第109回
109AM010|第109回 保健師国家試験 過去問
令和元年(2019年)における五類感染症で、週単位で報告される定点把握疾患のうち、インフルエンザ、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、突発性発しんの各週の定点当たり報告数の図を示す。インフルエンザの報告数はどれか。

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正解1
正答
1.A
この問題のポイント
感染症発生動向調査の定点把握のグラフを、疾患ごとの季節性と流行の規模から見分ける問題です。インフルエンザは冬に短期間で爆発的に広がり、急に収まります。夏にはほとんど報告がないため、「年初に突出した鋭い山が一つあり、初夏から秋はほぼ0」という形が決め手になります。ほかの3疾患の型も押さえておくと、どの疾患を問われても答えられます。感染性胃腸炎は通年で報告があって秋冬に増え、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は冬と春〜初夏に山がある二峰性、突発性発しんは季節による変化がほとんどありません。
解説
問題文の「五類感染症」「週単位で報告される定点把握疾患」「定点当たり報告数」から、この図は感染症発生動向調査の週ごとのデータだと分かります。求められているのは、4本の線について「いつ」「どのくらいの高さの」山があるかを読み取り、各疾患の流行パターンと照らし合わせることです。
定点把握と図の読み方
感染症法に基づく感染症発生動向調査では、一類〜四類感染症はすべて全数把握です。五類感染症は全数把握と定点把握に分かれます。五類のうち麻しんや風しんなどの全数把握疾患は、すべての医師に届出義務があります。これに対し定点把握疾患は、都道府県知事が指定した指定届出機関(定点医療機関)が患者数を保健所に報告します。報告の多くは週単位ですが、性感染症定点の疾患などは月単位です。
縦軸の「人/定点」は定点当たり報告数で、報告数を定点医療機関の数で割った値です。定点の数が異なる地域や年のあいだでも流行の大きさを比べられるようにした指標であり、患者の総数そのものではありません。出題当時、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎・感染性胃腸炎・突発性発しんは小児科定点から報告されていました。インフルエンザは、小児科定点と内科定点を合わせたインフルエンザ定点から報告されていました。定点の種類が違うため、線の高さで患者数の多い少ないを直接比べることはできません。流行の形と規模の目安として読みます。なお、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が五類に移行し、インフルエンザと同じ定点で把握されるようになりました。さらに2025年4月からは急性呼吸器感染症(ARI)が五類の定点把握に加わり、インフルエンザを報告する定点の体制も見直されています。
横軸は1年を週で区切った番号です。13週がおよそ3か月にあたるので、第13週は3月末、第26週は6月末、第39週は9月末、第52週は12月末ごろと考えると、山の時期を月に置き換えられます。また、年始、大型連休(第18週前後)、お盆(第33週前後)は休診する医療機関が多いため、報告数が一時的に落ち込みます。図のBとCは第18週で急に下がり、第33週付近でも谷をつくっていますが、これは主に休診の影響です。流行が急に収まったわけではありません。
インフルエンザの流行パターンとAの形
インフルエンザは潜伏期が1〜3日と短く、飛沫感染や接触感染で学校や家庭の中に急速に広がります。そのため流行の立ち上がりも終わりも急です。日本では例年11〜12月ごろに流行が始まり、1〜2月にピークを迎えます。春には下火になり、夏にはほとんど報告がありません。流行の判断には目安があります。全国の定点当たり報告数が1.00を上回ると流行開始とされます。保健所管内の定点当たり報告数では、注意報の基準値が10、警報の開始基準値が30(終息基準値は10)です。
図のA(実線)は第1週の約16から急上昇し、第3〜5週に50を超えて、第5週ごろに約54で最大になります。その後は急速に減り、第10週ごろに約12、第14週(4月上旬)ごろに約2となります。5月以降は秋までほぼ0で推移し、第48〜49週ごろから再び増えて、第52週には約11に達しています。冬だけに現れる鋭い単峰性の山、夏のほぼ0、全国の値でも警報の基準値30を大きく上回る規模という特徴がそろっているので、Aがインフルエンザです。年末の再上昇は、次のシーズンの流行の始まりにあたります。
