第109回
109AM030|第109回 保健師国家試験 過去問
生態学的研究で、都道府県別の1人当たりの1日の歩数とBMIの平均値との関連の程度を評価するために計算するのはどれか。
解答・解説を見る
正解4
正答
4.相関係数
この問題のポイント
研究デザインと、そのデザインで使う指標の組み合わせを問う問題です。「生態学的研究」「都道府県別」「平均値」という語から、分析の単位が個人ではなく集団であることを読み取ります。また、比べる2つの変数がどちらも連続量であることも手がかりです。集団単位で得た連続量どうしの関連の強さと向きを表す指標は相関係数です。
解説
問題文の手がかり
- 「生態学的研究」:個人ではなく、地域や国などの集団を観察の単位とする研究です。
- 「都道府県別の1人当たりの1日の歩数」「BMIの平均値」:どちらも都道府県ごとに集計した平均値で、連続した数量(量的データ)です。
- 「関連の程度を評価する」:2つの変数がどの程度一緒に変動するかを、数値で表す指標が求められています。
- 疾病の有無(あり・なし)や、個人ごとの曝露の有無は、問題文に出てきません。
生態学的研究と相関係数
生態学的研究(地域相関研究ともいいます)は観察研究の一つです。集団ごとに、曝露要因の指標(本問では平均歩数)と健康指標(本問ではBMIの平均値)を集計値として並べ、集団のあいだで両者の関係をみます。個人のデータを新たに集める必要がありません。既存の統計資料を使って短期間・低コストで実施できるため、仮説を立てる段階の研究として使われます。
本問では、47都道府県のそれぞれについて「平均歩数」と「BMIの平均値」の組が1つずつ得られます。横軸に平均歩数、縦軸にBMIの平均値をとると、47個の点からなる散布図が描けます。この散布図から次の2点を読み取り、1つの数値で表すのが相関係数(ピアソンの積率相関係数、記号r)です。
- 強さ:点の並びがどの程度直線的にそろっているか
- 向き:右上がりか右下がりか
相関係数の読み方は次のとおりです。
- rは−1から+1までの値をとります。
- 正の値は、一方が大きいほど他方も大きい関係(正の相関)を示します。負の値は、一方が大きいほど他方が小さい関係(負の相関)を示します。
- 絶対値が1に近いほど直線的な関連が強く、0に近いほど直線的な関連は弱くなります。
たとえば平均歩数の多い都道府県ほどBMIの平均値が低い傾向があれば、負の相関として表れます。データが正規分布に従わない場合や順序尺度のデータでは、順位にもとづくスピアマンの順位相関係数を使います。また、関係がU字型のように直線的でない場合や外れ値がある場合、相関係数だけでは関係を正しく表せないことがあります。そのため、散布図で関係の形を必ず確かめます。
他の指標が使えない理由
ほかの選択肢の指標は、何を表す指標なのかで整理すると見分けやすくなります。
- 罹患率:新たに発症した人数を観察人年で割って求める、1つの集団の疾病頻度の指標です。曝露の情報は必要なく、2つの変数の関連を表す指標ではありません。
- オッズ比・寄与危険:個人ごとに疾病の有無・発生と曝露の有無を把握した2値データから求める、関連の指標です。
- 相対頻度:1つの変数の分布を表す指標で、2つの変数の関連は示しません。
本問で求められているのは、都道府県ごとの平均値(連続量)どうしの関連の程度です。疾病の情報もないため、これらはいずれも当てはまりません。
結果を読むときの注意
- 生態学的錯誤:集団単位でみられた関連が、個人単位でも成り立つとは限りません。仮に「歩数の多い県ほどBMIの平均値が低い」という結果が得られても、そこから「歩数の多い人ほどBMIが低い」と結論づけることはできません。
- 交絡:年齢構成、都市化の程度、食生活など、都道府県によって異なる他の要因が両方に影響している可能性があります。生態学的研究では、これを個人単位で調整できません。
