第108回
108AM029|第108回 保健師国家試験 過去問
日本の主な死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移を図に示す。心疾患はどれか。

解答・解説を見る
正解2
正答
2.B
この問題のポイント
主な死因別死亡率の年次推移を示したグラフから、心疾患の曲線を選ぶ問題です。見分ける手がかりは2つあります。1つは、右端(令和元年)の高さの順が人口動態統計の死因順位(悪性新生物→心疾患→老衰→脳血管疾患→肺炎)と一致することです。もう1つは、心疾患にだけ平成6〜7年の急落がみられることです。各死因の推移の形と、統計上の取り決めの変更で生じた「段差」の理由を結びつけて覚えておくと、どの死因を問われても対応できます。
解説
図の読み取り
縦軸は死亡率(人口10万対)で、目盛りは0〜320です。横軸は昭和22年(1947年)から令和元年(2019年)までの年次です。死因別死亡率は「その死因による1年間の死亡数÷人口×10万」で求めます。年齢構成を調整していない粗死亡率です。5本の曲線は線の種類で描き分けられています。Aは太い実線、Bは破線、Cは点線、Dは細い実線、Eは一点鎖線です。右端の値はAが約304、Bが約168、Cが約98、Dが約86、Eが約77で、上からA→B→C→D→Eの順に並んでいます。
心疾患を見分ける2つの手がかり
1つ目は右端の高さの順です。人口動態統計(令和元年)の死因順位は、第1位が悪性新生物、第2位が心疾患(高血圧性を除く)、第3位が老衰、第4位が脳血管疾患、第5位が肺炎でした。この図には令和元年の上位5死因が描かれているので、右端の高さの順がそのまま死因順位になります。したがって、2番目に高いBが心疾患です。心疾患は死亡総数の約15%を占めます。昭和60年に脳血管疾患を抜いて第2位になり、その後は平成7年前後の一時期を除いて第2位が続いています。
2つ目は曲線の形、特に平成6〜7年の急落です。Bは昭和22年の約60からゆるやかに上昇を続け、平成5年ころに150近くまで達します。ところが平成6〜7年に約110まで急落し、その後は再び上昇しています。
人口動態統計の死因は、死亡診断書をもとに「死亡に至る一連の経過のきっかけとなった疾患(原死因)」で集計されます。平成7年1月施行の新しい死亡診断書(死体検案書)には、「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください」という注意書きが加わり、施行前から周知が進みました。その結果、それまで「心不全」と書かれていた死亡の一部が、心不全の原因となった疾患のほうに計上されるようになったと考えられています。つまり、心疾患による死亡が実際に急に減ったわけではありません。
推移を読むときの注意
長期の推移には、病気の実態の変化ではなく、統計上の取り決めの変更によって生じる段差があります。この図では次の3つが、曲線を見分ける手がかりにもなります。
- 平成6〜7年の心疾患の低下は、死亡診断書の注意書きの影響です。
- 平成7年の脳血管疾患の上昇は、ICD-10の適用(平成7年1月)により原死因の選び方のルールが明確になった影響です。
- 平成29年の肺炎の低下は、ICD-10(2013年版)の適用(平成29年1月)により原死因の選び方のルールが明確になった影響です。
平成7年は心疾患が下がり、脳血管疾患が上がりました。そのため図でも平成7〜8年ころはDがBより上にあり、一時的に脳血管疾患が心疾患を上回っています。
粗死亡率は、高齢者が増えるほど高齢者に多い死因で上昇します。悪性新生物・心疾患・老衰・肺炎の近年の上昇は、主に人口の高齢化を反映したものです。年齢調整死亡率でみると、悪性新生物・心疾患・脳血管疾患はいずれも長期的に低下しています。
保健師の実践では、次の2点が大切です。
- 地域診断で市町村の死因を全国や他地域と比べるときは、年齢調整死亡率や標準化死亡比(SMR)を使います。
- 年次推移を読むときは、分類や様式の変更による段差がないかを確かめます。
また、心疾患と脳血管疾患は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙などの危険因子が共通する循環器病です。特定健康診査・特定保健指導などの生活習慣病対策の重要な対象で、平成30年には循環器病対策基本法も成立しています。
