第109回
109PM026|第109回 保健師国家試験 過去問
潜伏期間が最も長い感染症はどれか。
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正解2
正答
2.肺結核
この問題のポイント
代表的な感染症の潜伏期間を比べる問題です。インフルエンザは数日、百日咳は1週間前後、風疹と流行性耳下腺炎は2〜3週間で、いずれも日から週の単位です。これに対して結核は、感染から発病までが数か月から数十年に及びます。この違いが判断の鍵になります。
解説
潜伏期間とは
潜伏期間は、病原体が体内に入って感染が成立してから、最初の症状が現れるまでの期間です。公衆衛生看護では、次のような判断の根拠になります。
- 患者の発症日から逆算して、感染した時期と場所(感染源)を推定する
- 接触者の健康観察をいつまで続けるかを決める
- 集団発生の広がりを予測する
潜伏期間の後半や発症の直前から、他者へうつす感染症もあります。「症状がない=感染させない」とは限らない点にも注意が必要です。
結核の潜伏期間が桁違いに長い理由
結核菌は、咳などで空気中に出た飛沫核を吸い込むことで感染します(空気感染)。菌は肺胞に達して初感染巣をつくり、肺門リンパ節にも病変を生じます。多くの場合、マクロファージとTリンパ球による細胞性免疫が働き、菌は肉芽腫の中に封じ込められます。ただし菌は死滅せず、生きたまま休眠した状態で体内に残ります。これが潜在性結核感染症(LTBI)です。症状はなく、他者へ感染させることもありません。
感染した人のうち、発病するのはおおむね1割程度です。その約半数は、感染後1〜2年以内に発病します。残りは数年から数十年後に、次のような原因で免疫が低下したときに発病します。休眠していた菌が再び増えるためで、これを内因性再燃といいます。
- 加齢
- 糖尿病、HIV感染
- 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、抗TNF-α製剤の使用
- 低栄養、透析
このため結核では、感染から発病までの期間が数か月から数十年と非常に長く、幅もあります。日本の新規登録結核患者に高齢者が多いのも、若い頃に受けた感染が加齢に伴って再燃する例が多いためです。
保健師活動とのつながり
この長さと特徴は、保健所が行う接触者健康診断の組み立てに直結します。
- 感染が成立してからIGRA(インターフェロンγ遊離試験)が陽性になるまで、約8週間かかります。このため、最終接触からおおむね2〜3か月後に検査を行います。
- 感染が確認されてLTBIと診断された人には、イソニアジドの内服などで発病を防ぐ治療を行います。
- 発病の危険が特に高い最初の2年程度は、必要に応じて胸部エックス線検査で経過を観察します。
「1回検査して終わり」にできないのは、潜伏期間が長いからです。
ほかの選択肢との比較
ほかの4疾患は、いずれも潜伏期間が日から週の単位の急性感染症です。
- インフルエンザ:1〜3日
- 百日咳:7〜10日
- 風疹:2〜3週間
- 流行性耳下腺炎:2〜3週間
最も長い風疹や流行性耳下腺炎でも、結核とは比べものになりません。
選択肢の確認
1.風疹:風疹ウイルスが飛沫や接触で感染する病気で、潜伏期間は2〜3週間(平均16〜18日程度)です。発熱、発疹、耳介後部や後頸部のリンパ節腫脹が特徴です。妊娠20週頃までに初めて感染すると、先天性風疹症候群(白内障、先天性心疾患、難聴)の原因になります。感染した時期が早いほど発生頻度が高く、特に妊娠12週頃までの感染で高くなります。潜伏期間は選択肢5と並んで今回の中では長い部類ですが、週の単位にとどまり、結核の月〜年単位には及びません。
2.肺結核:正答。結核菌は感染しても、多くは細胞性免疫で封じ込められ、潜在性結核感染症として体内に残ります。発病は感染後1〜2年以内が多いものの、数年から数十年後に免疫の低下をきっかけに発病することもあります。潜伏期間は数か月から数十年に及び、選択肢の中で最も長くなります。
3.百日咳:百日咳菌による飛沫感染で、潜伏期間は通常7〜10日程度です。経過はかぜに似たカタル期から始まり、発作性の激しい咳が続く痙咳期、回復期へと進みます。「百日」という病名は、この咳が長く続く経過に由来します。潜伏期間が長いという意味ではないので、取り違えないようにします。ワクチン未接種の早期乳児では、無呼吸発作を起こして重症化しやすい点が重要です。
4.インフルエンザ:インフルエンザウイルスによる飛沫・接触感染で、潜伏期間は1〜3日と選択肢の中で最も短いです。急な高熱や全身倦怠感、関節痛などの全身症状で発症します。発症の前日ごろから他者へ感染させることがあります。潜伏期間が短いことと合わせて、施設内で短期間に集団発生しやすい特徴があります。
5.流行性耳下腺炎:ムンプスウイルスが飛沫や接触で感染する病気で、潜伏期間は2〜3週間(平均16〜18日程度)です。主な症状は耳下腺の腫脹と痛みです。合併症として、無菌性髄膜炎、回復しにくい感音性難聴(ムンプス難聴)、思春期以降の精巣炎があります。潜伏期間は風疹とほぼ同じ程度で、結核よりはるかに短い期間です。
覚えるポイント
- 潜伏期間の目安は、インフルエンザ1〜3日、百日咳7〜10日、麻疹10〜12日、水痘約2週間、風疹と流行性耳下腺炎は2〜3週間です。
- 結核では「感染=発病」ではありません。感染者のおおむね1割が発病し、その約半数は感染後1〜2年以内に発病します。残りは数年から数十年後に、免疫低下をきっかけとして再燃します。
- 潜伏期間が月〜年単位の感染症として、結核のほかに次のものも押さえておきます。B型肝炎(1〜6か月)、HIV感染症(無治療ではエイズ発症まで数年〜10年程度)、ハンセン病(数年〜数十年)です。
- 結核の接触者健診では、IGRAが陽性になるまでの約8週間を考え、最終接触から2〜3か月後に検査します。発病しやすい最初の2年程度は経過を観察します。
- 潜伏期間の長さと、病気の経過の長さ(百日咳の咳が続く期間など)は、別の概念として区別します。
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