第108回
108AM010|第108回 保健師国家試験 過去問
A市の保健医療福祉関係者で構成される会議において、医療機関と介護サービス事業者との連携ができていないという課題が出された。課題への対応において優先度が高いのはどれか。
解答・解説を見る
正解2
正答
2.地域ケア会議で互いの意見が共有できるようにする。
この問題のポイント
地域の関係者会議で「医療と介護の連携ができていない」という課題が出たとき、保健師がまず取り組むべきことを問う問題です。課題は提起されたばかりで、なぜ連携できていないのかという原因はまだ分かっていません。当事者である医療側と介護側が同じ場で意見を出し合い、課題を具体的にする段階を最初に踏むことが優先されます。
解説
問題文で判断の手がかりになるのは次の3点です。
- 「会議において…課題が出された」:課題が提起された段階です。原因の分析や対策の検討はまだ行われていません。
- 「医療機関と介護サービス事業者との連携」:課題の当事者は2者です。どちらか一方だけの問題ではありません。
- 「優先度が高いのは」:どの選択肢も連携の推進に役立つ可能性がある取り組みです。問われているのは取り組む順番です。
連携がうまくいかない原因は地域によってさまざまです。たとえば、互いの役割や業務の実情を知らない、連絡の窓口や方法が決まっていない、情報を共有する様式がない、相手に気軽に相談できる関係がない、といった原因が考えられます。原因が分からないまま対策を打つと、的外れになったり、一方の負担だけが増えたりします。公衆衛生看護活動は、課題の明確化→対策の立案→実施→評価というPDCAの流れで進めます。したがって、まず関係者が実情を持ち寄り、課題を具体的にすることが出発点になります。
地域ケア会議は、介護保険法第115条の48で、市町村が設置に努めることとされている会議です。市町村または地域包括支援センターが開催し、介護支援専門員、保健・医療・福祉の専門職、民生委員などの関係者で構成されます。個別事例の検討を通じて、次の5つの機能を果たすとされています。
- 個別課題の解決
- ネットワークの構築
- 地域課題の発見
- 地域づくり・資源開発
- 政策形成
医療機関と介護サービス事業者が同じ事例について意見を交わすと、「退院時に必要な情報が届かない」「主治医に相談しにくい」など、どこで連携が途切れているかが具体的に見えてきます。同時に、互いに顔の見える関係ができていきます。
選択肢1・3の研修や選択肢4のシステム導入も、実際に連携推進の手段として使われるものです。ただし、これらは「知識不足」や「情報伝達の仕組みの不足」が原因だと分かったときに選ぶ対策です。現時点では原因が分かっていないため、両者が意見を共有して課題を明確にする選択肢2が、最初に取り組むべきことになります。
市町村が地域支援事業(包括的支援事業)として行う在宅医療・介護連携推進事業でも、考え方は同じです。地域の医療・介護資源を把握し、課題を抽出して対応策を検討したうえで、情報共有の支援や研修などの具体策に進みます。保健師の役割は、会議の場で関係者の声を引き出し、個別事例から見えた課題を地域課題として積み上げ、施策につなげることです。
選択肢の確認
1.医療従事者を対象に在宅ケアの勉強会を企画する。:医療従事者だけを対象とした一方向の知識提供であり、介護側の意見や困りごとを把握する機会になりません。連携が進まない原因が「医療側の在宅ケアへの理解不足」だと明らかになった段階であれば、有効な手段になりえます。しかし原因が分からない現時点では優先度が低くなります。なお、研修を行う場合も、医療職と介護職が一緒に参加する多職種合同研修のほうが連携づくりには効果的です。
2.地域ケア会議で互いの意見が共有できるようにする。:正答。医療機関と介護サービス事業者の双方が参加する場で意見を交わすことで、連携が途切れている具体的な場面や原因を明らかにできます。あわせて顔の見える関係づくりも進みます。これは課題の明確化という活動の出発点にあたり、その後にどの対策を選ぶかの根拠にもなります。
3.介護サービス事業者を対象に医療の知識に関する研修会を開催する。:介護側の医療知識不足を連携不足の原因と決めつけた対策で、その前提となる実態把握が行われていません。医療側への働きかけも含まれないため、双方向の関係づくりにはつながりません。介護職から「医療的な内容が分からず相談しにくい」という声が集まった後であれば、検討する価値のある対策です。
4.A市の医療機関に新しい医療連携のネットワークシステムを導入する。:導入先が医療機関に限られているため、介護サービス事業者との情報共有を直接改善するものになっていません。また、費用や準備の負担が大きい対策です。関係者が何をどのように共有したいのかという合意がないまま導入すると、使われずに終わるおそれがあります。ICTによる情報共有は連携推進の有効な手段ですが、課題と運用方法を関係者で共有した後に検討するものです。
覚えるポイント
- 課題が提起された直後は、原因を決めつけた対策よりも、関係者で実態を共有して課題を明確にすることを優先します(PDCAの最初の段階)。
- 「連携できていない」という課題には、一方の職種だけへの研修よりも先に、双方が同じ場で話し合う仕組みをつくります。
- 地域ケア会議は介護保険法に位置づけられ、市町村・地域包括支援センターが開催します。5つの機能は、個別課題解決、ネットワーク構築、地域課題発見、地域づくり・資源開発、政策形成です。
- 在宅医療・介護連携推進事業は、市町村が地域支援事業(包括的支援事業)として実施します。研修や情報共有の支援は、現状把握と課題抽出を踏まえて行います。
- システム導入のように費用と負担が大きい対策は、関係者の合意形成と運用方法の検討を経てから行うのが原則です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。