第108回
108AM032|第108回 保健師国家試験 過去問
平常時に指定医療機関から患者発生数の報告を受けて流行状況を把握する定点把握対象疾患はどれか。2つ選べ。
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正解3・5
正答
3.急性出血性結膜炎
5.性器クラミジア感染症
この問題のポイント
感染症法に基づく感染症発生動向調査には、全数把握と定点把握の2つの方法があります。この問題では、その区別ができるかが問われています。手がかりは「指定医療機関から」「流行状況を把握する」という表現です。これは診断したすべての医師が届け出る全数把握ではなく、五類感染症の一部だけを対象とする定点把握を指しています。各疾患の類型(一類〜五類)と、五類の場合はどの定点から報告されるかを思い出せれば解答できます。
解説
全数把握と定点把握
感染症法では、感染症の発生状況を継続的に集めて分析し、その結果を国民や医療関係者に還元する感染症発生動向調査(サーベイランス)が行われています。把握の方法は次の2つです。
- 全数把握:その感染症を診断したすべての医師に届出の義務があります。対象は一類〜四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、五類感染症の一部です。一類〜四類は「直ちに」届け出ます。五類の全数把握疾患は原則7日以内ですが、麻しん・風しん・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届け出ます。
- 定点把握:患者数が多く、1例ごとの行政対応を必要としない五類感染症の一部が対象です。都道府県知事が指定した医療機関(指定届出機関=定点)だけが、週単位または月単位で患者数を報告します。
定点把握の目的は、患者の総数を数えることではありません。1定点当たりの報告数の推移を平常時から追い、例年と比べて流行の立ち上がり・ピーク・終息をとらえることにあります。報告は保健所を経由して都道府県、国へと集約され、集計結果は感染症週報などで公表されます。保健所の保健師は、この情報をもとに地域の流行を把握し、学校や高齢者施設への注意喚起、手洗いや咳エチケットの啓発などに生かします。インフルエンザでは、定点当たり報告数10で注意報、30で警報という基準がよく知られています。
患者報告を行う主な定点(出題当時)
- インフルエンザ定点(内科・小児科):インフルエンザ
- 小児科定点:RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎
- 眼科定点:急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎(週単位)
- 性感染症定点:性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症(月単位)
- 基幹定点:マイコプラズマ肺炎、細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症など
出題後、新型コロナウイルス感染症の五類移行(2023年)や急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスの導入(2025年)に伴い、呼吸器感染症の定点は見直されました。ただし、全数把握と定点把握を使い分ける考え方は変わっていません。
正答に至る判断
選択肢のうち、結核は二類、コレラは三類、鳥インフルエンザは亜型によって二類または四類に分類され、いずれも全数把握です。五類で定点から報告されるのは、眼科定点の急性出血性結膜炎と、性感染症定点の性器クラミジア感染症の2つです。
同じ性感染症でも、梅毒と後天性免疫不全症候群は五類の全数把握です。また、百日咳は2018年に小児科定点から全数把握へ移りました。「病名のイメージ」ではなく「類型と把握方法」で覚えることが大切です。
選択肢の確認
1.結核:二類感染症に分類され、診断したすべての医師が直ちに保健所長を経由して都道府県知事に届け出る全数把握の対象です。患者ごとに入院勧告や就業制限、接触者健診、服薬支援(DOTS)といった個別の対応が必要になります。保健所は登録者として一人ひとりを管理するため、定点で傾向をつかむ方法はなじみません。
2.コレラ:三類感染症であり、診断した医師が直ちに届け出る全数把握の対象です。三類は飲食物を介して集団発生を起こしうる腸管感染症の群で、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスが含まれます。患者には飲食物を取り扱う業務への就業制限がかかり、保健所は感染源の調査や消毒を行います。そのため1例ごとの把握が欠かせず、国内での発生頻度が低い点も定点把握に向きません。
3.急性出血性結膜炎:正答。五類感染症で、眼科定点から週単位で患者数が報告される定点把握の対象です。エンテロウイルス70型やコクサッキーウイルスA24型変異株による結膜炎で、潜伏期が約1日と短く、結膜下出血を伴うのが特徴です。眼科定点の対象は、本疾患と流行性角結膜炎の2つです。手指やタオルを介した接触感染で広がります。学校保健安全法では第三種の感染症とされ、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となります。
4.鳥インフルエンザ:血清亜型H5N1・H7N9によるものは二類、それ以外の亜型によるものは四類に分類されます。いずれも診断した医師が直ちに届け出る全数把握の対象です。人に感染すると重症化しやすく、新型インフルエンザに変化するおそれもあるため、1例でも発生すれば積極的疫学調査などの迅速な対応が必要になります。毎冬流行する季節性インフルエンザは五類の定点把握なので、名称が似ていても扱いが異なる点が頻出のひっかけです。
5.性器クラミジア感染症:正答。五類感染症で、性感染症定点から月単位で患者数が報告される定点把握の対象です。国内で最も報告数の多い性感染症です。女性では無症状のことが多く、未治療のままだと骨盤内炎症性疾患、卵管性不妊、異所性妊娠の原因になります。妊婦では、産道感染によって新生児の結膜炎や肺炎を起こすことがあります。性感染症定点では、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症もあわせて報告されます。
覚えるポイント
- 全数把握は、診断したすべての医師が届け出る方法です。対象は一類〜四類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、五類の一部です。一類〜四類は直ちに、五類全数は原則7日以内に届け出ます(麻しん・風しん・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに)。
- 定点把握は五類の一部だけが対象で、都道府県知事が指定した医療機関が週単位または月単位で報告し、流行の傾向をみます。
- 眼科定点は急性出血性結膜炎と流行性角結膜炎、性感染症定点はクラミジア・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・淋菌の4疾患(月報)です。
- 性感染症のうち梅毒と後天性免疫不全症候群は五類の全数把握で、定点把握の4疾患と区別します。
- 鳥インフルエンザはH5N1・H7N9が二類、それ以外が四類で全数把握です。季節性インフルエンザは五類の定点把握です。
- 定点のデータは「定点当たり報告数」で比較します。インフルエンザは10で注意報、30で警報が目安です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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