第109回

109PM052|第109回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み51~53の問いに答えよ。人口約10万人のA市で慢性腎臓病の予防に関する施策の策定をすることになった。その基礎資料を作成するために、ある一時点での慢性腎臓病の有無と高血圧の有無の関連を検討することにした。調査を実施する際に、市民全員を対象とすることは困難であると考えた。そのため、調査者の主観が介入しない方法で対象者を選ぶことにした。適切な方法はどれか。

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正解4

正答

4.無作為抽出

この問題のポイント

市民全員(母集団)を調べられないときに、その一部(標本)をどう選ぶかという標本抽出の方法を問う問題です。判断の鍵は「調査者の主観が介入しない方法で対象者を選ぶ」という条件です。この条件に当てはまるのは、乱数などを使って偶然にまかせて対象者を選ぶ無作為抽出です。交絡を制御する方法(層化・標準化・マッチング)や、介入研究で群を振り分ける無作為化と区別できるかが問われています。

解説

問題文の整理

  • 「ある一時点での慢性腎臓病の有無と高血圧の有無の関連」:曝露と疾病を同じ時点で測定する横断研究です。有病の状況と両者の関連はわかりますが、どちらが先に起きたかという時間的な前後関係はわかりません。高血圧は慢性腎臓病の原因となり、慢性腎臓病は高血圧を悪化させます。そのため、この研究デザインで因果の向きを判断できないという限界は、実際にも重要です。
  • 「市民全員を対象とすることは困難」:全数調査(悉皆調査)ではなく、標本調査を行うという意味です。知りたいのはA市民全体(母集団)の状況で、実際に調べるのはその一部(標本)です。
  • 「調査者の主観が介入しない方法で対象者を選ぶ」:対象者の選び方に関する条件で、ここが正答を決める手がかりです。

無作為抽出の意味と利点

無作為抽出(ランダムサンプリング)は、母集団の名簿(抽出台帳)から乱数などを用いて、偶然によって対象者を選ぶ方法です。誰が選ばれるかが調査者の意図に左右されません。その結果、次の利点があります。

  • 選択バイアスが生じにくく、標本が母集団の縮図になります(代表性)。
  • 調査結果をA市民全体に一般化できます(外的妥当性)。
  • 偶然による誤差(標本誤差)の大きさを統計学的に推定できます。標本を大きくすれば、この誤差は小さくなります。

A市の場合は、住民基本台帳を抽出台帳として、必要な人数を乱数で選ぶ方法が考えられます。保健師が健康増進計画の策定などで住民意識調査を行うときにも、同じ手順がよく使われます。

これに対し、健診受診者、保健センターの来所者、協力を申し出た人だけを対象にすると、健康への関心や受診行動の違いによる偏りが入ります。このような選び方は「便宜的に選んだ」だけで、無作為とはいえません。また、無作為に選んでも回答率が低ければ、回答者が偏ります。そのため、回収率を高める工夫もあわせて必要です。

無作為抽出の主な種類

  • 単純無作為抽出法:名簿全体から乱数で直接選びます。
  • 系統抽出法:最初の1人を無作為に決め、その後は一定の間隔で選びます。
  • 層化無作為抽出法:性・年齢・地区などの層に分け、各層から無作為に選びます。層ごとの特徴を確実に反映させたいときに用います。
  • 集落抽出法:地区や学校などの集団単位で無作為に選び、選ばれた集団の全員を調べます。
  • 多段抽出法:地区→世帯→個人のように、段階的に抽出します。

どの方法も、主観を排除しているのは「偶然で選ぶ」という手順です。層に分けることや集団単位にすることは、抽出の効率や精度を高めるための工夫です。

交絡の制御・無作為化との区別

選択肢1〜3は、主に交絡を制御するための方法です。交絡とは、曝露と疾病の両方に関係する第三の因子(本問なら年齢や糖尿病など)が、見かけの関連を生じさせることです。交絡を制御する方法は、段階によって次のように整理できます。

  • 設計段階:無作為化、限定、マッチング
  • 解析段階:層化(層別解析)、標準化、多変量解析

選択肢5の無作為化は、介入研究で対象者を群に振り分ける手続きです。無作為抽出は「誰を調べるか」を決め、代表性(外的妥当性)を確保します。無作為化は「どちらの群に入れるか」を決め、群間の比較可能性(内的妥当性)を確保します。

選択肢の確認

1.層化:母集団や対象者を、性・年齢・地区などの特性でいくつかの層に分ける操作を指します。解析段階で層ごとに関連を調べる層別解析は、交絡を制御する代表的な方法です。たとえば年齢層ごとに高血圧と慢性腎臓病の関連をみれば、年齢の影響を取り除けます。標本抽出で層に分ける場合も、主観を排除しているのは各層の中で偶然によって選ぶ手順です。層に分けること自体は、主観を排する選び方ではありません。

2.標準化:年齢構成が異なる集団どうしで死亡率や有病率を比べるときに、年齢構成の違いを調整する計算の手法です。直接法による年齢調整率や、間接法による年齢調整(SMR)がこれにあたります。データを集めた後の分析段階で使う方法であり、対象者の選び方ではありません。A市の有病率を全国と比べる場面であれば有用です。

3.マッチング:主に症例対照研究で、症例1人ごとに性・年齢などの条件が同じ対照を選び、交絡因子の分布を両群でそろえる設計段階の方法です。特定の条件に合わせて意図的に対象者を選ぶ手続きなので、母集団を代表させるために偶然で選ぶ方法とは目的が異なります。

4.無作為抽出:正答。母集団の名簿から乱数などを用いて偶然によって対象者を選ぶため、調査者の主観が入りません。選択バイアスを防いで標本の代表性を確保でき、結果をA市民全体に一般化できます。本問の条件にそのまま当てはまります。

5.無作為化(割付):介入研究(ランダム化比較試験)で、集めた対象者を介入群と対照群に偶然によって振り分ける方法です。既知・未知の交絡因子が両群に均等に分布し、群間比較の妥当性が高まります。本問は介入を行わない横断研究で、問われているのは「どの群に入れるか」ではなく「誰を調べるか」なので当てはまりません。「無作為」という語が共通するため、選択肢4と混同しないよう注意します。

覚えるポイント

  • 無作為抽出=誰を調べるか:乱数などで偶然に選び、母集団の代表性(外的妥当性)を確保し、選択バイアスを防ぎます。住民調査では住民基本台帳などを抽出台帳にします。
  • 無作為化(割付)=どちらの群に入れるか:介入研究で用い、既知・未知の交絡因子を群間で均等にします(内的妥当性)。
  • 交絡の制御は、設計段階が「無作為化・限定・マッチング」、解析段階が「層化(層別解析)・標準化・多変量解析」です。
  • 抽出法には単純・系統・層化・集落・多段があり、主観を排除する核心は「偶然で選ぶ」手順です。健診受診者や来所者だけを選ぶと偏りが生じます。
  • 横断研究は一時点で曝露と疾病を同時に測定するため、有病率と関連はわかりますが、時間的な前後関係が不明で因果の判断には限界があります。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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