なお、図は令和元年までですが、その後の人口動態統計(令和2〜5年)でも第1位から第5位までの順位は同じです。
選択肢の確認
1.A:太い実線です。昭和22年の約70から一度も大きく下がらずに上昇を続け、昭和55〜56年ころに脳血管疾患(選択肢4)を抜いて最も高くなりました。令和元年には約304に達しています。これは、昭和56年から死因の第1位が続いている悪性新生物の推移です。心疾患も長期的には増えていますが、この曲線には平成6〜7年の落ち込みがありません。右端の高さも心疾患の2倍近くあるため、心疾患ではありません。
2.B:正答。破線です。ゆるやかな上昇の途中、平成6〜7年に150近くから約110へ急落し、その後再び上昇して、令和元年には約168と2番目に高くなっています。右端の高さが死因順位の第2位に当たることと、死亡診断書の注意書きの影響による平成7年前後の急落という心疾患に特有の形の、両方が一致します。昭和60年ころに脳血管疾患(選択肢4)を上回り、平成7〜8年ころに一時的に下回った後、再び上回る動きも心疾患の推移と合っています。
3.C:点線です。昭和22年の約100から長く低下を続け、平成の初めから平成10年代半ばまでは20を下回る低い水準でした。平成10年代後半から上昇に転じて平成20年代に急上昇し、令和元年には約98に達しています。これは老衰の推移で、高齢化の進展を背景に増え続け、平成30年に脳血管疾患を抜いて第3位になりました。上昇している点は心疾患と似ています。しかし心疾患は昭和期から上昇を続けてきたのに対し、老衰は平成の半ばまで低下していた点で区別できます。
4.D:細い実線です。昭和20年代から上昇して昭和40年代に約175の山をつくり、昭和50年代半ばまでは5本の中で最も高い位置にありました。その後は低下し、平成7年に約97から約118へ一段上がった後、再び下がって令和元年は約86です。これは、昭和26〜55年に死因の第1位だった脳血管疾患の推移です。減塩や降圧治療の普及など、高血圧対策の進歩によって低下してきました。平成7年に段差がある点は心疾患と同じですが、向きが逆です。脳血管疾患はICD-10の適用で上がり、心疾患は死亡診断書の注意書きで下がりました。ここが見分けのポイントです。
5.E:一点鎖線です。昭和22年は約130と高い値から始まりますが、直後に急落し、昭和40〜50年代には20台まで下がっています。昭和50年代後半から再び上昇し、平成23年ころに脳血管疾患(選択肢4)を上回って100近くに達しました。平成29年に約95から約78へ下がり、令和元年は約77と5本の中で最も低くなっています。これは肺炎の推移です。戦後の急減は抗菌薬の普及や栄養・生活環境の改善、昭和50年代以降の増加は高齢者の肺炎の増加を反映しています。平成29年の低下は、ICD-10(2013年版)の適用で原死因の選び方のルールが明確になった影響です。
覚えるポイント
- 令和元年の死因順位(人口動態統計)は、第1位悪性新生物、第2位心疾患(高血圧性を除く)、第3位老衰、第4位脳血管疾患、第5位肺炎です。上位の死因を並べた推移図では、右端の高さの順がそのまま死因順位になります。
- 戦後の死因第1位は、結核(昭和25年まで)→脳血管疾患(昭和26〜55年)→悪性新生物(昭和56年〜)と移りました。心疾患は昭和60年に第2位、肺炎は平成23年に第3位、老衰は平成30年に第3位となりました。
- 統計上の段差を押さえます。心疾患は平成6〜7年に急落しました(死亡診断書に「終末期の心不全等は書かない」旨の注意書き)。脳血管疾患は平成7年に上昇し(ICD-10適用)、肺炎は平成29年に低下しました(ICD-10(2013年版)適用)。
- 曲線の形で見分けます。悪性新生物は一貫した右肩上がり、脳血管疾患は昭和40年代の山から低下、肺炎は戦後に急減して高齢化で再び増加、老衰は長い低下の後に平成20年代から急上昇です。
- 図の死亡率は粗死亡率で、高齢化の影響を強く受けます。地域や年次の比較には年齢調整死亡率や標準化死亡比(SMR)を使います。悪性新生物・心疾患・脳血管疾患の年齢調整死亡率は低下傾向です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。