第108回

108AM022|第108回 保健師国家試験 過去問

大きな集団から無作為に1,000人選び出したとき、その中の高血圧者数が従う分布はどれか。

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正解3

正答

3.二項分布

この問題のポイント

無作為に選んだ一定人数のうち、ある特徴をもつ人(ここでは高血圧者)の人数がどの確率分布に従うかを問う問題です。手がかりは3つあります。1人ひとりは「高血圧である/ない」の2通りしかないこと、選ぶ人数が1,000人と決まっていること、大きな集団から無作為に抽出していることです。これらから二項分布の成立条件に当てはまると判断します。各分布が何を表し、統計のどの場面で使われるのかを整理しておくことが解答の鍵になります。

解説

問題文から読み取るべき手がかりを整理します。

  • 問われているのは「高血圧者数」です。0人、1人、2人…と数える整数の値(離散量)であり、血圧値そのもの(mmHgで表す連続量)ではありません。
  • 選ばれた1人ひとりは「高血圧である/ない」のどちらか一方の結果しかとりません。
  • 選ぶ人数は1,000人と決まっています。
  • 「大きな集団から無作為に」選ぶため、誰を選んでも高血圧である確率はほぼ一定です。また、1人の結果が他の人の結果に影響しない(独立)とみなせます。

二項分布とは

結果が2通りしかない試行を、同じ確率pで独立にn回繰り返したとします。このとき、一方の結果が起こる回数が従う分布を二項分布B(n, p)といいます。成立条件は次の4つです。

  • 各試行の結果が2通りである
  • 試行回数nが一定である
  • 各試行で確率pが一定である
  • 各試行が互いに独立である

本問ではn=1,000です。pは母集団における高血圧者の割合(有病率)にあたり、高血圧者数はB(1000, p)に従います。平均(期待値)はnp、分散はnp(1−p)です。例として仮にp=0.3とすると、平均は300人、分散は210、標準偏差は約14.5人になります。

「大きな集団から」という条件にも意味があります。有限の集団から選んだ人を戻さずに抜き出す場合(非復元抽出)、1人選ぶごとに残りの集団の構成がわずかに変わります。そのため厳密には、人数は超幾何分布に従います。ただし母集団が標本に比べて十分大きければ、この変化は無視できます。確率一定・独立とみなして二項分布で扱ってよい、というのが問題文の前提です。

正規分布との関係

nが大きくなると、二項分布の形は左右対称の釣鐘型に近づきます。そのため、平均np・分散np(1−p)の正規分布で近似できます。目安として、npとn(1−p)がともにおおむね5以上であることがよく挙げられます。1,000人という大きな標本なので、実務では正規近似がよく使われます。しかしそれはあくまで「近似」です。高血圧者数という離散量が本来従う分布は二項分布なので、「従う分布」を問われたら元の分布を答えます。

保健活動での使いどころ

健診や標本調査から有病率・受診率・喫煙率などの割合を推定するとき、その土台になるのが二項分布です。標本での割合p̂=X/nの標準誤差は「p̂(1−p̂)/nの平方根」で求めます。正規近似を用いた95%信頼区間は「p̂±1.96×標準誤差」です。この式からは、標本数nが大きいほど標準誤差が小さくなり、推定の精度が上がることもわかります。地域診断で「標本調査の結果をどこまで信頼できるか」を考える際の基礎になる知識です。

選択肢の確認

1.t分布:母集団の分散が分からないとき、標本平均を標本標準偏差で標準化した量が従う分布です。平均値の推定や、2群の平均値を比べるt検定などに用います。自由度(1標本の場合はn−1)によって形が変わり、自由度が大きくなると選択肢2の分布に近づきます。扱う対象は血圧値などの連続量の平均であり、高血圧者の人数という数え上げた値の分布ではありません。

2.正規分布:身長や血圧値のような連続量のばらつきを表す、左右対称の釣鐘型の分布です。平均±1.96標準偏差の範囲に全体の約95%が含まれます。選択肢3の分布は試行回数が大きいとこの分布で近似でき、本問の1,000人でも近似は可能です。ただし人数はとびとびの整数値をとる離散量なので、この分布に厳密に従うとはいえません。「近似に使える分布」と「本来従う分布」を取り違えやすい選択肢です。

3.二項分布:正答。1人ひとりが「高血圧である/ない」の2通りの結果をとり、1,000回という一定回数の独立な試行とみなせます。そのため該当者数は、試行回数1,000、確率を有病率とする分布に従います。「大きな集団から無作為に」という条件が、確率一定・独立とみなせる根拠になっています。

4.χ2〈カイ2乗〉分布:互いに独立な、標準正規分布に従う変数の2乗の和が従う分布です。0以上の値をとり、右に裾を引く形をしています。分割表を用いた独立性の検定(例:喫煙の有無と高血圧の有無の関連)、観察度数と期待度数のずれをみる適合度検定、母分散の推定などに用います。検定統計量が従う分布であり、標本中の該当者の人数そのものが従う分布ではありません。

覚えるポイント

  • 「あり/なし」の2通りの結果を一定人数について数えた人数は二項分布に従い、平均はnp、分散はnp(1−p)です。
  • 二項分布は、nが大きいと正規分布で近似できます。nが大きくpが小さい(まれな事象の)ときはポアソン分布(平均=分散=np)で近似できます。
  • t分布は、母分散が未知のときの平均の推定・検定(t検定)に使います。自由度が大きくなると正規分布に近づきます。
  • カイ2乗分布は、分割表の独立性の検定・適合度検定・分散の推定に使います。
  • まず離散量(人数・回数)か連続量(血圧値・身長)かを見分け、「本来従う分布」と「近似に使う分布」を区別します。
  • 割合の標準誤差はp(1−p)/nの平方根で、標本数を増やすほど推定の精度が上がります。

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