第109回

109PM053|第109回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

次の文を読み51~53の問いに答えよ。人口約10万人のA市で慢性腎臓病の予防に関する施策の策定をすることになった。その基礎資料を作成するために、ある一時点での慢性腎臓病の有無と高血圧の有無の関連を検討することにした。対象者1,000人を選び出し、高血圧の有無と慢性腎臓病の有無を調査した結果を以下に示す。【表】 ||慢性腎臓病(人)| ||あり|なし 高血圧(人)|あり|100|200 |なし|100|600 【表ここまで】 高血圧「あり」の高血圧「なし」に対する慢性腎臓病「あり」のオッズ比を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。解答:①. ② ① ② 0 0 1 1 2 2 3 3 4 4 5 5 6 6 7 7 8 8 9 9

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解答・解説を見る

正解① 3・② 0

正答

① 3・② 0

求めるオッズ比は3.0です(一の位が3、小数第1位が0)。

この問題のポイント

一時点で高血圧と慢性腎臓病の有無を同時に調べた横断研究の2×2表から、両者の関連の強さをオッズ比で求める計算問題です。「高血圧『あり』の高血圧『なし』に対する」という表現から、高血圧あり群を分子、なし群を分母に置きます。各群で「慢性腎臓病あり÷なし」のオッズを出し、その比をとること(たすきがけ)が鍵です。群の合計人数で割る有病率の比(約2.3)と取り違えないことが得点の分かれ目です。

解説

手がかりの読み取りと表の整理

  • 「ある一時点での」有無を調べている:要因と疾病を同時に測る横断研究です。求める値は「有病オッズ比」にあたります。
  • 「高血圧『あり』の高血圧『なし』に対する」:高血圧が要因(曝露)、慢性腎臓病が疾病です。比の分子は高血圧あり群、分母(比較の基準)は高血圧なし群です。
  • 「小数点以下第2位を四捨五入」:答えは小数第1位までです。解答欄「①.②」の①が一の位、②が小数第1位です。

表は、行(横の並び)が高血圧の有無、列(縦の並び)が慢性腎臓病の有無です。単位は人で、合計は対象者と同じ1,000人です。これを2×2表の記号に当てはめます。

  • a:高血圧あり・慢性腎臓病あり=100人
  • b:高血圧あり・慢性腎臓病なし=200人
  • c:高血圧なし・慢性腎臓病あり=100人
  • d:高血圧なし・慢性腎臓病なし=600人

オッズ比の計算

オッズは「その状態にある人数÷その状態にない人数」です。「その状態にある人数÷全体」で求める割合(有病率)とは分母が違います。割合をpとすると、オッズはp/(1−p)です。

  • 高血圧あり群の慢性腎臓病のオッズ:a/b=100/200=0.5
  • 高血圧なし群の慢性腎臓病のオッズ:c/d=100/600=1/6(0.1666…)
  • オッズ比:0.5÷(1/6)=0.5×6=3

まとめるとオッズ比=(a/b)÷(c/d)=ad/bc(たすきがけ)です。(100×600)÷(200×100)=60,000÷20,000=3と一度に求められます。割り切れるので、小数点以下第2位を四捨五入しても3.0のままです。よって解答欄の①に3、②に0をマークします。

途中の1/6を0.17や0.2に丸めてから割ると、2.9や2.5になって正答からずれます。分数のまま扱うか、たすきがけで最後に1回だけ割るのが確実です。

表を列の方向から見ても、オッズ比は同じ値になります。慢性腎臓病あり群の高血圧のオッズは100/100=1、なし群は200/600=1/3で、比はやはり3です。この性質は検算に使えます。症例対照研究では症例と対照の数を研究者が決めるため、罹患率を計算できません。それでもオッズ比が関連の指標になるのは、この性質があるからです。

結果の解釈と横断研究の限界

オッズ比が1なら関連なし、1より大きければ正の関連、1より小さければ負の関連です。3.0は「高血圧のある人は、ない人に比べて慢性腎臓病を有するオッズが3倍」という正の関連を示します。

ただし「有病率が3倍」ではありません。有病率は高血圧あり群で100/300≒33.3%、なし群で100/700≒14.3%で、その比(有病率比)は約2.3です。疾病がまれなら、オッズ比は有病率比(コホート研究では相対危険)に近い値になります。本問では慢性腎臓病が全体の20%(200/1,000)を占めます。このように疾病がまれでないと、オッズ比は有病率比より1から離れた値になります。

また横断研究では、どちらが先に生じたかが分かりません。高血圧は腎硬化症などを通じて腎機能を低下させます。一方、慢性腎臓病もナトリウム・水の貯留やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の亢進によって血圧を上げます。両者は互いに原因にも結果にもなり得ます。年齢や糖尿病のように両方に関わる因子による交絡も考えられるため、この表だけで「高血圧が慢性腎臓病を引き起こす」とは結論できません。

因果関係に迫るには、慢性腎臓病のない人を高血圧の有無で分けて追跡するコホート研究が適しています。横断研究で分かるのは一時点の有病率です。追跡すれば新たな発生を数えて罹患率を求められ、その比(相対危険)や差(寄与危険)を算出できます。測定した交絡因子の影響は、層別解析やロジスティック回帰分析でオッズ比を調整すると小さくできます。

A市の施策づくりでは、この結果が慢性腎臓病予防の取り組みを考える根拠の一つになります。たとえば健診での血圧・尿蛋白の把握、高血圧のある人への受診勧奨、減塩を中心とした保健指導です。ただし対象者の選び方に偏り(選択バイアス)があると、市全体の実態とずれる点に注意します。