- 相関と因果:相関係数の絶対値が大きくても、それだけで因果関係を示したことにはなりません。
保健師の地域診断では、既存統計を使って地域の健康指標と生活習慣の指標を比べ、健康課題の仮説を立てる場面が多くあります。生態学的研究で得た関連は、あくまで「仮説」と位置づけます。そのうえで、症例対照研究、コホート研究、介入研究など個人単位の研究で検証する、という流れを理解しておきましょう。
選択肢の確認
1.罹患率:一定期間に新たに疾病を発症した人の数を、その集団の観察人年で割った指標で、1つの集団で疾病が新たに発生する頻度(速さ)を表します。曝露の情報を使わずに求める疾病頻度の指標であり、2つの変数の関連の程度を示すものではありません。がん登録などから都道府県別の率を求め、生態学的研究の変数の一つとして使うことはあります。その場合も、変数どうしの関連は選択肢4で評価します。本問ではそもそも疾病の発生を扱っていません。
2.オッズ比:症例群と対照群の曝露オッズの比で、次の式で求めます。(曝露ありの症例数×曝露なしの対照数)÷(曝露なしの症例数×曝露ありの対照数)。主に症例対照研究で曝露と疾病の関連の強さを表し、疾病がまれな場合には相対危険の近似値として解釈できます。個人ごとの疾病の有無と曝露の有無という2値データが必要なので、集団の平均値どうしを比べる本問のデータからは求められません。「関連の強さ」を表す点で選択肢4と混同しやすいので、データの種類(2値か連続量か)で見分けます。
3.寄与危険:曝露群の発生率から非曝露群の発生率を引いた差(リスク差)で、曝露によって上乗せされた疾病の発生量を表します。主にコホート研究で使います。曝露を取り除けば発生をどれだけ減らせるかの目安になるため、公衆衛生対策の効果を見積もるのに役立ちます。ただし、個人を曝露の有無で分け、それぞれの群で疾病の発生を把握したデータが必要で、2つの連続量の関連を表す指標ではありません。コホート研究で比を表す相対危険(リスク比)とあわせて覚えておきましょう。
4.相関係数:正答。集団単位で得た2つの連続量(平均歩数とBMIの平均値)について、直線的な関連の強さと向きを−1から+1の値で表します。散布図と組み合わせて使うのが、生態学的研究の代表的な分析方法です。
5.相対頻度:全体の度数に対して、ある階級や項目の度数が占める割合(構成割合)で、1つの変数がどのように分布しているかを表します。たとえばBMIの区分ごとの人数の割合を示すときに使いますが、2つの変数が一緒に変動する程度は表せません。名前の似た「相対危険」(曝露群と非曝露群の発生率の比)と取り違えないよう注意します。
覚えるポイント
- 生態学的研究(地域相関研究)は、集団(地域・国など)を分析の単位とします。既存統計を使って安価・迅速に実施でき、仮説を立てるために用います。
- 集団単位の連続量どうしの関連は、散布図と相関係数で評価します。rは−1〜+1の値をとり、符号が向き、絶対値が強さを表します。0は直線的な関連がないことを意味します。
- 指標は何を表すかで区別します。
罹患率は1つの集団の疾病頻度で、曝露の情報は要りません。
オッズ比・相対危険・寄与危険は、曝露の有無と疾病の有無・発生を個人ごとに把握して求める関連の指標です。
相対頻度は1つの変数の分布(構成割合)で、名前の似た相対危険(発生率の比)と取り違えないようにします。 - 研究デザインと代表的な指標の組み合わせは次のとおりです。コホート研究は罹患率・相対危険・寄与危険、症例対照研究はオッズ比、断面研究(横断研究)は有病率、生態学的研究は相関係数です。
- 生態学的錯誤とは、集団で見られた関連をそのまま個人に当てはめる誤りです。生態学的研究は交絡の調整が難しく、相関だけでは因果関係を示せません。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。