第109回

109AM019|第109回 保健師国家試験 過去問

地域保健法に規定されている内容で正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解3

正答

3.市町村保健センターの整備について規定している。

この問題のポイント

この問題は、地域保健法が何を定めた法律かを問うています。判断の鍵は、各選択肢の内容が「どの法律の」「どの主体についての」規定かを見分けることです。健康増進計画は健康増進法、予防接種は予防接種法の規定です。調査研究は、市町村保健センターではなく保健所の事業として挙げられています。

解説

問題文の手がかりは「地域保健法に規定されている内容」という言葉です。内容が正しそうに見えても、別の法律の規定であれば誤りです。同じ法律の中の規定でも、主体を取り違えていれば誤りになります。

地域保健法の成り立ちと構成

地域保健法は、1947年の保健所法を1994年に改正・改称した法律で、1997年に全面施行されました。背景には、人口の高齢化、疾病構造の変化、住民ニーズの多様化があります。この改正で役割が整理し直され、住民に身近な保健サービスは市町村が担い、保健所は広域的・専門的・技術的な拠点となりました。同じ時期の母子保健法改正により、3歳児健康診査などの基本的な母子保健サービスも、1997年度から市町村に一元化されています。

法律の主な柱は次のとおりです。

  • 市町村・都道府県・国の責務(第3条):市町村は、必要な施設の整備、人材の確保及び資質の向上等に努めます。都道府県は、これらに加えて調査及び研究等に努め、市町村の求めに応じて技術的援助を与えるよう努めます。国は、地域保健に関する情報の収集・整理・活用、調査及び研究、人材の養成と資質の向上に努め、都道府県と市町村に技術的・財政的援助を与えるよう努めます。
  • 地域保健対策の推進に関する基本指針(第4条):厚生労働大臣が定めます。定める事項には、「保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項」や「地域保健に関する調査及び研究に関する基本的事項」が含まれます。
  • 保健所:設置主体、所管区域、事業、所長などを定めています。
  • 市町村保健センター:設置、目的、国の補助などを定めています。
  • 人材確保支援計画:人材の確保や資質の向上を特に支援する必要がある町村について、都道府県が定めることができる計画です。

保健所の事業

保健所を設置するのは、都道府県、指定都市、中核市、その他の政令で定める市、特別区です。第6条には、保健所が企画・調整・指導とそれに必要な事業を行う14の事項が挙げられています。たとえば、地域保健に関する思想の普及、人口動態統計などの統計、栄養の改善と食品衛生、環境衛生、医事と薬事、保健師、母性・乳幼児・老人の保健、歯科保健、精神保健、難病、エイズ・結核などの疾病の予防、衛生上の試験と検査です。

第7条には、地域住民の健康の保持・増進のため必要があるときに行うことができる事業が挙げられています。地域保健に関する情報の収集・整理・活用、所管区域に係る地域保健に関する調査及び研究、歯科疾患などの治療、試験及び検査がこれにあたります。

さらに第8条は、都道府県の設置する保健所について定めています。その保健所は、所管区域内の市町村相互間の連絡調整を行うことができます。また、市町村の求めに応じて、技術的助言、市町村職員の研修その他必要な援助を行うことができます。

市町村保健センター

第18条は、市町村が市町村保健センターを「設置することができる」と定めています。つまり任意設置です。また、市町村保健センターを「住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行うことを目的とする施設」と位置づけています。あわせて、国が設置費用の一部を補助できることと、整備が円滑に進むよう国が配慮することも規定されています。市町村保健センターは、1978年に始まった国民健康づくり対策のもとで予算措置により整備が進み、地域保健法で法律上の位置づけを得ました。

保健所は、許認可や監視指導などの行政事務を担う行政機関です。これに対して市町村保健センターは、法律上「施設」と位置づけられた対人保健サービスの拠点で、保健所のような許認可の権限はもちません。この違いを理解しておくと、保健師として働くうえでの役割分担と連携が見えてきます。乳幼児健診や健康相談は市町村が担い、難病・精神保健・感染症対策などの専門的・広域的な支援は保健所が担います。

以上から、市町村保健センターの設置や整備を定めている選択肢3が正答です。

選択肢の確認

1.市町村健康増進計画の策定を義務づけている。:市町村健康増進計画は健康増進法第8条に基づく計画で、地域保健法には規定がありません。さらに健康増進法でも、策定が義務なのは都道府県健康増進計画(「定めるものとする」)だけで、市町村健康増進計画は努力義務(「定めるよう努めるものとする」)です。つまり、根拠法と義務の程度の両方が誤っています。計画の根拠法と策定義務の有無は、出題の定番です。

2.市町村保健センター業務の1つに調査研究がある。:保健所と市町村保健センターのうち、地域保健法が事業として調査研究を挙げているのは保健所です。第7条第2号に「所管区域に係る地域保健に関する調査及び研究を行うこと」とあり、必要があるときに行うことができる事業とされています。一方、市町村保健センターの目的(第18条第2項)は、住民に対する健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業で、調査研究は挙げられていません。なお、調査研究は都道府県と国の責務(第3条第2項・第3項)にも、基本指針に定める事項(第4条第2項)にも含まれています。しかし、市町村の責務(第3条第1項:必要な施設の整備、人材の確保及び資質の向上等)には含まれていません。調査研究は、広域的・専門的・技術的な拠点である保健所や、都道府県・国の役割として覚えましょう。

3.市町村保健センターの整備について規定している。:正答。地域保健法には、市町村が市町村保健センターを設置できること(第18条第1項)と、その目的(同条第2項)が定められています。国による設置費用の一部補助と、整備が円滑に進むための国の配慮も規定されています。厚生労働大臣が定める基本指針の事項(第4条第2項)にも、「保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項」が含まれています。

4.都道府県保健所の業務の1つに予防接種事業がある。:地域保健法に列挙された保健所の事業には、「予防接種事業」という項目はありません。予防接種の実施主体と内容は予防接種法が定めており、定期接種を行うのは市町村長です。臨時接種では都道府県知事が関与する場合もありますが、これも予防接種法の規定です。地域保健法が都道府県の保健所の業務として特に定めているのは、第8条の業務です。市町村相互間の連絡調整と、市町村の求めに応じた技術的助言・職員研修などの援助がこれにあたります。保健所の事業(第6条)に「疾病の予防に関する事項」があるため取り違えやすいので、注意しましょう。

覚えるポイント

  • 地域保健法の柱は、市町村・都道府県・国の責務、厚生労働大臣が定める基本指針、保健所、市町村保健センター、人材確保支援計画です。前身は保健所法で、1994年に改正・改称され、1997年に全面施行されました。
  • 保健所の設置主体は、都道府県・指定都市・中核市・その他の政令で定める市・特別区です。第6条に14項目の事業があり、情報の活用・調査研究・治療・試験検査は第7条の「行うことができる」事業です。
  • 市町村保健センターは、市町村の任意設置です。健康相談・保健指導・健康診査などの身近な対人保健サービスの拠点で、法律上は「施設」と位置づけられています。
  • 調査研究は、保健所の事業(第7条)、都道府県と国の責務(第3条)、基本指針の事項(第4条)に出てきます。市町村の責務(第3条第1項)と市町村保健センターの目的には含まれません。
  • 健康増進計画は健康増進法の規定で、都道府県は義務、市町村は努力義務です。定期予防接種は、予防接種法に基づき市町村長が実施します。
  • 「〇〇法に規定されている」という問題では、内容の正しさだけでなく、根拠法と主体が合っているかも必ず確認しましょう。主体とは、国・都道府県・市町村、保健所・市町村保健センターなどです。

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