第108回

108PM014|第108回 保健師国家試験 過去問

A市(人口15万人)の新任期の保健師を対象とした現任教育で適切なのはどれか。

解答・解説を見る

正解4

正答

4.A市を管轄する保健所と連携して研修を実施する。

この問題のポイント

市町村で働く新任期保健師の現任教育を、どのような方法と体制で進めるかを問う問題です。「人口15万人」という条件から、A市は自ら保健所を設置しておらず、都道府県の保健所が管轄していると読み取れます。押さえるべきことは3つです。新任期はOJTを中心に実践能力を育てること、人材育成計画は組織として管理的立場の保健師が立てること、都道府県保健所が市町村職員の研修を支援する役割をもつことです。

解説

問題文の手がかり

  • 人口15万人の市:地域保健法により保健所を設置するのは、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区です。出題当時、中核市の人口要件は20万以上でした。人口15万人のA市は一般的な市にあたり、管内は都道府県保健所が所管していると考えます。選択肢4の「A市を管轄する保健所」は、この都道府県保健所を指しています。
  • 新任期:採用後まもない時期で、保健師として基本的な活動を自立して行えるようになる段階です。
  • 現任教育:就職後に職場で行う教育です。方法はOJT(職場内教育)、OFF-JT(職場外研修)、自己啓発の3つに分けて整理します。

新任期の現任教育の考え方

保健師助産師看護師法は、免許取得後も研修を受けて資質の向上を図るよう努めることを定めています。厚生労働省の新人看護職員研修ガイドライン(保健師編)も、新人保健師の研修の考え方を示しています。

新任期の中心はOJTです。先輩保健師の家庭訪問に同行する、担当事例の支援方針を一緒に検討する、記録や報告を指導してもらう、といった実際の業務を通じて学びます。基礎教育で学んだ知識を、目の前の住民・家族・地域に当てはめて判断できる力(実践能力)を育てることが目的です。OFF-JTは、体系的な整理や他自治体の新任者との交流に役立ちますが、OJTを補う位置づけです。

人材育成の体制と役割分担

  • 組織としての人材育成計画:保健師の配置や将来像、キャリアの段階を見通して立てるものです。管理的立場の保健師が中心になります。2013年の「地域における保健師の保健活動に関する指針」では、統括的な役割を担う保健師(統括保健師)の配置が示され、その役割の一つに人材育成の推進が挙げられています。2016年の「保健師に係る研修のあり方等に関する検討会」最終とりまとめでは、自治体保健師の標準的なキャリアラダーが示されました。
  • 実地指導者:計画に沿って、日々の業務の中で新任者を直接指導し、到達状況を確認します。
  • 都道府県保健所:地域保健法は、都道府県の設置する保健所が、市町村の求めに応じて技術的助言、市町村職員の研修その他必要な援助を行うことができると定めています。

中規模以下の市町村では、採用される新任者が毎年少ないことが多く、単独で体系的な研修を組むことや講師を確保することが難しくなります。そこで保健所が管内市町村の合同研修を企画したり、市の研修に参画したりします。

正答に至る判断

新任期の教育はOJTが軸です。計画は組織として管理者層が立てます。市単独では不足する部分を保健所が広域的・専門的な立場から支援します。この枠組みに合うのは選択肢4です。

保健所との連携には次のような利点があり、健康危機発生時の連携の土台にもなります。

  • 感染症、精神保健、難病など保健所業務の視点に触れられる
  • 近隣市町村の保健師と学び合える
  • 保健所保健師と日頃から顔の見える関係をつくれる

選択肢の確認

1.職場外研修(OFF-JT)を中心に行う。:新任期の現任教育の中心は、実際の業務を通じて先輩保健師が指導するOJTです。OFF-JTは知識の体系的な整理や他自治体の新任者との交流に役立ちますが、OJTを補う位置づけです。担当地区の住民や家族を支援しながら判断力を養うことは、職場外研修だけでは難しくなります。「OJTを中心にOFF-JTを組み合わせる」と正しく覚え、主従を逆にしないよう注意します。

2.基礎的な知識を獲得することに重点を置く。:基礎的な知識は、主に保健師養成課程の基礎教育で身につけるものです。新任期の重点は、その知識を実際の支援に結びつける実践能力の獲得です。具体的には、個人・家族のアセスメント、家庭訪問や健康相談の技術、記録、関係機関との連携などです。知識の学習が不要という意味ではありません。「知識の獲得」ではなく「実践能力の獲得」が重点だと区別します。

3.職場の実地指導者が人材育成計画を立てる。:人材育成計画は、組織全体の保健師の配置や育成の方向性を踏まえて立てるもので、管理的立場の保健師や統括保健師が中心となって組織として作成します。実地指導者の役割は、その計画に沿って日々の業務の中で新任者を直接指導し、到達状況を確認することです。新任者の日々の目標を一緒に確認することはあっても、組織の育成計画を立てる立場ではありません。「計画は管理者層、日常の指導は実地指導者」と役割を分けて覚えます。

4.A市を管轄する保健所と連携して研修を実施する。:正答。人口15万人のA市は保健所を設置しておらず、都道府県保健所が管轄しています。地域保健法は、都道府県の設置する保健所が市町村の求めに応じて、技術的助言や市町村職員の研修などの援助を行えると定めています。市単独では体系的な研修や講師の確保が難しい場合に、保健所と連携すれば研修の質を高められます。管内市町村との交流や、保健所との協力関係づくりにもつながります。

覚えるポイント

  • 現任教育の方法はOJT・OFF-JT・自己啓発の3つで、新任期はOJT中心にOFF-JTを組み合わせます。
  • 新任期の重点は知識の獲得ではなく、基礎教育の知識を実際の支援に生かす実践能力の獲得です。
  • 人材育成計画は管理的立場の保健師(統括保健師など)が組織として立て、実地指導者は計画に沿って日常の指導と評価を担います。
  • 都道府県保健所は、市町村の求めに応じて技術的助言・市町村職員の研修その他必要な援助を行えます(地域保健法)。
  • 保健所の設置主体は、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区です。出題当時の中核市の人口要件は20万以上なので、それ未満の一般市は通常、都道府県保健所の管轄です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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