第108回

108PM012|第108回 保健師国家試験 過去問

労働安全衛生法に実施が規定されているのはどれか。

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正解4

正答

4.心理的な負担の程度を把握するための検査

この問題のポイント

職場や地域で行われる健診・検査が、どの法律に基づくのかを区別できるかを問う問題です。選択肢4は、ストレスチェック制度を定める労働安全衛生法の条文の名称そのものです。見分ける鍵は二つあります。一つは、法律の条文に実施が定められているものと、通達・ガイドライン(行政指導)に基づくものを分けることです。もう一つは、労働者の健診でも労働安全衛生法以外の法律(じん肺法)に基づくものがあると知っていることです。

解説

問題文の手がかり

問われているのは「労働安全衛生法に実施が規定されている」ものです。単に職場で行われているかどうかではありません。条文で事業者などに実施を義務づけているかどうかで判断します。4つの選択肢は、根拠が次のように分かれます。

  • 労働安全衛生法:心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)
  • 別の法律:じん肺健康診断(じん肺法)、特定健康診査(高齢者の医療の確保に関する法律)
  • 行政指導:情報機器作業の健康診断(厚生労働省のガイドライン)

労働安全衛生法に基づく健康管理

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境をつくることを目的とする法律です。事業者に次のような健康管理を義務づけています。

  • 一般健康診断:雇入時健康診断、定期健康診断(年1回)、深夜業などの特定業務従事者の健康診断(6か月以内ごとに1回)、海外派遣労働者の健康診断など
  • 特殊健康診断:有機溶剤、鉛、電離放射線、特定化学物質、石綿、高気圧業務など、政令で定める有害業務の従事者が対象
  • 長時間労働者への医師による面接指導
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)

ストレスチェック制度

2014年の労働安全衛生法改正で創設され、2015年12月に施行されました。目的は、メンタルヘルス不調の一次予防です。労働者が自分のストレスの状態に気づき、職場環境の改善につなげることをねらいとしています。うつ病などを見つけ出すスクリーニングを主目的とした制度ではない点が、よく問われます。

  • 対象:常時50人以上の労働者を使用する事業場は、年1回以上の実施が義務です。出題当時、50人未満の事業場は当分の間努力義務とされていました。その後、2025年の法改正で50人未満の事業場にも実施を義務づけることが決まっています(施行は公布から3年以内)。
  • 実施者:医師、保健師、または所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。保健師は研修なしで実施者になれます。
  • 内容:「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を調べます。職業性ストレス簡易調査票(57項目)が推奨されています。
  • 結果の扱い:結果は実施者から本人に直接通知されます。本人の同意なしに事業者へ提供することはできません。
  • 面接指導:高ストレスで面接指導が必要と判断された者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を行います。その後、医師の意見を聴いて就業上の措置を検討します。申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
  • 集団分析:部署ごとの集計・分析と職場環境の改善は努力義務です。

産業保健の場面では、保健師が実施者として制度を運営し、高ストレス者を面接指導につなげ、集団分析の結果を職場環境改善に生かす役割を担います。個人の結果の守秘と、組織への働きかけを両立させることが実践上のポイントです。

他の選択肢の根拠法

じん肺健康診断は、粉じん作業による健康障害を防ぐためのじん肺法に基づきます。労働安全衛生法と連携して運用されますが、別の法律です。特定健康診査は、医療費適正化の枠組みの中で高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて医療保険者が行う健診です。情報機器作業の健康診断は、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年、厚生労働省)に基づく行政指導です。腰痛や騒音に関する健診と同じく、指導勧奨による健康診断と呼ばれます。

選択肢の確認

1.特定健康診査:根拠は高齢者の医療の確保に関する法律で、実施主体は事業者ではなく医療保険者です。対象は40〜74歳の加入者で、メタボリックシンドロームに着目した健診です。取り違えやすいのは、労働安全衛生法の定期健康診断との関係です。事業者が行った定期健康診断の結果を保険者が受け取ると、その範囲で特定健康診査を実施したものとみなされます。そのため両者が同じ健診のように見えますが、根拠法は別です。

2.じん肺健康診断:粉じん作業の従事者を対象とする健診で、根拠はじん肺法です。就業時・定期・定期外・離職時に行い、胸部エックス線写真などの結果をもとに、都道府県労働局長がじん肺管理区分(管理1〜4)を決定します。労働者の健診で事業者に実施義務がある点は労働安全衛生法の特殊健康診断と似ています。しかし、法律の名称まで問われたらじん肺法と答えます。

3.情報機器作業配置前健康診断:これは厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく健診です。法律の条文で実施が義務づけられたものではありません。このガイドラインは、以前のVDT作業ガイドラインを改めたもので、配置前と定期の健康診断を示しています。職場で広く行われているため法定健診と誤解しやすいのですが、行政指導による健診に分類されます。

4.心理的な負担の程度を把握するための検査:正答。労働安全衛生法に定められたストレスチェック制度の条文上の名称です。常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回以上の実施が義務づけられています。医師・保健師などが実施し、結果は本人に直接通知されます。

覚えるポイント

  • 労働安全衛生法:一般健康診断、特殊健康診断(有機溶剤・鉛・電離放射線・特定化学物質・石綿など)、長時間労働者の面接指導、ストレスチェック
  • じん肺健康診断はじん肺法、特定健康診査・特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律で、実施主体は医療保険者
  • 情報機器作業・腰痛・騒音の健診は、法律ではなくガイドライン(行政指導)に基づく指導勧奨による健康診断
  • ストレスチェックの目的は一次予防です。常時50人以上の事業場で年1回以上が義務(出題当時、50人未満は努力義務)で、結果は本人の同意なく事業者に提供できません
  • ストレスチェックの実施者は医師・保健師のほか、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。高ストレス者の申出があれば、事業者は医師の面接指導を行います

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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