第108回

108PM013|第108回 保健師国家試験 過去問

自治体で働く保健師の活動に関して守秘義務規定がある法律はどれか。

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正解4

正答

4.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉

この問題のポイント

保健師の守秘義務が、どの法律に、どの範囲で定められているかを問う問題です。手がかりは「自治体で働く保健師の活動」という条件です。公式正答は感染症法です。第74条が、感染症の患者であるという秘密を業務上知り得た者の秘密漏示を処罰することを押さえます。ただし、医療法や難病法にも特定の事務に関する秘密保持規定があり、「他の選択肢の法律には守秘義務規定が一切ない」とは覚えないことが大切です。刑法の秘密漏示罪の対象に保健師が含まれないことも、あわせて押さえておきたい知識です。

解説

保健師の守秘義務は複数の法律に定められている

保健師の守秘義務の根拠は1つの法律だけではありません。資格、身分、業務のそれぞれに応じて、複数の法律が重なって定めています。

  • 保健師助産師看護師法(資格としての義務):保健師・看護師・准看護師は、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定められています(第42条の2)。資格を失った後も同じ義務を負い、違反には罰則があります。
  • 地方公務員法(身分としての義務):自治体の職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならず、退職後も同様です(第34条)。
  • 個別の法律(業務ごとの義務):特定の業務について、秘密の保持と罰則を定めた法律があります。感染症法がその代表例です。

感染症法が守秘義務を定めている理由

感染症法の前文には、ハンセン病や後天性免疫不全症候群(エイズ)などの患者に対して、いわれのない差別や偏見があった事実を重く受け止め、教訓とするという趣旨が書かれています。感染症にかかっていること自体が、差別や社会的不利益につながりやすい情報だからです。そのため感染症法は、感染症の患者であることなどの秘密を業務上知った者が、正当な理由なく漏らすことを禁じ、罰則を設けています。

保健所の保健師は、次のように患者の秘密に深く関わります。

  • 医師からの発生届を受けたあとの患者への連絡
  • 積極的疫学調査(行動歴や接触者の聞き取り)
  • 接触者健康診断
  • 結核患者への家庭訪問や服薬支援(DOTS)
  • 入院勧告や就業制限についての説明

したがって、感染症法の守秘義務規定は、自治体保健師の活動に直接適用されます。

刑法の秘密漏示罪との関係

刑法の秘密漏示罪は、罪に問われる人の職業が限られた身分犯です。対象は医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人、宗教の職にある者などで、保健師と看護師は含まれていません。保健師と看護師の守秘義務は、保健師助産師看護師法で定められています。

「正当な理由」と実践での注意

守秘義務は絶対的なものではなく、「正当な理由」があれば秘密を伝えても違反にはなりません。代表的なのは、法令に基づく届出や通告と、本人の同意がある場合です。たとえば児童虐待防止法は、守秘義務に関する法律の規定が虐待の通告義務を妨げるものと解釈してはならない、と明記しています。

実践では、関係機関と情報を共有するときに次の点を心がけます。

  • 本人の同意を得ること
  • 伝える情報を必要最小限にすること
  • 記録を適切に管理すること

なお、自治体が持つ個人情報の取扱いは、出題当時は各自治体の個人情報保護条例で定められていました。2023年4月からは、個人情報保護法の共通ルールが自治体にも適用されています。

選択肢の確認

1.刑法:この法律の秘密漏示罪は、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人、宗教・祈祷・祭祀の職にある者などに対象を限った身分犯で、保健師は含まれていません。助産師は含まれるため、助産師国家試験では正答になり得る点に注意が必要です。保健師の守秘義務は、保健師助産師看護師法と地方公務員法で担保されています。

2.医療法:この法律は、病院・診療所・助産所の開設や管理、医療計画、医療安全の確保など、医療提供体制の枠組みを定める法律です。保健師一般の職業上の守秘義務を定める法律ではなく、本問の公式正答には含まれません。ただし、第86条には診療録・助産録の提出や検査の事務に従事した公務員等の秘密漏示を処罰する規定があります。「医療法に秘密保持の規定はない」という意味ではありません。資格としての保健師の守秘義務は保健師助産師看護師法第42条の2で確認します。

3.難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉:この法律は、指定難病の医療費助成(特定医療費)、難病相談支援センターなどの療養生活環境整備事業、難病対策地域協議会などを定める法律です。保健所の保健師は、難病患者への訪問相談や地域の支援体制づくりに関わります。本問の公式正答には含まれませんが、第32条第3項は難病対策地域協議会の事務に従事する者・従事していた者の秘密保持を定めています。保健師も、その事務に従事する場合にはこの規定の対象になります。したがって、難病法に守秘義務規定がないと説明するのは不正確です。保健師の資格や公務員の身分に基づく義務に加え、担当する事務に適用される規定も確認します。

4.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉:正答。感染症の患者であることなど、業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らすことを禁じ、罰則を設けています。発生届の受理後の対応、積極的疫学調査、接触者健診、結核患者の支援など、保健所保健師の中心的な業務に直接適用される規定です。

覚えるポイント

  • 保健師の守秘義務は重層的に定められています。資格としては保健師助産師看護師法、身分としては地方公務員法、業務としては感染症法などの個別法です。いずれも退職後や資格を失った後も続きます。
  • 刑法の秘密漏示罪の対象は、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人、宗教職です。保健師・看護師は含まれないため、保健師助産師看護師法で守秘義務が定められています。
  • 感染症法は、前文で患者への差別・偏見の歴史を踏まえ、人権の尊重をうたっています。そのため、感染症の患者であるという秘密の漏示には罰則があります。
  • 守秘義務の例外は「正当な理由」がある場合です。法令に基づく届出や通告(感染症の届出、児童虐待の通告など)と、本人の同意が代表例です。
  • 医療法第86条には診療録等の検査事務に従事した公務員等、難病法第32条第3項には難病対策地域協議会の事務従事者の秘密保持規定があります。本問の公式正答は感染症法ですが、他の法律の規定まで否定しないようにします。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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