第109回
109PM045|第109回 保健師国家試験 過去問
次の文を読み45~47の問いに答えよ。人口約3,300人のA町にあるB地区は人口約200人で商店や飲食店が連なっている地域である。B地区は高齢化率50%で、独居高齢者世帯も多い。早朝、B地区で大規模火災が発生し、死者が1名、重傷者が2名出ている。A町は発災後すぐに災害対策本部を設置した。現在も延焼が続いている。このときのA町の保健師の対応で適切なのはどれか。
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正解3
正答
3.避難行動要支援者の個別確認
この問題のポイント
大規模火災が起きた直後で、しかも延焼が続いている時期に、町の保健師が最初に何をすべきかを問う問題です。手がかりは「高齢化率50%」「独居高齢者世帯が多い」「早朝」「現在も延焼が続いている」「災害対策本部を設置した直後」です。災害時の保健活動は時期(フェーズ)によって優先することが変わります。この問題では、発災直後はまず自力で避難できない人の安否を確かめる、という考え方と、避難行動要支援者の制度が判断の鍵になります。
解説
事例の整理
- A町は人口約3,300人の小規模な町です。B地区は人口約200人で、高齢化率50%なので高齢者は約100人と見込まれます。独居高齢者世帯も多い地区です。
- 火災は早朝に起きています。就寝中の人や、火災に気づくのが遅れた人がいる可能性があります。
- すでに死者1名、重傷者2名が出ており、延焼は今も続いています。
- 町は災害対策本部を設置したばかりで、被害の全体像はまだ分かっていません。
この時点で最も差し迫った課題は、「逃げ遅れている人はいないか」「どこへ避難したのか分からない人はいないか」です。なお、災害対策基本法でいう「災害」には、地震や豪雨などの自然現象だけでなく、大規模な火事や爆発も含まれます。町が災害対策本部を設置して組織として対応しているのはそのためです。
災害時の保健活動はフェーズで優先順位が変わる
保健師の災害時の活動は、発災からの時期によって重点が移っていきます。
- 発災直後の初動期(フェーズ0):情報収集、活動体制づくり、住民の安否確認、救護所や避難所の立ち上げ支援
- 緊急対策期:生命と健康を守るための対応
- 応急対策期:避難所での生活の安定と健康管理、その後は仮設住宅への移行期の支援
- 復旧・復興期:仮設住宅や新しい住まいでの生活支援、コミュニティの再建
本問は延焼が続いている発災当日なので、初動期にあたります。この時期にまず考えるのは「今まさに生命が危険にさらされている人はいないか」です。
避難行動要支援者と名簿の制度
災害対策基本法では、高齢者、障害者、乳幼児など、災害時に特に配慮を要する人を要配慮者と定めています。そのうち、自ら避難することが困難で、円滑かつ迅速に避難するために特に支援を要する人が避難行動要支援者です。
- 2013年(平成25年)の法改正で、市町村長に避難行動要支援者名簿の作成が義務づけられました。
- 平常時は、本人の同意を得たうえで、消防、警察、民生委員、自主防災組織などの避難支援等関係者に名簿情報を提供します。
- 災害が発生し、生命や身体を守るために特に必要があるときは、本人の同意がなくても、避難支援に必要な範囲で名簿情報を提供できます。
- 2021年(令和3年)の改正で、一人ひとりの避難方法などを定める個別避難計画の作成が市町村の努力義務になりました。
正答に至る判断
独居高齢者が多いB地区では、次のような人がいる可能性があります。
- 自力では逃げられない人
- 火災に気づいていない人
- 避難はできたものの、常用薬や在宅酸素などの医療機器を持ち出せなかった人
保健師は、名簿や日頃の保健活動で把握している情報をもとに、消防・警察・民生委員・自治会などと連携し、一人ひとりの所在と安否を確かめます。そのうえで、救出や医療・介護につなぐ必要のある人を早く見つけ出します。
このとき、保健師自身が延焼区域に立ち入ることはしません。避難所の受付名簿との照合、家族や関係者への確認などを組み合わせ、支援者の安全を確保しながら進めます。限られた人員で、最も危険の大きい人から確かめていくことが初動期の基本です。
選択肢の確認
1.全戸訪問による健康調査:地区の全世帯を訪ねて健康状態や生活上の課題を把握する活動は、火災が鎮火して安全が確認され、被害の全体像が見えてきてから行うものです。その目的は、自宅で過ごす被災者の慢性疾患の悪化や心身の不調を早く見つけることです。延焼中は区域への立ち入り自体が危険です。また、住民全体を一律に対象とするため、最も危険の大きい人から先に確かめるという初動期の優先順位にも合いません。
2.仮設住宅への移行計画の作成:住まいを失った世帯の数や再建の見通しは、鎮火後の被害調査を経て初めて分かります。そのため、延焼が続く今の段階で取り組む業務ではありません。仮設住宅への移行は、避難所生活がしばらく続いた後の応急対策期後半から復旧期にかけての課題です。保健師はその時期に、転居に伴う孤立の防止や健康管理といった視点で関わります。
3.避難行動要支援者の個別確認:正答。高齢化率50%で独居高齢者が多い地区で、早朝の火災の延焼が続いている以上、自力で避難できない人の所在と安否を一人ずつ確かめることが最優先です。災害対策基本法に基づく名簿を活用し、消防・民生委員などの関係者と連携して、救出や医療・介護の継続が必要な人を早く把握します。
4.広域災害・救急医療情報システム〈EMIS〉の医療情報管理:EMISは、災害時に医療機関の被災状況、患者の受入れの可否、DMATの活動状況などを共有するための厚生労働省のシステムです。主に医療機関、都道府県、保健所、DMATが入力・活用し、広域の災害で医療機関の間の調整を行うときに役立ちます。本問の重傷者の救急搬送は消防と医療機関が担っています。延焼中の町の保健師が最優先で担う役割は、医療情報の管理ではなく住民の安否確認です。
覚えるポイント
- 災害時の保健活動はフェーズで優先順位が変わります。初動期は安否確認・情報収集・体制づくり、応急対策期は避難所での健康管理、その後は仮設住宅での生活支援、復興期はコミュニティ再建です。
- 要配慮者は、高齢者・障害者・乳幼児など特に配慮を要する人です。避難行動要支援者は、そのうち自ら避難することが困難で特に支援を要する人を指します。
- 避難行動要支援者名簿は災害対策基本法に基づき市町村長が作成します(2013年改正で義務化)。災害時は、生命・身体を守るために特に必要なら、本人の同意がなくても関係者に提供できます。個別避難計画は2021年改正で市町村の努力義務になりました。
- EMISは医療機関の被災・受入情報を共有するシステムで、医療機関・都道府県・保健所・DMATが中心に用います。
- 災害対策基本法の「災害」には大規模な火事や爆発も含まれます。
- 状況設定問題では、「延焼中」「発災直後」など時期を示す言葉から、今できること・今すべきことを絞り込みます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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