第109回

109PM018|第109回 保健師国家試験 過去問

自治体において統括的な役割を担う保健師として行う業務はどれか。

解答・解説を見る

正解4

正答

4.組織全体における保健師の活動推進のための調整

この問題のポイント

統括的な役割を担う保健師(統括保健師)が何をする立場なのかを問う問題です。鍵は「統括的」という語です。統括保健師は特定の地区や事業を受け持つのではなく、部署を越えて組織全体の保健師活動を見渡し、方向づけ・調整・人材育成を行います。根拠は厚生労働省の「地域における保健師の保健活動に関する指針」(2013年改正)です。

解説

統括保健師が必要とされた背景

自治体の保健師は、かつては保健センターなどの保健衛生部門に集まって配置されていました。その後、介護保険制度の開始、地域包括支援センターの設置、特定健診・特定保健指導の導入、子育て支援施策の拡充などが進み、介護、福祉、国民健康保険、子育て支援など多くの部署に配置されるようになりました。これを分散配置といいます。各分野の施策に保健師の専門性が生かされる利点がある一方で、次のような課題が生じました。

  • 部署ごとに業務が縦割りになり、保健師の活動全体が見えにくい
  • 同じ住民や家族に複数の部署の保健師が関わっても、情報や支援方針が共有されにくい
  • 新任期の保健師が、身近に先輩保健師のいない部署に配置されると、技術の継承や人材育成が難しい
  • 大規模災害などの健康危機の際に、組織として保健師を一体的に動かしにくい

こうした課題に対応するため、2013年(平成25年)に改正された「地域における保健師の保健活動に関する指針」(厚生労働省健康局長通知)は、次のことを示しました。保健師の保健活動を組織横断的に総合調整・推進し、技術的・専門的な側面から指導する役割を担う部署を、保健衛生部門等に明確に位置づけることです。そのうえで、そこに保健師を配置するよう努めるとしました。これが統括的な役割を担う保健師です。配置は努力規定で、都道府県にも市町村にも求められています。

統括保健師の役割

2016年(平成28年)の「保健師に係る研修のあり方等に関する検討会」最終とりまとめでは、統括保健師の役割を次の3つに整理しています。

  • 保健師の保健活動の組織横断的な総合調整及び推進
  • 技術的及び専門的側面からの指導及び調整
  • 人材育成の推進

具体的な業務には、次のようなものがあります。

  • 各部署の保健師の活動状況を把握し、組織としての方向性を示す
  • 部署間の連携体制を整える
  • 「自治体保健師の標準的なキャリアラダー」などを活用して、人材育成の計画や体制を整える
  • 災害時に保健活動全体を統括し、応援・受援の人員配置を調整する

いずれも、個々の住民や個別の事業ではなく「組織と人」を対象にしている点が特徴です。また、最も年長の保健師という意味ではありません。組織の中で役割と権限を明確に位置づける(事務分掌への明記など)ことが重要とされています。

正答に至る判断

選択肢1〜3は、地区担当や事業担当の保健師が日常的に行う保健活動そのものです。統括保健師もこれらを理解している必要はありますが、統括という役割に固有の業務ではありません。これに対して選択肢4は、部署を越えて組織全体の保健師活動を推進するための調整で、上の役割の第一に当たります。

実践では、たとえば母子保健、障害福祉、生活保護の各部門の保健師が同じ家族に関わっている場合に、情報共有の場を設けて支援方針をそろえる場面で、統括保健師の調整機能が生きます。

選択肢の確認

1.担当地区の総合相談支援:担当地区の住民の相談に応じ、必要な支援やサービスにつなぐのは、地区担当保健師が担う個別支援の業務です。総合相談支援は、地域包括支援センターの包括的支援事業の1つとしても位置づけられています。いずれにしても住民に直接関わる実務であり、組織全体を調整する統括保健師の役割には当たりません。

2.地域アセスメントの実施:地域アセスメント(地域診断)は、統計資料、地区踏査、住民の声などから地域の健康課題を明らかにする活動です。指針でも「地域診断に基づくPDCAサイクルの実施」として、すべての保健師に求められる基本的な活動とされています。地区担当・業務担当の保健師がそれぞれ行うもので、統括保健師に固有の業務ではありません。統括保健師は、各部署のアセスメント結果を組織全体の方向づけに生かす立場で関わると区別しておきましょう。

3.生活習慣病重症化予防事業の企画:糖尿病性腎症の重症化予防などの事業は、健診データやレセプトの分析をもとに企画します。これは健康づくり部門や国民健康保険部門で、その事業を担当する保健師が行う業務です。事業の立案・実施・評価は保健師の重要な機能ですが、特定の事業に限られた業務であり、組織横断的な総合調整とは性質が異なります。

4.組織全体における保健師の活動推進のための調整:正答。分散配置された保健師の活動を部署横断的に把握し、方向性を示し、連携体制や人材育成の体制を整えることは、指針が示す統括保健師の中核的な役割です。「組織全体」「調整」という語が、統括的な役割を見分ける手がかりになります。

覚えるポイント

  • 統括保健師の根拠は「地域における保健師の保健活動に関する指針」(2013年改正、厚生労働省健康局長通知)です。保健衛生部門等に明確に位置づけて配置するよう「努める」とされています。
  • 役割の3本柱は、組織横断的な総合調整・推進、技術的・専門的側面からの指導・調整、人材育成の推進です。
  • 背景には、保健師の分散配置による縦割り化と人材育成の難しさ、健康危機時に組織として一体的に動く必要性があります。
  • 統括保健師の対象は「組織と人」です。個別の相談支援、地区の地域診断、個別事業の企画は、地区担当・業務担当の保健師の業務として区別します。
  • 同じ指針は、地域診断に基づくPDCAサイクル、地区担当制の推進、部署横断的な連携・協働、人材育成なども保健活動の方向性として示しています。統括保健師は、これらを組織として推進する立場です。

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