項目を作り、質問紙調査で広く検証します。ただし質問紙調査にも限界があります。郵送法では回収率が低くなりやすいこと、回答の理由や背景までは掘り下げられないこと、自記式では質問の誤解や記入漏れが起こり得ることです。そのため、事前にプレテストを行って質問の表現を確認することが大切です。

なお「高脂血症」は、HDLコレステロールが低い状態も含むことから、現在の診療ガイドラインでは「脂質異常症」と呼ばれています。

選択肢の確認

1.フォーカス・グループインタビュー:共通の特性をもつ数人〜10人程度の小集団に司会者がテーマを投げかけ、参加者同士の相互作用(グループダイナミクス)を生かして意見や認識を引き出す質的な方法です。住民のニーズや健康観を探索し、仮説を立てたり質問紙の項目を考えたりする段階では有用です。しかし対象者が少なく代表性も確保されないため、統計的に仮説を検証する方法としては適しません。

2.半構造化面接法:あらかじめ用意したインタビューガイドに沿いながら、回答に応じて質問の順序を変えたり追加の質問をしたりする個別面接で、主に質的研究で使われます。対象者の体験や思いを深く聞き取れる反面、対象が少人数で聞き方も一定ではないため、多数のデータを同じ条件で比較する検証には向きません。質問の内容と順序を固定する構造化面接であれば量的データの収集にも使えるので、両者の違いを区別しておきましょう。

3.質問紙調査:正答。標準化した質問項目を多数の住民に同じ形式で配布でき、回答を数値化して、地区間や罹患の有無による差を統計的に分析できます。そのため、立てた仮説の検証に適しています。

4.事例分析:特定の個人・家族・集団や一つの出来事を詳細に掘り下げ、経過や背景、支援の課題を明らかにする方法です。個別の事例から新たな気づきや仮説を得るには役立ちますが、少数の事例の結果を町全体に一般化することはできません。要因と罹患率の関連を統計的に確かめることもできません。

覚えるポイント

  • 仮説を「つくる」段階は質的方法(フォーカス・グループインタビュー、半構造化面接、参加観察、事例分析)、仮説を「確かめる」段階は量的方法(質問紙調査など)を用います。
  • 質問紙調査の強みは、多人数から標準化されたデータを低コストで得られ、統計的分析と一般化ができることです。弱みは、回収率、回答の深さ、記入の誤りに限界があることです。
  • 面接法は3種類に分けられます。構造化面接(質問と順序を固定し、量的にも使える)、半構造化面接(ガイドはあるが柔軟に進める)、非構造化面接(自由な対話)です。
  • フォーカス・グループインタビューは、共通の特性をもつ小集団の相互作用を生かす方法で、ニーズ把握や質問紙作成の準備段階で使われます。
  • 罹患率は、一定期間に新たに発生した患者数を、その期間の観察集団(観察人年など)で割ったものです。有病率は、ある時点で疾病をもっている人の割合です。両者の区別はよく問われます。

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