第108回

108AM028|第108回 保健師国家試験 過去問

症例対照研究で計算が可能な指標はどれか。

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正解2

正答

2.オッズ比

この問題のポイント

症例対照研究の構造から、どの指標が計算できるかを問う問題です。症例対照研究は疾病の有無で対象を選び、過去の曝露をさかのぼって比べます。この選び方では罹患率が求められません。そのため罹患率を前提とする指標は計算できず、曝露のオッズの比だけが求められます。研究デザインから得る指標と、患者調査などの保健統計の指標を区別できるかも問われています。

解説

症例対照研究のしくみと、罹患率が出ない理由

症例対照研究では、研究者がある疾病にかかった人(症例群)と、かかっていない人(対照群)を選びます。そのうえで、両群の過去の曝露状況(喫煙、服薬、職業歴など)を面接や記録で調べて比べます。時間をさかのぼって調べるので、後ろ向き研究の代表です。まれな疾病や潜伏期間の長い疾病でも、少ない対象数と短い期間で実施できる利点があります。

罹患率は、ある集団で一定期間に新たに発生した患者の割合です。ところが症例対照研究では、症例と対照の人数比(1:2、1:4など)を研究者が決めて集めます。対照を多く集めれば、見かけの「発生割合」はいくらでも小さくなります。つまり、集めた人数から計算した割合は、その集団の本当の発生頻度を表しません。したがって曝露群・非曝露群それぞれの罹患率が出せず、次の2つも直接計算できません。

  • 相対危険(罹患率の比)
  • 寄与危険(罹患率の差)

オッズ比の求め方と意味

対象者を次の4つに分けて考えます。

  • 曝露あり:症例群 a人、対照群 b人
  • 曝露なし:症例群 c人、対照群 d人

症例群の中で、曝露した人と曝露しなかった人の比(曝露オッズ)は a/c です。対照群では b/d です。この2つの比がオッズ比で、(a/c)÷(b/d)=ad/bc となります。症例と対照の人数比を研究者が決めても、各群の中での曝露あり・なしの比は変わらないため、この指標は正しく計算できます。

オッズ比の値は次のように読みます。

  • 1のとき:曝露と疾病に関連はない
  • 1より大きいとき:曝露が疾病の危険を高める方向の関連がある
  • 1より小さいとき:曝露が疾病を防ぐ方向の関連がある

疾病がまれな場合は、オッズ比が相対危険のよい近似値になります。このため、症例対照研究で得たオッズ比は相対危険の推定値として解釈されます。

他の研究デザイン・保健統計との区別

  • コホート研究:曝露の有無で分けた集団を追跡し、新たな発生を観察します。罹患率が得られるので、相対危険・寄与危険・寄与危険割合を計算できます(オッズ比も計算できます)。
  • 横断研究:ある一時点で疾病と要因を同時に調べます。有病率は得られますが罹患率は得られず、要因と疾病のどちらが先かも判断しにくい方法です。
  • 症例対照研究:求める指標はオッズ比です。弱点は、症例群のほうが過去の曝露をよく思い出す思い出しバイアスと、対照の選び方による選択バイアスです。交絡を減らすため、性・年齢などをそろえるマッチングがよく用いられます。

受療率や推計患者数は、研究デザインから得る指標ではありません。厚生労働省の患者調査(医療施設を対象に3年ごとに行う標本調査)から得られる保健統計です。5年生存率は、診断された患者を追跡して初めて得られる指標です。

保健師活動では、発生母集団全体を把握しにくい地域の健康問題でこの考え方が役立ちます。患者と非患者の過去の曝露を比べ、原因を短期間で絞り込む場面です。

選択肢の確認

1.受療率:患者調査で得られる保健統計の指標です。調査日に医療施設で受療した患者の推計数を推計人口で割り、人口10万対で表します。地域や傷病ごとの受療状況を把握するための指標です。曝露と疾病の関連を調べる症例対照研究から計算するものではありません。

2.オッズ比:正答。症例群と対照群それぞれの曝露オッズ(a/c と b/d)の比として、ad/bc で求められます。症例と対照の人数比を研究者が決めていても、値は影響を受けません。まれな疾病では相対危険の近似値として解釈できます。

3.寄与危険:曝露群の罹患率から非曝露群の罹患率を引いた値で、曝露によって上乗せされた罹患の大きさを示します。罹患率が求められない症例対照研究では計算できず、コホート研究で求める指標です。比の指標である相対危険と、差の指標であるこの選択肢を取り違えないようにしましょう。

4.推計患者数:患者調査で、調査日に全国の医療施設で受療した患者数を標本から推計した値です。選択肢1の分子にあたる保健統計の数値です。疾病と曝露の関連を分析する研究デザインとは無関係で、症例対照研究から算出するものではありません。

5.5年生存率:診断や治療開始の時点から5年後に生存している患者の割合です。患者集団を追跡し、がん登録のデータや生存時間分析を用いて求めます。症例対照研究は、すでに発症した人を起点に過去の曝露をさかのぼる方法です。発症後の経過を時間に沿って観察しないため、この指標は得られません。

覚えるポイント

  • 症例対照研究は、疾病あり・なしで対象を選び、過去の曝露を調べる後ろ向き研究です。求める指標はオッズ比(ad/bc)です。
  • 症例と対照の人数比を研究者が決めるため罹患率が出ず、相対危険と寄与危険は直接計算できません。まれな疾病ならオッズ比は相対危険に近似します。
  • コホート研究では罹患率が得られ、相対危険(比)・寄与危険(差)・寄与危険割合を計算できます。横断研究で得られるのは有病率です。
  • 症例対照研究は、まれな疾病や潜伏期の長い疾病に向いています。弱点は思い出しバイアスと選択バイアスで、対策の一つがマッチングです。
  • 受療率と推計患者数は患者調査(3年ごと)から得ます。受療率=推計患者数÷推計人口×10万です。生存率は患者の追跡で求めます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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