第109回
109PM025|第109回 保健師国家試験 過去問
平成30年(2018年)の難病患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉による全国の特定医療費(指定難病)医療受給者証発行数の上位5疾病について、年齢別のグラフを示す。Aが示す疾患はどれか。

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正解1
正答
1.潰瘍性大腸炎
この問題のポイント
指定難病の受給者証の件数を年齢階級別に積み上げたグラフから、1つの層がどの疾患かを見分ける問題です。各疾患の好発年齢・性別・経過(長く療養を続ける慢性疾患かどうか)と、受給者数の規模を組み合わせて判断します。Aは10歳代から現れて40歳代で最大になり、高齢まで途切れずに分布しています。合計も最大級であることが決め手です。
解説
グラフの読み取り
縦軸は受給者証の件数(0〜120,000件、20,000件刻み)、横軸は年齢階級です。各棒は5つの模様の層を積み上げたものです。下から淡い灰色、縦縞、濃い灰色、黒、点模様の順に重なり、最上層の点模様には75歳以上の棒で「A」と書かれています。値を読む前に、次の2点を確認します。
- 年齢階級の幅がそろっていません。0〜69歳は10歳刻みですが、70〜74歳は5歳幅で、75歳以上には上限がありません。70〜74歳の棒が60〜69歳より低いのは主に幅が半分だからで、1歳あたりに直すとむしろ多くなります。
- 0〜9歳はほぼ0件で、10〜19歳もごくわずかです。もともと小児期に発症しにくい疾患が多いうえ、小児の患者は主に児童福祉法の小児慢性特定疾病医療費助成(原則18歳未満、継続が必要な場合は20歳未満まで)の対象になるためと考えられます。
グラフからおおよその値を読むと、各層の形は次のとおりです。
- 淡い灰色(最下層):40歳代にわずかに現れ、60〜69歳と70〜74歳でそれぞれ2万件余り、75歳以上だけで約8万件に達します。合計は約13万件です。
- 縦縞:20歳代から目立ちはじめ、40歳代の約1.5万件が最大で、60歳代も約1万件あります。合計は約6万件です。
- 濃い灰色:40歳代から現れ、年齢とともに増えて75歳以上で約1.2万件になります。合計は約3万件です。
- 黒:10歳代から現れ、20〜40歳代に0.8万〜1.2万件程度ありますが、60歳代以降は数千件以下です。合計は約4万件です。
- 点模様(A):10歳代から現れ、20歳代約1.2万件、30歳代約2万件、40歳代約3万件で最大となり、50歳代約2.4万件、60歳代約2万件、70〜74歳約0.8万件、75歳以上約1万件です。合計は約12万〜13万件です。
Aを潰瘍性大腸炎と判断する筋道
まず、高齢に偏って75歳以上で突出している最下層は、加齢とともに有病率が上がるパーキンソン病です。次に、この最下層と同じくらい合計が大きく、若年から高齢まで幅広く分布している層がAです。指定難病の受給者数でパーキンソン病と並んで突出して多いのは潰瘍性大腸炎であり、Aの年齢分布もこの疾患の特徴と合います。
潰瘍性大腸炎は、原因不明の慢性炎症性疾患です。大腸の粘膜に、直腸から口側へ連続して広がるびらん・潰瘍ができます。粘血便・下痢・腹痛が主な症状で、再燃と寛解を繰り返します。発症のピークは20歳代ですが、小児から高齢者まであらゆる年齢で発症し、男女差はほとんどありません。
ここで注意したいのは、グラフの年齢が発症したときの年齢ではなく、集計した時点の年齢だということです。受給者証の件数は、その時点で療養している人の数なので、有病数に近い指標です。有病率はおおむね「罹患率×平均有病期間」で決まります。潰瘍性大腸炎は生命予後がおおむね良好で、何十年も療養を続ける人が多いため、発症のピークより上の年代に患者が積み上がります。Aの山が発症のピークである20歳代ではなく40歳代にあり、60歳代以降にも多く残る大きな理由はここにあります。
残りの層は、好発年齢から当てはめます。黒は、10歳代後半〜20歳代に発症しやすく男性に多いクローン病です。形はAに似ていますが、規模はAの約3分の1で、高齢層はごく少数です。縦縞は20〜40歳代の女性に多い全身性エリテマトーデス(SLE)、濃い灰色は中年以降の男性に多い後縦靱帯骨化症です。同じ炎症性腸疾患であるクローン病とAを見分けるときは、「総数の大きさ」と「高齢層の厚み」に注目します。
受給者証の件数の背景にある制度
難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法、2014年成立、2015年1月施行)は、難病を「発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期の療養を必要とするもの」と定めています。そのうち、患者数が人口のおおむね0.1%程度に達せず、客観的な診断基準が確立しているものが指定難病で、医療費助成の対象です。
助成を受けられるのは、指定難病と診断されたうえで、疾患ごとの重症度分類で一定以上の病状にある人か、軽症でも高額な医療を続ける必要がある人(軽症高額該当)です。自己負担は原則2割で、所得に応じた月額上限があります。つまり受給者証の件数は患者の総数ではなく、医療費助成を受けている人の数です。支給認定と受給者証の交付は都道府県・指定都市が行い、件数は衛生行政報告例で年度ごとに集計されています。
