第108回
108AM031|第108回 保健師国家試験 過去問
A市では8月に大規模災害が発生し災害復興が必要となった。健康増進課ではコミュニティの復興を考慮した事業について次年度に実施することを計画し、予算要求を行うことになった。健康増進課の予算要求について正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.議会の承認を得る。
この問題のポイント
地方公共団体の予算がどのような手続で成立し、どのような原則に従うかを問う問題です。「予算は首長が調製し、議会の議決で成立する」「会計年度独立(単年度)の原則」「合理的な積算に基づいて計上する」の3点を当てはめれば、災害復興という特別な場面でも判断できます。保健師が事業化・施策化を進めるうえで欠かせない行政の基礎知識です。
解説
問題文の手がかり
「次年度に実施することを計画し、予算要求を行う」という記述から、この場面は事業計画を立てたあと、次年度予算の編成過程に乗せる段階だと読み取れます。「大規模災害」「コミュニティの復興」は目を引く語ですが、災害があっても予算の基本ルールは変わりません。問われているのは、平常時と同じ予算の原則です。
自治体予算が成立するまでの流れ
- 事業計画の立案:所管課(ここでは健康増進課)が、地域診断に基づいて目的・目標・対象・実施方法・評価指標を定めます。
- 予算要求:事業ごとに必要経費を積算し、根拠を示して財政担当課へ要求します。
- 査定:財政担当課や首長が、必要性・効果・財源の面から査定します。
- 調製・提出:首長が全体の予算案を調製し、議会に提出します。地方自治法第211条は、首長が毎会計年度の予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。予算案の提出権は首長にあり、所管課が直接議会に諮るわけではありません。
- 議決・成立:予算を定めることは地方自治法第96条で議会の議決事件とされており、議決を経て初めて予算が成立し、執行できます。
- 執行・決算・評価:年度内に執行し、決算は監査委員の審査を経て議会の認定に付されます。事業評価の結果は次年度の計画と要求に反映されます。
一般的には、秋ごろに各課が要求し、年明けに査定が行われ、年度開始前の議会で審議されます。8月の災害を受けて次年度事業を計画するという設定は、この通常の流れに乗せる時期と合っています。
押さえるべき予算の原則
- 会計年度独立の原則:会計年度は4月1日から翌年3月31日までで、各年度の歳出はその年度の歳入で賄います(地方自治法第208条)。予算は年度ごとに編成し議決するのが原則(単年度主義)です。
- 例外は法定の手続に限られます:履行に数年度を要する事件のための継続費、将来の支出を約束する債務負担行為、年度内に終わらなかった経費を翌年度に使う繰越明許費・事故繰越があります。このうち継続費・債務負担行為・繰越明許費は予算の一部として議会の議決を要します。
- 合理的な積算:地方自治法は「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求め(第2条第14項)、地方財政法は合理的な基準で経費を算定して予算に計上することを求めています。
災害の復興期には、避難所から仮設住宅、災害公営住宅へと住まいが移るたびにコミュニティが分断され、孤立、閉じこもり、飲酒問題などの健康課題が長く続きます。そのため、サロン活動や住民組織の育成といった復興期の健康づくり事業は長期的な視点が必要です。長期の構想は復興計画や健康増進計画に位置づけ、予算は毎年度、実績と評価を示して要求し、議会の承認を得ていきます。地域診断のデータや事業評価の結果を必要性と積算の根拠に使うことが、議会と住民への説明責任を果たすことにもつながります。
選択肢の確認
1.議会の承認を得る。:正答。予算は首長が調製して議会に提出し、議会の議決を経て成立します。健康増進課の要求は財政担当課・首長の査定を経て予算案に組み込まれ、議会で承認されなければ事業を執行できません。厳密には課が直接議会に諮るのではなく首長が提出しますが、「要求した事業費は議会の承認を経て成立する」という点で正しい記述です。発災直後の緊急対応では補正予算を専決処分で決めることもありますが、その場合も次の議会に報告して承認を求めなければなりません。次年度事業を計画的に要求する今回の場面では、通常どおり議会の議決を経ます。
2.前年度の繰越金を組み込んで要求する。:決算で生じた剰余金は、地方自治法の規定により翌年度の歳入に「繰越金」として編入されます。ただし、これは自治体全体の歳入として財政担当課が扱う財源であり、所管課が自分の事業の財源として当てにし、要求に組み込むものではありません。会計年度独立の原則のもとでは、各課が年度内に使わなかった予算(不用額)を翌年度に自由に持ち越して使うことはできません。繰越明許費や事故繰越という制度はありますが、これはすでに予算化された事業が年度内に終わらなかった場合の例外的な扱いで、次年度の新規事業を要求する場面とは異なります。所管課は、事業に必要な歳出額を積算して要求するのが基本です。
3.長期的な復興を踏まえ複数年度の予算を要求する。:復興が長期に及ぶのは事実ですが、自治体の予算は年度ごとに編成し議決する単年度主義が原則です。数年度にわたって支出する仕組みとして継続費や債務負担行為がありますが、いずれも法律に定められた例外的な手続で、大規模な工事などに用いられるものです。通常の保健事業は年度ごとに予算を要求します。「計画」は複数年度の見通しで立ててよい一方、「予算」は原則単年度という点を取り違えないようにします。長期的な視点は復興計画などに位置づけ、予算は毎年度の評価を踏まえて要求していくのが正しい考え方です。
4.事業の具体的な実施方法は予算が成立してから考える。:予算要求では、「対象者数×実施回数×単価」のように事業ごとの必要経費を積算し、その根拠を示さなければなりません。誰を対象に、どこで、どのような内容を、何回、どの職種を何人配置して行うかといった実施方法が決まっていなければ、積算も査定での説明もできません。査定や議会審議では事業の必要性と効果も問われるため、目的・目標や評価指標も含めて要求前に具体化しておく必要があります。予算成立後に細部を調整することはありますが、方法を決めないまま要求するのは「計画→予算」の順序が逆です。
5.事業実施の際に予算不足にならないように多めに計上する。:地方自治法は「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求め、地方財政法は合理的な基準で経費を算定して予算に計上することを定めています。不足に備えて余裕を見込んだ過大な計上はこの原則に反し、他の事業に使えたはずの財源を縛ることにもなります。年度途中に想定外の需要が生じて不足する場合には、補正予算の編成や予備費の充用で対応する仕組みがあります。災害復興期で需要の見通しが立てにくいときも、被災状況や地域診断のデータから根拠をもって見積もることが求められます。
覚えるポイント
- 自治体予算の流れは、所管課の要求 → 財政担当課・首長の査定 → 首長が調製して議会へ提出 → 議会の議決で成立 → 執行 → 決算(監査委員の審査・議会の認定)です。
- 会計年度は4月1日〜翌年3月31日で、各年度の歳出はその年度の歳入で賄います(会計年度独立の原則)。
- 複数年度にまたがる支出は、継続費・債務負担行為などの法定の例外手続に限られます。長期にわたる事業でも、予算は毎年度要求するのが基本です。
- 予算要求の前に、事業計画(目的・対象・方法・評価指標)を固めて積算根拠を示します。順序は「計画→予算」です。
- 過大計上は認められません。年度途中の不足は、補正予算や予備費で対処します。
- 保健師は、地域診断と事業評価のデータを根拠に事業の必要性と効果を説明し、予算化(事業化・施策化)につなげます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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