選択肢の確認

① 0:分子と分母を逆にした(200×100)÷(100×600)=0.333…(→0.3)や、高血圧あり群のオッズ0.5だけを答えた場合がこの数字です。高血圧「あり」を分子とするオッズ比は3.0で、一の位は3です。

① 1:両群とも慢性腎臓病ありは100人ずつです。人数だけを比べると100÷100=1となり、「関連なし」と誤りやすいところです。各群のオッズ(あり÷なし)で比べると3.0になり、一の位は3です。

① 2:誤った計算で出やすい値の多くは一の位が2です。群の合計人数で割った有病率の比(100/300)÷(100/700)≒2.3、慢性腎臓病あり群・なし群での高血圧の割合の比0.5÷0.25=2.0、途中で丸めた2.5や2.9などがあります。正しいオッズ比3.0の一の位は3です。

① 3:正答。オッズ比=ad/bc=(100×600)÷(200×100)=60,000÷20,000=3で、一の位は3です。

① 4:オッズ比はちょうど3で端数がないため、小数点以下第2位を四捨五入しても一の位が4に繰り上がることはありません。一の位は3です。

① 5:「高血圧『あり』の高血圧『なし』に対する」とは、あり群のオッズ0.5を分子、なし群のオッズ1/6を分母に置くという意味です。0.5÷(1/6)=3となるため、一の位は5ではなく3です。

① 6:600/100=6は、高血圧なし群の「慢性腎臓病なし÷あり」、つまりオッズの逆数です。0.5を掛け忘れるとこの数字が残ります。0.5×6まで計算したオッズ比は3.0で、一の位は3です。

① 7:オッズ比の計算には群の合計人数(300人・700人)を使わず、各群内の「あり」と「なし」の人数だけを使います。そうして求めた値は3.0で、一の位は3です。

① 8:オッズ比3.0は、高血圧のある人で慢性腎臓病を有するオッズが、高血圧のない人の3倍であることを表しています。一の位は3で、8には当たりません。

① 9:オッズ比は0以上で上限のない値をとるため、研究によっては9を超えることもあります。しかし本問の表から求めた値は3.0で、一の位は3です。

② 0:正答。60,000÷20,000は割り切れて3となるため、小数点以下第2位を四捨五入しても3.0で、小数第1位は0です。

② 1:四捨五入で3.1になるのは3.05以上3.15未満の値です。本問のオッズ比は端数のない3なので、小数第1位は0です。

② 2:高血圧なし群のオッズ1/6(0.1666…)を小数点以下第2位で四捨五入すると0.2です。これをオッズ比と取り違えるとこの数字になります。求めるオッズ比は3.0で、小数第1位は0です。

② 3:有病率の比(100/300)÷(100/700)=2.333…(→2.3)や、分子と分母を逆にした0.333…(→0.3)がこの数字です。正しいオッズ比3.0の小数第1位は0です。

② 4:慢性腎臓病あり群・なし群それぞれの高血圧のオッズを比べても(100/100)÷(200/600)=3となります。どちらの向きで計算しても小数第1位は0で、4にはなりません。

② 5:高血圧あり群のオッズ0.5をそのまま答えた場合や、1/6を0.2に丸めて0.5÷0.2=2.5とした場合がこの数字です。正しいオッズ比は3.0で、小数第1位は0です。

② 6:高血圧なし群のオッズ100/600は0.1666…と6が続く循環小数ですが、比の分母に置く途中の値にすぎません。オッズ比そのものは3.0なので、小数第1位は0です。

② 7:途中の値を分数のまま扱えば(1/2)÷(1/6)=6/2=3と誤差なく求まり、小数第1位は0で7には当たりません。

② 8:横断研究で得られるこの値は有病オッズ比とも呼ばれます。本問では3.0と端数なく求まるため、小数第1位は0で8にはなりません。

② 9:1/6を途中で0.17に丸めて0.5÷0.17≒2.94と計算すると、四捨五入して2.9となり、この数字を選んでしまいます。分数のまま計算すれば3.0で、小数第1位は0です。

覚えるポイント

  • オッズは「その状態にある人数÷ない人数」です。割合(有病率など)は「ある人数÷全体」で、オッズとは分母が違います。
  • 有病率は、一時点で疾病を有する人の割合です。罹患率は「一定期間の新規発生数÷危険曝露人口(観察人年)」で求める、時間を含む率です。「期間中の新規発生数÷観察開始時に疾病のない人数」は累積罹患率(罹患割合)と呼びます。定常状態では、有病率≒罹患率×平均有病期間です。
  • オッズ比=(a/b)÷(c/d)=ad/bc(たすきがけ)です。「XのYに対する」ではXが分子になります。途中で四捨五入せず、最後に1回だけ割ります。
  • オッズ比は行・列のどちらから計算しても同じ値になるため、罹患率を出せない症例対照研究の指標になります。疾病がまれなら、オッズ比は有病率比や相対危険に近づきます。まれでなければ、それらより1から離れます(本問は有病率比約2.3、オッズ比3.0)。
  • 研究デザインと主な指標:コホート研究は相対危険(罹患率の比)と寄与危険(罹患率の差)、症例対照研究はオッズ比、横断研究は有病率・有病率比・有病オッズ比です。
  • オッズ比が1なら関連なし、1より大きければ正の関連、1より小さければ負の関連です。95%信頼区間が1を含めば、統計学的に有意とはいえません。横断研究では時間的な前後関係が分からないため因果の向きを決められず、交絡にも注意が必要です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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