第108回

108PM016|第108回 保健師国家試験 過去問

中核市であるA市内で発生した大規模水害から48時間が経過した。A市の本庁の統括的な役割を担う保健師が、その役割として実施するのはどれか。

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正解4

正答

4.従事可能な保健師の人員配置の調整

この問題のポイント

災害時に本庁で統括的な役割を担う保健師(統括保健師)が、どのような立場で何をするのかを問う問題です。「本庁」「統括的な役割」という言葉が手がかりです。現場で住民に直接かかわる活動ではなく、組織全体を見渡して方針を決め、人員を配分する業務を選びます。「発災48時間」が、応援の受け入れも含めて人員体制を固める時期であることも判断材料になります。

解説

統括的な役割を担う保健師とは

「地域における保健師の保健活動に関する指針」(2013年、厚生労働省健康局長通知)は、統括的な役割を担う保健師を保健衛生部門等に明確に位置づけるよう求めています。この保健師は、保健活動を組織横断的に総合調整・推進し、技術的・専門的な面から指導・調整を行い、人材育成を進める役割を担います。平時から、各部署に分散して配置された保健師を束ねる立場にあるため、災害時には保健活動全体の司令塔になります。

災害時に統括保健師が担うこと

災害時の保健活動は、次のような「指揮・調整」が土台にあって初めて機能します。被害の全体像をつかみ、必要な活動量を見積もり、それに見合う人員を配置する、という流れです。統括保健師の主な役割は次のとおりです。

  • 被害状況、避難所の数と避難者数、要配慮者の状況などの情報を集めて分析する
  • 保健活動の方針と優先順位を決め、災害対策本部や関係部署、保健医療の調整本部などと調整する
  • 従事可能な保健師を把握し、避難所や地区への配置と交替・休息のローテーションを組む
  • 不足する人員を見積もって応援派遣を要請し、到着した応援保健師や支援チームの受け入れ(受援)と配置を調整する
  • 自らも被災者である職員の心身の健康管理に配慮する

中核市は保健所を設置する市です。そのためA市は、市町村としての保健活動と、保健所としての健康危機管理の両方を自ら担います。本庁の統括保健師には、市全体の保健活動を組み立てる責任が集中します。

発災48時間という時期

災害時の保健活動は、時期をフェーズに分けて考えます。

  • フェーズ0(概ね24時間以内):初動体制の確立
  • フェーズ1(概ね72時間以内):生命・安全の確保を目的とする緊急対策期

48時間はフェーズ1にあたります。この時期は避難所の運営が本格化し、避難所と在宅の要配慮者の把握、医療が必要な人の把握などを同時に進めなければなりません。その一方で、職員自身も被災しており、休みなく働き続けています。限られた人員を必要な場所へ振り分け、交替体制と応援受け入れの枠組みを作ることが、その後の活動全体の質を左右します。

正答に至る判断

統括保健師が自ら避難所で健康相談や啓発にあたれば、その間は全体の調整が止まってしまいます。統括する立場の人は、現場の業務を他の保健師や応援職員に任せ、自分は調整に専念することが求められます。したがって、統括的な役割として実施するのは人員配置の調整であり、選択肢4が正答です。

実践の場では、応援保健師が到着しても、受け入れ側で配置先や依頼する業務が決まっておらず、力を十分に生かせないという受援体制の課題が指摘されてきました。平時から受援計画を作り、統括保健師を中心とした指揮系統を決めておくことが重要とされるのはこのためです。

選択肢の確認

1.被災住民の健康管理:被災住民の健康状態を把握し、必要な医療や支援につなぐ活動は、避難所や地区に配置された保健師や応援保健師が直接担う業務です。統括保健師の仕事は、その方針(例:全戸訪問を行うか、どの要配慮者を優先するか)を決めて体制を整えることで、自ら実施者になることではありません。「健康管理は保健師の中心業務」という連想で選びやすい選択肢ですが、設問は「統括的な役割として」の業務を問うている点に注意します。

2.避難所での感染症予防啓発:避難所は集団生活で感染が広がりやすく、水害では浸水による衛生環境の悪化も加わるため、手指衛生などの啓発は重要な活動です。ただし、実施するのは避難所を担当する保健師や支援チームです。統括保健師は感染症の発生状況の情報を集め、対策の方針や必要な物資・人員の手配を調整する側にあります。

3.健康相談に使用する血圧計の点検:物品の確認・点検は活動を支える準備として必要ですが、統括者の専門的判断を必要としない作業です。平時の備品管理として済ませておくか、現場の担当者や事務職員に任せられます。統括保健師がこうした作業を抱え込むと、全体の調整が滞ります。

4.従事可能な保健師の人員配置の調整:正答。誰がどこで活動できるかを把握し、避難所・地区への配置、交替と休息のローテーション、応援職員の受け入れ先を決めることは、組織全体を見渡せる統括保健師にしかできない中心的な役割です。発災48時間は活動量が急増し、職員の疲労も重なる時期であり、この調整の重要性が特に高まります。

覚えるポイント

  • 統括保健師の平時の役割:保健活動の組織横断的な総合調整・推進、技術的・専門的な指導・調整、人材育成の推進(2013年の保健活動指針で位置づけ)。
  • 災害時の統括保健師の役割:情報集約・分析 → 活動方針の決定 → 人員配置とローテーション → 応援要請と受援調整 → 職員の健康管理。住民への直接ケアは現場の保健師に任せます。
  • 災害フェーズの目安
    • フェーズ0:概ね24時間以内、初動体制の確立
    • フェーズ1:概ね72時間以内、生命・安全の確保
    • フェーズ2:避難所対策が中心
    • フェーズ3:避難所から仮設住宅入居まで
    • フェーズ4:復旧・復興期
  • 中核市・政令指定都市・特別区は保健所を設置するため、市(区)自らが保健所機能と健康危機管理を担います。
  • DHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)は、被災した都道府県等の調整本部や保健所の指揮調整機能を支援するチームです。調整本部は出題当時「保健医療調整本部」と呼ばれ、2022年の見直しで「保健医療福祉調整本部」となりました。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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