第109回
109PM012|第109回 保健師国家試験 過去問
放射線業務に従事する職員の安全衛生管理で適切なのはどれか。
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正解2
正答
2.確率的影響と確定的影響への対策が必要である。
この問題のポイント
放射線業務従事者の安全衛生管理について、放射線の人体影響の分類と、電離放射線障害防止規則(電離則)の具体的な規定を問う問題です。確定的影響と確率的影響は「しきい値があるかどうか」で区別され、防護の考え方がそれぞれ違うため、両方への対策が必要です。あわせて、特殊健康診断の頻度(6か月以内ごと)、記録の保存期間(30年)、作業室での飲食禁止を正確に覚えているかが判断の鍵になります。
解説
放射線の人体影響は2つに分けられる
- 確定的影響は、しきい線量があり、それを超えて被ばくすると現れる影響です。線量が増えるほど重症度も増します。皮膚の紅斑・潰瘍、脱毛、白内障、不妊、造血機能の低下(白血球減少など)、急性放射線症候群、胎児の奇形などが該当します。ICRP(国際放射線防護委員会)の2007年勧告では「組織反応」とも呼ばれます。
- 確率的影響は、しきい値がないと仮定される影響です。線量が増えるほど発生する確率が高くなりますが、発生したときの重さは線量に左右されません。がん(白血病を含む)と遺伝的影響が該当します。
白血球減少は確定的影響、白血病は確率的影響です。名前が似ているので、取り違えないように注意します。
分類ごとに防護の目標が異なる
確定的影響は、被ばくをしきい線量より低く抑えれば防げます。そのため、「発生させない」ことが目標です。眼の水晶体や皮膚には等価線量限度が設けられています。
確率的影響は、しきい値がないため、リスクをゼロにはできません。そこで、実効線量限度を守ったうえで、被ばくを合理的に達成できる限り低く保つこと(ALARAの考え方、最適化)によって、発生確率を下げることが目標になります。
具体的な対策は次のとおりです。
- 外部被ばく:時間を短く、距離をとる、遮蔽するという3原則を守ります。
- 内部被ばく:放射性物質を体内に取り込まないようにします。飲食・喫煙の禁止、保護具の着用、退出時の汚染検査がこれにあたります。
電離則に基づく健康管理
電離放射線健康診断は、次のときに実施します。
- 雇入れ時
- 当該業務への配置替えの際
- その後6か月以内ごとに1回
項目は次のとおりです。
- 被ばく歴の有無の調査とその評価
- 白血球数と白血球百分率
- 赤血球数と、血色素量またはヘマトクリット値
- 白内障に関する眼の検査
- 皮膚の検査
これらは、確定的影響が現れやすい造血器・水晶体・皮膚を確認する項目です。一方、確率的影響であるがんは、被ばくから長い潜伏期を経て発生します。そのため、健診結果の記録は原則として30年間の保存が義務づけられています(5年を経過した後に厚生労働大臣が指定する機関へ引き渡す場合を除く)。
線量限度(出題当時)は次のとおりです。
- 実効線量:5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv
- 妊娠可能な女性:3か月につき5mSv
- 妊娠中の女性(妊娠と診断されたときから出産まで):腹部表面の等価線量2mSv、内部被ばくによる実効線量1mSv
- 眼の水晶体の等価線量限度:2021年4月施行の改正で、5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSvに引き下げられました。
- 皮膚の等価線量限度:1年間につき500mSv
保健師が産業保健の場(病院の放射線部門、非破壊検査、研究施設など)で行う主な支援は次のとおりです。
- 個人線量計を正しく着用するよう指導する
- 線量の記録を確認する
- 健診の結果をフォローする
- 妊娠の申し出があったときに配慮する
これらはいずれも、上の2種類の影響への対策を具体化したものです。
選択肢の確認
1.年に1回の特殊健康診断を実施する。:電離放射線健康診断は、雇入れ時・配置替え時と、その後6か月以内ごとに1回定期に行うと電離則で定められています。年1回では規定の頻度に足りません。年1回は一般労働者の定期健康診断の頻度であり、これと混同しやすい選択肢です。有機溶剤・鉛・特定化学物質などの特殊健康診断も、多くは6か月以内ごとに1回です。
2.確率的影響と確定的影響への対策が必要である。:正答。放射線の影響には、しきい値のある確定的影響と、しきい値がないとされる確率的影響があります。確定的影響はしきい線量以下に抑えて防ぎ、確率的影響は被ばくを合理的に達成できる限り低くして発生確率を下げます。このように、両方への対策を組み合わせることが放射線防護の基本です。
3.作業者は放射性物質取扱作業室で水分摂取してもよい。:放射性物質取扱作業室では、非密封の放射性物質が口から入って内部被ばくすることを防ぐため、事業者は労働者の飲食と喫煙を禁止しなければなりません。水分摂取も飲食に含まれ、例外ではありません。熱中症予防などで水分補給が必要なときは、作業室を退出し、汚染検査と手洗いを済ませてから、区域外で行います。
4.特殊健康診断結果の記録は10年間の保存が義務付けられている。:電離放射線健康診断の記録(個人票)は、原則として30年間の保存が義務づけられており、10年間では足りません。がんなどの確率的影響は潜伏期が長く、被ばくとの関連を後から評価できるよう長期保存が求められます。参考として、一般健康診断の記録は5年間、石綿健康診断の記録は40年間の保存です。
覚えるポイント
- 確定的影響:しきい値があり、線量とともに重症度が増します。例は皮膚障害、脱毛、白内障、不妊、造血障害、胎児奇形です。
- 確率的影響:しきい値がないと仮定され、線量とともに発生確率が増します。例はがん(白血病を含む)と遺伝的影響です。
- 防護の目標は、確定的影響は「防止」、確率的影響は「合理的に達成できる限り低減(ALARA)」です。外部被ばくは時間・距離・遮蔽で防ぎ、内部被ばくは取り込まないことで防ぎます。
- 電離放射線健康診断は、雇入れ時・配置替え時・その後6か月以内ごとに1回行います。項目は被ばく歴、血液、眼(白内障)、皮膚です。
- 健診記録の保存期間は、電離放射線30年、石綿40年、一般健康診断5年です。
- 実効線量限度は5年100mSvかつ1年50mSvです。妊娠可能な女性は3か月5mSv、妊娠中は腹部表面2mSv・内部被ばく1mSvです。放射性物質取扱作業室では飲食・喫煙が禁止です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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