第109回

109AM025|第109回 保健師国家試験 過去問

健康危機管理について、地域保健法で厚生労働大臣が定めることが規定されているのはどれか。

解答・解説を見る

正解4

正答

4.地域保健対策の推進に関する基本的な指針

この問題のポイント

健康危機管理に関わる計画や指針について、根拠となる法律と、それを定める主体の組み合わせを問う問題です。問題文の「地域保健法で」と「厚生労働大臣が定める」という2つの条件を、両方とも満たすものを選びます。選択肢には、厚生労働大臣が定めるものの根拠法が医療法であるものや、厚生労働省が作ったものの法律に根拠がないものが並んでおり、1つの条件だけで判断すると誤ります。

解説

2つの条件で絞り込む

この問題は、知識をそのまま当てはめるよりも、「どの法律に基づくか」と「誰が定めるか」を選択肢ごとに照合すると確実に解けます。名称に「健康危機管理」が含まれているかどうかは判断材料になりません。

地域保健法と基本指針

地域保健法は、1994年に保健所法を改正・改題して成立した法律です。保健所と市町村保健センターの設置や業務、地域保健対策の基本的な枠組みを定めています。第4条は、厚生労働大臣が地域保健対策の円滑な実施と総合的な推進を図るため、地域保健対策の推進に関する基本的な指針(基本指針)を定めなければならないと規定しています。

法律上、基本指針に定める事項には次のものがあります。

  • 地域保健対策の推進の基本的な方向
  • 保健所・市町村保健センターの整備と運営
  • 人材の確保と資質の向上
  • 調査・研究
  • 社会福祉などの関連施策との連携

基本指針の本文には健康危機管理体制の確保が盛り込まれています。保健所は、地域における健康危機管理の拠点と位置づけられています。市町村には、住民に身近な立場で保健所と連携することが求められています。保健所の保健師が平常時から感染症・食中毒・災害などに備えて体制をつくるのは、この法定の指針が根拠になっているためです。

健康危機管理に関わる計画・指針の全体像

関連する計画・指針は、根拠と主体によって次のように整理できます。

  • 地域の保健所体制:地域保健法に基づく基本指針(厚生労働大臣)
  • 厚生労働省内の対応体制:厚生労働省健康危機管理基本指針と、分野別の実施要領(法律上の根拠規定はない省の指針)
  • 医療提供体制:医療法に基づく基本方針(厚生労働大臣)と、それに即した医療計画(都道府県)
  • 災害全般:災害対策基本法に基づく防災基本計画(中央防災会議)、防災業務計画(指定行政機関・指定公共機関)、地域防災計画(都道府県・市町村の防災会議)

この整理に照らすと、「地域保健法」かつ「厚生労働大臣」の両方にあてはまるのは基本指針だけです。

出題後の動き

出題当時の枠組みは上記のとおりです。その後、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、2022年の感染症法等の改正にあわせて地域保健法も改正されました(2023年4月施行)。この改正で、基本指針は健康危機への対処を考慮して定めることが明確にされました。また、外部の専門職が保健所業務を支援する仕組み(IHEAT)も法律に位置づけられました。基本指針の改正では、保健所ごとに健康危機対処計画を策定することも示されています。いずれも健康危機管理における基本指針の重みを強めるもので、この問題の正答は変わりません。

選択肢の確認

1.地域防災計画:災害対策基本法に基づく計画で、都道府県の計画は都道府県防災会議が、市町村の計画は市町村防災会議(防災会議を置かない市町村では市町村長)が作成します。根拠法が地域保健法ではなく、作成主体も厚生労働大臣ではないため、2つの条件をどちらも満たしません。災害時の医療救護や保健活動がこの計画に盛り込まれるため、健康危機と結び付けて選びたくなる選択肢です。国レベルでは中央防災会議が防災基本計画を、厚生労働省などの指定行政機関が防災業務計画を作成するという階層もあわせて覚えておきましょう。

2.厚生労働省健康危機管理基本指針:医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他の原因で国民の生命・健康の安全が脅かされる事態に、厚生労働省がどう対応するかという省内の基本的な枠組みを定めたものです。厚生労働省が策定した指針ですが、地域保健法の規定に基づいて定められたものではありません。分野別の実施要領とともに国の対応体制を示すもので、地域の保健所体制を方向づける法定の指針とは位置づけが異なります。名称に「健康危機管理」が入っているため、最も取り違えやすい選択肢です。

3.医療提供体制の確保に関する基本方針:厚生労働大臣が定めるという点は条件に合いますが、根拠は医療法(第30条の3)であり、地域保健法ではありません。都道府県はこの基本方針に即して医療計画を策定します。出題当時の医療計画は、5疾病・5事業と在宅医療について体制を定めるものでした。5事業には災害時における医療が含まれるため紛らわしいですが、「地域保健法で」という条件を満たしません。現在は、2024年度からの第8次医療計画で新興感染症の発生・まん延時の医療が加わり、6事業になっています。

4.地域保健対策の推進に関する基本的な指針:正答。地域保健法第4条が、厚生労働大臣に対して、地域保健対策の円滑な実施と総合的な推進を図るために定めることを義務づけている指針です。本文には健康危機管理体制の確保が盛り込まれ、保健所は地域における健康危機管理の拠点と位置づけられています。問題文の2つの条件を両方満たす唯一の選択肢です。

5.地域における保健師の保健活動に関する指針:2013年(平成25年)に厚生労働省健康局長通知「地域における保健師の保健活動について」の中で示されたもので、地域保健法が厚生労働大臣に策定を求めているものではありません。内容は、地区担当制の推進、統括的な役割を担う保健師の配置、地区活動を基盤としたPDCAに基づく活動などで、保健師国家試験では頻出です。健康危機管理における保健師の役割にも触れていますが、法律に基づく大臣の指針ではなく局長通知という形式である点が、正答との違いです。

覚えるポイント

  • 地域保健法第4条:厚生労働大臣が「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」を定めます。その中に健康危機管理体制の確保が含まれ、保健所は地域の健康危機管理の拠点と位置づけられています。
  • 医療法:厚生労働大臣が医療提供体制の基本方針を定め、都道府県がそれに即して医療計画を策定します。出題当時は5疾病・5事業と在宅医療で、第8次(2024年度〜)からは新興感染症が加わり6事業です。
  • 災害対策基本法:防災基本計画は中央防災会議、防災業務計画は指定行政機関・指定公共機関、地域防災計画は都道府県・市町村の防災会議が作成します。
  • 法律に根拠規定のない指針も押さえます。厚生労働省健康危機管理基本指針は省内の対応の枠組み、保健師の保健活動指針は健康局長通知(2013年)です。
  • 「○○法で」「誰が定めるか」と問われたら、名称の印象で選ばず、根拠法と策定主体の両方を照合します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。