保健所を指定難病の申請窓口にしている自治体は多く、保健師は療養相談や家庭訪問、難病対策地域協議会などを通して難病患者を支援します。年齢分布は、支援ニーズを考える手がかりになります。若年〜壮年に多い炎症性腸疾患やSLEでは、就学・就労との両立、妊娠・出産、長期の服薬継続への支援が大切です。高齢に多いパーキンソン病や後縦靱帯骨化症では、介護保険との連携、転倒予防、在宅療養の支援が重要になります。
選択肢の確認
1.潰瘍性大腸炎:正答。最上層の点模様(A)にあたります。10歳代から現れ、20〜50歳代では各棒の中で最も厚い層です。40歳代の約3万件が最大で、60歳代以降も一定数が残ります。本疾患は発症のピークが20歳代にある一方、小児から高齢者まで発症します。再燃と寛解を繰り返しながらも生命予後はおおむね良好なため、療養を続ける患者が年齢とともに積み上がります。合計も約12万〜13万件で最下層の疾患と並ぶ規模であり、指定難病の受給者数が特に多い本疾患の特徴に一致します。関連知識として、長期経過例では大腸がんのリスクが高まり、定期的な内視鏡検査が必要になる点も押さえておきます。
2.後縦靱帯骨化症:下から3番目の濃い灰色の層にあたり、40歳代からわずかに現れ、年齢とともに増えて75歳以上で約1.2万件と最も多くなります。脊柱管の前壁をなす後縦靱帯が骨化し、脊髄や神経根を圧迫する疾患です。頸椎に多く、50歳前後から発症しやすく男性に多いため、このような分布になります。10歳代から現れて40歳代に最大となるAとは、現れる年齢も山の位置も異なります。軽い転倒でも脊髄損傷を起こしやすいことや、介護保険の特定疾病に含まれることも押さえておきます。
3.Crohn〈クローン〉病:下から4番目の黒い層にあたり、10歳代から現れて20〜40歳代に多く、60歳代以降は数千件以下に減ります。10歳代後半〜20歳代に発症しやすく、男性に多い(男女比およそ2対1)炎症性腸疾患です。若い年代に偏る点はAと似ていますが、合計は約4万件とAの約3分の1にとどまり、高齢層もAよりはるかに少なくなります。病変は口腔から肛門までの消化管のどこにでも、非連続性(スキップ病変)かつ全層性に生じ、縦走潰瘍、敷石像、瘻孔、痔瘻などを伴います。直腸から連続して粘膜に炎症が広がる選択肢1との違いとして整理しておきます。
4.Parkinson〈パーキンソン〉病:最下層の淡い灰色の層にあたり、40歳代にわずかに現れ、60歳代以降に急増して75歳以上だけで約8万件を占めます。中脳黒質のドパミン神経細胞が変性し、安静時振戦・筋強剛・無動・姿勢反射障害が現れる神経変性疾患です。50〜60歳代以降の発症が多く、高齢になるほど有病率が上がります。合計はAと並ぶ約13万件ですが、若年層にほとんどいない点でAとは明らかに異なります。医療費助成の重症度基準はHoehn-Yahr重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上です。関連疾患とともに介護保険の特定疾病にも含まれます。
5.全身性エリテマトーデス〈SLE〉:下から2番目の縦縞の層にあたり、20歳代から目立ちはじめ、40歳代の約1.5万件が最大で、治療を続けながら中高年まで分布します。抗核抗体や抗ds-DNA抗体などの自己抗体が関わる全身性の自己免疫疾患です。20〜40歳代の女性に多く(男女比およそ1対9)、蝶形紅斑、光線過敏症、関節炎、ループス腎炎などを起こします。山の形はAに似ていますが、どの年齢階級でもAより少なく、合計も約6万件とAの半分程度です。好発年齢が妊娠・出産の時期と重なるため、病状が安定した時期に計画的に妊娠できるよう支援することが大切です。
覚えるポイント
- 指定難病の受給者証の件数はパーキンソン病と潰瘍性大腸炎が突出して多く、2018年のこのグラフではどちらも12万〜13万件前後です。高齢に集中するのがパーキンソン病、若年から高齢まで幅広いのが潰瘍性大腸炎です。
- 好発年齢と性別で見分けます。潰瘍性大腸炎は20歳代がピークですが全年齢で発症し、男女差はありません。クローン病は10歳代後半〜20歳代で男性に多く、SLEは20〜40歳代の女性(男女比およそ1対9)に多く発症します。後縦靱帯骨化症は50歳前後からで男性に多く、パーキンソン病は50〜60歳代以降に多く高齢ほど増えます。
- グラフの年齢は集計時点の年齢です。有病率≒罹患率×平均有病期間なので、生命予後のよい慢性疾患では、発症のピークより上の年代に患者が積み上がります。
- 年齢階級の幅がそろわないグラフ(70〜74歳は5歳幅、75歳以上は上限なし)では、棒の高さをそのまま比べず、階級の幅を確かめてから読みます。
- 受給者証の件数は患者の総数ではなく、重症度基準を満たす人と軽症高額該当者の数です。18歳未満は主に小児慢性特定疾病医療費助成(児童福祉法)の対象です。
- パーキンソン病関連疾患と後縦靱帯骨化症は介護保険の特定疾病です。40〜64歳でも要介護・要支援の認定を受ければサービスを利用できます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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