第108回
108PM015|第108回 保健師国家試験 過去問
平成24年(2012年)施行の新型インフルエンザ等対策特別措置法で規定されたのはどれか。
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正解1
正答
1.緊急事態宣言の発令
この問題のポイント
感染症対策の二つの法律、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)と感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の役割分担を問う問題です。感染症法は、平時から続ける発生の監視、医療提供体制、患者個人への措置を定めています。特措法は、全国的な大流行が起きたときに社会全体に及ぶ措置を定めています。選択肢の内容が「社会全体を対象とした緊急時の措置かどうか」を見れば判別できます。
解説
特措法の成り立ちと目的
特措法は、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的流行の経験を受けて整備されました。2012年(平成24年)に成立・公布され、2013年(平成25年)4月に施行されています。制定年は2012年と押さえておけば十分です。
想定しているのは、病原性の高い新型インフルエンザや、全国的かつ急速にまん延するおそれのある新感染症などです。目的は、国民の生命と健康を守り、国民生活と国民経済への影響を最小にすることです。個々の患者への医療だけでなく、社会機能の維持を視野に入れている点が感染症法との大きな違いです。
特措法の主な内容
- 行動計画:政府、都道府県、市町村がそれぞれ作成します。指定公共機関(医療、電気・ガス、運輸など)は業務計画を作成します。
- 対策本部:政府対策本部(本部長は内閣総理大臣)と都道府県対策本部を設置します。緊急事態宣言が出ると市町村対策本部も設置します。
- 予防接種:医療従事者や社会機能の維持に関わる人への特定接種と、住民に対する予防接種を定めています。
- 新型インフルエンザ等緊急事態宣言:全国的かつ急速なまん延により、国民生活と国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合に、政府対策本部長が期間と区域を定めて宣言します。
- 緊急事態措置:宣言が出た区域では、都道府県知事が次の措置をとれるようになります。
- 住民への外出自粛の要請
- 学校・社会福祉施設・興行場などの使用制限の要請や指示
- 臨時の医療施設の開設
- 医薬品など特定物資の売渡しの要請
- 埋葬・火葬の特例
2020年4月には、新型コロナウイルス感染症に対して初めて緊急事態宣言が出されました。2021年の改正では、宣言の前段階で対象地域を絞って対策をとるまん延防止等重点措置が新設されています。出題当時は、これらの措置が新型コロナ対応で繰り返し使われていました。
感染症法の役割
感染症法は1998年に成立し、1999年に施行されました。主な内容は次のとおりです。
- 厚生労働大臣が定める基本指針と、都道府県が定める予防計画
- 感染症の類型
- 医師の届出と感染症発生動向調査
- 積極的疫学調査
- 就業制限、入院勧告
- 感染症指定医療機関の指定
保健所はこの法律に基づいて、届出の受理、疫学調査、入院調整などを担います。保健所保健師の日常業務の根拠となる法律です。一方、特措法に基づく市町村行動計画の作成や住民接種の体制づくりには、市町村保健師が関わります。
正答の判断
選択肢2〜4は、いずれも感染症法に規定された平時からの仕組みです。特措法に固有の規定は、選択肢1の緊急事態宣言だけです。
外出自粛にも注意が必要です。感染症法にも、新型インフルエンザ等感染症にかかっていると疑われる人に外出自粛を求める規定があります。ただし、これは特定の個人が対象です。住民全体に外出自粛を求めるのは、特措法の緊急事態措置です。
なお、その後の制度の変化は次のとおりです。
- 2023年5月に新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行し、特措法の対象から外れました。
- 2023年9月には内閣感染症危機管理統括庁が設置され、体制が強化されています。
選択肢の確認
1.緊急事態宣言の発令:正答。新型インフルエンザ等緊急事態宣言は、特措法に基づき政府対策本部長である内閣総理大臣が出すものです。宣言の区域では、都道府県知事が外出自粛や施設の使用制限の要請などの緊急事態措置をとります。感染症法には、このような社会全体を対象にした宣言の仕組みはありません。宣言前の段階で使うまん延防止等重点措置も、特措法の規定です。
2.感染症発生動向調査の実施:感染症法に基づく平時からのサーベイランスで、特措法の規定ではありません。医師による全数把握の届出と、指定届出機関による定点把握の報告を、保健所・都道府県・国が収集・分析し、結果を公表・還元します。流行の早期発見に役立ちますが、緊急時に限った措置ではありません。流行が起きたときに感染源や接触者を調べる積極的疫学調査も、同じく感染症法の規定です。
3.特定感染症指定医療機関の指定:感染症法に基づき厚生労働大臣が指定する医療機関で、特措法の規定ではありません。新感染症の所見がある人、一類・二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当します。第一種・第二種感染症指定医療機関は、都道府県知事が指定します。特措法にも医療に関する規定はありますが、それは緊急事態措置としての臨時の医療施設の開設であり、指定医療機関とは別の仕組みです。
4.都道府県による予防計画の策定:予防計画は、感染症法に基づき、厚生労働大臣の基本指針に沿って都道府県が定める計画です。特措法で都道府県が作るのは「都道府県行動計画」であり、名称の取り違えを狙った選択肢です。出題当時、予防計画を作るのは都道府県でした。2022年の感染症法改正により、2024年度からは保健所設置市と特別区も作ることになっています。
覚えるポイント
- 特措法の柱は、行動計画(政府・都道府県・市町村)、政府対策本部、特定接種・住民接種、緊急事態宣言と緊急事態措置、まん延防止等重点措置(2021年新設)です。
- 感染症法の柱は、基本指針(厚生労働大臣)と予防計画(都道府県)、届出と感染症発生動向調査、積極的疫学調査、入院勧告・就業制限、感染症指定医療機関です。
- 計画の名前で見分けます。「行動計画」なら特措法、「予防計画」なら感染症法です。
- 指定医療機関の指定者は、特定感染症指定医療機関が厚生労働大臣、第一種・第二種感染症指定医療機関が都道府県知事です。
- 外出自粛の要請は、住民全体が対象なら特措法、感染が疑われる個人が対象なら感染症法です。
- 制定年は、特措法が2012年成立(2013年施行)、感染症法が1998年成立(1999年施行)です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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