他の3疾患の流行パターン
- 感染性胃腸炎(B、点線):原因がノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなどのウイルスや細菌と多様なため、1年中報告があります。例年、秋から冬にノロウイルスを中心に流行して12月ごろにピークとなり、春にはロタウイルスなどによる流行もみられます。通年で報告が続き、11月から増えて年末に山をつくるBがこれに当たります。
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(C、一点鎖線):学童期の小児に多く、例年、冬と春から初夏にかけての2つの山(二峰性)がみられます。冬と5〜6月に高く、夏から初秋に下がるCがこれに当たります。
- 突発性発しん(D、破線):主にヒトヘルペスウイルス6型・7型による感染症で、生後6か月〜2歳ごろの乳幼児がかかります。周囲の大人の唾液から散発的に感染することが多く、集団で流行しません。そのため季節による変化がほとんどなく、1年を通じてほぼ一定の報告数になります。年間を通じて1未満で横ばいのDがこれに当たります。
保健師は、このような例年の流行時期と規模を踏まえて週ごとの推移を確認します。そして流行入りの前後に、学校・保育所・高齢者施設へ手洗いや咳エチケット、早めの受診、予防接種などを呼びかけます。インフルエンザは学校保健安全法の第二種感染症です。出席停止期間は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」です。例年より流行の始まりが早い、規模が大きいといった「いつもと違う動き」に気づくことが、健康危機の早期発見につながります。
選択肢の確認
1.A:正答。年初の第3〜5週に定点当たり50を超える突出した山をつくり、2〜3月に急速に減って5月以降はほぼ0となり、年末に再び増え始めています。冬に短期間で爆発的に流行し、夏にはほとんど報告がないという季節性と、流行期に定点当たり数十人に達しうる規模の両方が、インフルエンザと一致します。
2.B:年間を通じて2.5〜10程度の報告が続き、秋から増えて第51週ごろに約10の山をつくる形は、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の流行パターンです。冬に増える点だけを見るとインフルエンザと取り違えやすいのですが、年初に大きな山がないことと、夏も報告が途切れないことが異なります。設問で感染性胃腸炎を問われた場合に選ぶ線です。
3.C:年間を通じて1〜3程度で推移し、冬と5〜6月に高まって夏から初秋に下がる二峰性の動きは、学童期に多いA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の特徴です。冬に報告が多い点はインフルエンザと共通します。しかし山の高さは3前後にとどまり、初夏にも山があるので、冬に鋭い山を一つだけつくるインフルエンザとは異なります。
4.D:年間を通じて1未満の低い値で横ばいが続き、季節による山がみられない動きは、乳幼児が周囲の大人から散発的に感染する突発性発しんの特徴です。流行期の山がまったくないため、冬に大きく流行するインフルエンザには当てはまりません。
覚えるポイント
- 定点当たり報告数は「報告数÷定点医療機関数」で、流行の大きさを地域や年で比べる指標です。患者総数ではありません。五類の定点把握は指定届出機関から報告され、多くは週単位です。
- インフルエンザは冬(1〜2月ごろ)に急峻な山を一つつくり、夏はほぼ0になります。全国の定点当たり1.00超で流行開始です。保健所管内では10が注意報、30が警報の基準値です(警報の終息は10)。
- 感染性胃腸炎は原因が多様で1年中報告があり、秋から冬にノロウイルスを中心に流行して12月ごろピークとなります。
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は学童期に多く、冬と春〜初夏に山がある二峰性です。
- 突発性発しん(HHV-6・7、生後6か月〜2歳ごろ)は季節性がなく、1年を通じてほぼ一定です。
- 週と月は「13週≒3か月」で換算します。年始・大型連休・お盆の週の急な谷は休診の影響です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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