第109回
109AM029|第109回 保健師国家試験 過去問
2つの非正規分布の母集団の数量データの比較に用いるのはどれか。
解答・解説を見る
正解5
正答
5.Mann-Whitney〈マン・ホイットニー〉のU検定
この問題のポイント
統計的検定の選び方を問う問題です。手がかりは「非正規分布」「2つの母集団」「数量データ」の3つです。母集団が正規分布に従うと仮定しないノンパラメトリック検定のうち、独立した2群の量的データを比べる手法を選びます。検定は、データの種類、群の数、対応の有無、正規性の4つの視点から選びます。
解説
問題文の条件を分解する
- 「数量データ」:体重、血圧、在院日数などの量的データ(間隔尺度・比尺度)を指します。性別や喫煙の有無のような質的データ(名義尺度)ではありません。
- 「2つの母集団の比較」:比べる群は2群です。別々の母集団から得た標本どうしを比べるので、同じ人を2回測定した対応のあるデータではなく、対応のない(独立した)2群と読み取れます。
- 「非正規分布」:母集団の分布が正規分布に従うと仮定できません。
パラメトリック検定とノンパラメトリック検定
パラメトリック検定は、母集団が特定の分布(多くは正規分布)に従うと仮定し、平均値や分散といった母数(パラメータ)を使って検定します。t検定や分散分析が代表例です。正規性に加え、多くの手法では群間の分散が等しいこと(等分散)も前提になります。
ノンパラメトリック検定は、母集団が正規分布などの特定の分布に従うことを仮定しません。多くの手法は測定値を順位に置き換えて比べるため、極端な値(外れ値)の影響を受けにくく、順序尺度のデータにも使えます。母集団が正規分布に従わない場合や、標本が少なく正規性を確かめにくい場合に選ばれます。
マン・ホイットニーのU検定では、2群のデータをまとめて小さい順に順位をつけ、群ごとの順位の合計(順位和)からU統計量を求めます。これにより、一方の群の値が他方より大きい傾向にあるか(分布の位置のずれ)を検定します。ウィルコクソンの順位和検定と本質的に同じ検定で、対応のない2群を比べるt検定に相当するノンパラメトリック検定です。
検定の対応関係と保健活動での使いどころ
- 対応のない2群:t検定に対して、マン・ホイットニーのU検定(ウィルコクソンの順位和検定)
- 対応のある2群(同じ人の介入前後など):対応のあるt検定に対して、ウィルコクソンの符号付順位検定
- 対応のない3群以上:一元配置分散分析に対して、クラスカル・ウォリス検定
- 対応のある3群以上(同じ人を3時点以上で測定する場合など):反復測定の分散分析に対して、フリードマン検定
- 2変数の相関:ピアソンの積率相関係数に対して、スピアマンの順位相関係数
医療費、在院日数、飲酒量などは、ごく一部の人の極端に大きい値のために右に裾を引く分布になりやすく、正規分布を仮定しにくいデータの典型です。たとえば保健指導の参加群と非参加群で翌年の医療費を比べる場面では、U検定が候補になります。このようなデータを要約するときは、平均値と標準偏差よりも、中央値と四分位範囲を示すほうが実態を適切に表せます。事業評価の結果を読み解く際にも、データの性質に合った手法が使われているかを確認する視点が役立ちます。
選択肢の確認
1.t検定:2群の平均値の差を検定するパラメトリック検定で、母集団が正規分布に従うことを前提とします。標準的な方法は等分散も前提とし、等分散を仮定しない方法としてウェルチの検定があります。2群・数量データという点は設問に合いますが、「非正規分布」の条件を満たさないため当てはまりません。正規分布に従う2群の比較であれば適切な選択になります。
2.分散分析:3群以上の平均値の差をまとめて検定する代表的な手法で、各群の母集団が正規分布に従い、分散が等しいことを前提とするパラメトリック検定です。2群に当てはめると、等分散を仮定した選択肢1と同じ結論になります。しかし、正規分布を前提とする点で設問の条件に合いません。正規分布を仮定できない場合は、対応のない3群以上ではクラスカル・ウォリス検定を用います。同じ対象を繰り返し測定した対応のある3群以上ではフリードマン検定を用います。
3.多変量解析:重回帰分析、ロジスティック回帰分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析など、多くの変数の関係を同時に分析する手法の総称で、特定の検定の名称ではありません。このうち重回帰分析やロジスティック回帰分析などの回帰モデルは、疫学では、分析段階で交絡因子の影響を調整しながら要因と結果の関連を調べる際によく用いられます。一方、主成分分析や因子分析は多くの変数の情報を少数の成分や因子に集約する手法です。クラスター分析は似た性質の対象をグループに分ける手法です。これらは交絡の調整を目的とするものではありません。2群の数量データを比べる手法を問う本問の答えにはなりません。
4.χ2〈カイ二乗〉検定:性別と喫煙の有無のような質的データを分割表(クロス集計表)に整理し、観測度数と期待度数のずれから、2変数の独立性や群間の割合の差を検定する方法です。扱うのは人数などの度数であり、数量データそのものの比較には用いません。平均値や分散などの母数を扱わないことからノンパラメトリック検定に分類されることもあり、「非正規分布ならこれ」と取り違えやすい選択肢です。期待度数が小さいセルがある場合は、フィッシャーの正確確率検定を用います。
5.Mann-Whitney〈マン・ホイットニー〉のU検定:正答。母集団が正規分布に従うことを仮定しないノンパラメトリック検定で、独立した2群の数量データを順位に置き換えて比較します。「非正規分布」「2つの母集団」「数量データ」の3条件をすべて満たします。ウィルコクソンの順位和検定と同等の検定で、5段階評価のような順序尺度のデータにも使えます。同じ対象の前後比較のように対応がある場合は、ウィルコクソンの符号付順位検定を選びます。
覚えるポイント
- 検定選択の4視点は、データの種類(量的か質的か)、群の数(2群か3群以上か)、対応の有無、正規性(パラメトリックかノンパラメトリックか)です。
- 正規分布に従う量的データは平均値と標準偏差で要約します。比較には、2群はt検定、3群以上は分散分析を用います。対応のあるデータには、対応のあるt検定や反復測定の分散分析を用います。
- 正規分布を仮定できない量的データは中央値と四分位範囲で要約します。比較には、対応のない2群はマン・ホイットニーのU検定、対応のある2群はウィルコクソンの符号付順位検定を用います。3群以上では、対応のない場合はクラスカル・ウォリス検定、対応のある場合はフリードマン検定を用います。
- 質的データ(名義尺度)の関連や割合の比較はカイ二乗検定を用い、期待度数が小さいときはフィッシャーの正確確率検定を用います。
- 相関は、2変数が正規分布に従う量的データならピアソンの積率相関係数で表します。正規分布を仮定できない場合や順序尺度のデータなら、スピアマンの順位相関係数で表します。
- 多変量解析は、複数の変数の関係を同時に分析する手法の総称です。疫学では、重回帰分析やロジスティック回帰分析などにより、分析段階で交絡因子の影響を調整する目的にも用いられます。
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