第108回
108AM018|第108回 保健師国家試験 過去問
A市は台風被害から2か月が経ち、仮設住宅と集会所が各地区に完成し、家屋に被害を受けた被災者の仮設住宅への入居が開始された。B地区の仮設住宅には元の居住地が異なる世帯が入居したため、新たなコミュニティ構築への支援が復興支援の課題となっている。B地区の仮設住宅で新たなコミュニティづくりのために行う支援として、効果が期待できるのはどれか。
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正解4
正答
4.集会所で集団健康教育を定期開催する。
この問題のポイント
被災から2か月後、仮設住宅への入居が始まった時期に、元の居住地が異なる世帯どうしで新しいコミュニティをつくるための支援を問う問題です。手がかりは「元の居住地が異なる世帯」「新たなコミュニティ構築」「集会所が完成」という記述です。求められているのは個々の健康状態の把握ではなく、住民どうしが出会い、関係を築く場づくりです。個別支援や一方向の情報提供と、住民が集う集団支援とを見分けられるかが鍵になります。
解説
問題文の状況を整理する
- 時期:台風被害から2か月です。避難所から仮設住宅へ生活の場が移る時期で、保健活動の重点が応急対策から復旧・復興へ移っていきます。
- 場所と資源:仮設住宅とともに集会所が各地区に完成しています。住民が集まれる拠点がすでに用意されていることが、問題文にわざわざ書かれています。
- 住民の特徴:元の居住地が異なる世帯が入居しています。そのため入居者どうしは互いを知らず、以前の近所づきあいや自治会などのつながりが途切れています。
- 課題:新たなコミュニティ構築です。設問は、この課題に対して「効果が期待できる」支援を問うています。
仮設住宅期に起こりやすい健康問題
仮設住宅では、住み慣れた地域や人間関係から切り離されます。その結果、閉じこもり、社会的孤立、生活不活発病(活動量が落ちて心身の機能が低下した状態)、飲酒量の増加、抑うつや不眠が生じやすくなります。
阪神・淡路大震災では、仮設住宅への入居が抽選などで行われ、従来の地域のつながりが失われました。その中で一人暮らしの高齢者などの孤独死が社会問題となりました。この経験から、仮設住宅期の保健活動では個別の健康管理と並んで、入居者どうしが支え合える関係、つまり新しいコミュニティを育てることが重視されるようになりました。
集団健康教育がコミュニティづくりにつながる理由
集会所で定期的に開く集団健康教育には、次のような働きがあります。
- 同じ仮設住宅の住民が同じ時間・場所に集まり、顔を合わせるきっかけになります。
- 血圧測定、体操、食事や睡眠の話など、誰にとっても身近な「健康」を入口にするので、初対面どうしでも参加しやすくなります。
- 定期開催によって会う回数が重なり、あいさつや声かけ、見守り合いといった関係が生まれやすくなります。
- 参加者の中から世話役となる人が現れれば、住民主体の自主グループやサロン活動へ育てていけます。
- 保健師にとっては、参加者の様子や、来なくなった人の情報から、支援が必要な人を把握する機会にもなります。
公衆衛生看護では、個人・家族への支援と、集団・地域への支援を目的に応じて使い分けます。今回の目的は住民と住民を結ぶ横のつながりをつくることです。そのため、住民が集まる集団の場を、身近な拠点で、継続的に設ける方法が最も適しています。最終的な目標は、保健師が場を用意し続けることではありません。住民が自分たちで集まり、支え合える状態(自治会活動や自主グループ)へ移行させることを目指す点も押さえておきましょう。
選択肢の確認
1.電話健康相談窓口を増設する。:電話相談は、相談したい人が保健師などと一対一でつながる個別支援で、住民どうしが出会う機会は生まれません。被災者の不安や健康問題に応える手段としては意味があります。ただし、自分から電話をかけられる人しか利用できず、コミュニティ構築という課題には直接結びつきません。「相談体制の整備」を問われる場面であれば候補になる支援です。
2.家庭訪問による健康観察を実施する。:家庭訪問は保健師が世帯ごとに出向く個別支援です。健康状態の把握や、閉じこもり・孤立しがちな人、要配慮者の早期発見には欠かせません。仮設住宅入居直後の全戸訪問などは実際に重要な活動ですが、訪問そのものは保健師と住民の関係にとどまり、住民どうしのつながりはつくれません。「支援が必要な人の把握」を問われていれば適切になる選択肢です。訪問の際に集会所の催しへ誘うなど、選択肢4と組み合わせると効果が高まります。
3.ホームページで健康情報を発信する。:ホームページは多くの人に同じ情報を届けられますが、一方向の情報提供にとどまり、受け手どうしの交流は生まれません。また被災者には、高齢者やインターネット環境を失った人も多く、情報が届く人に偏りが出やすい方法です。広報手段としての価値はありますが、コミュニティづくりの効果は期待できません。
4.集会所で集団健康教育を定期開催する。:正答。集会所という身近な拠点に住民が定期的に集まることで、顔見知りの関係が生まれ、声かけや見守り合いへと広がっていきます。健康という共通の話題があるため参加しやすく、住民主体の自主的な集まりへ発展させる足がかりにもなります。
覚えるポイント
- 支援方法は目的で選びます。支援が必要な人の把握・早期発見なら家庭訪問、個別の悩みへの対応なら相談、住民どうしのつながりづくりなら集団の場づくりです。
- コミュニティづくりの支援のキーワードは「集団」「身近な場所(集会所など)」「定期・継続」「住民主体への移行」です。
- 仮設住宅期の主な健康課題は、閉じこもり、社会的孤立・孤独死、生活不活発病、飲酒問題、抑うつ・不眠です。
- 阪神・淡路大震災の仮設住宅での孤独死を教訓に、復旧・復興期には入居者のコミュニティ形成と見守り体制づくりが重視されます。
- 電話相談・ホームページ・家庭訪問は保健師と住民を結ぶ「縦の線」、集団活動は住民どうしを結ぶ「横の線」と整理すると区別しやすくなります。
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