第109回
109AM044|第109回 保健師国家試験 過去問
次の文を読み44~46の問いに答えよ。人口2万人のA市にあるB地区は人口3,000人、老年人口割合は45%で単身の高齢者世帯が増加している。2年前に300戸の温泉付きのマンションが建設された。マンションの入居者の平均年齢は67.2歳で、都市部の会社を定年退職した者が多い。近所付き合いが少ないため、1人暮らし世帯の入居者が死後1か月以上経って発見されることがあった。現在は高齢夫婦世帯が多いが、今後は配偶者の死亡によって1人暮らし世帯が増加する見込みである。保健師は住民と協働し、安心して暮らせるB地区になるよう取り組むことにした。まず、保健師は地域の実態把握を行うことにした。B地区の健康課題を明らかにするために情報を収集する対象で優先度が高いのはどれか。
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正解3
正答
3.B地区の民生委員
この問題のポイント
地区の実態把握(地区診断)の最初の段階で、どこから情報を集めるのが最も有効かを問う問題です。判断の鍵は2つあります。1つは、知りたいのが「B地区の健康課題」だという対象範囲です。もう1つは、B地区ではもとからの住民と新しいマンションの入居者が混在し、孤立が問題になっているという状況です。この条件に合うのは、担当区域の住民全体の生活状態を日ごろから把握する役割を持つ民生委員です。
解説
問題文の状況を整理する
- A市(人口2万人)のうち、B地区は人口3,000人です。老年人口割合は45%で、65歳以上は約1,350人です。単身の高齢者世帯が増えています。
- 2年前に300戸の温泉付きマンションが建設されました。入居者の平均年齢は67.2歳で、都市部から移ってきた定年退職者が多く、地域とのつながりを持たない新しい住民です。
- 近所付き合いが少なく、1人暮らしの入居者が死後1か月以上経って発見されたことがあります(孤立死)。
- 現在は高齢夫婦世帯が多いものの、配偶者の死亡により今後は1人暮らし世帯が増える見込みです。
- 保健師は住民と協働して取り組む方針で、「まず」実態把握から始めます。
B地区の住民は、性格の異なる2つの層から成ります。高齢化が進み単身世帯が増えているもとからの住民と、地域とのつながりが薄いマンションの新しい住民です。問われているのは「B地区の健康課題」なので、マンションだけでなく地区全体を見渡せる情報が必要です。
地区診断における情報収集
地区診断では、次のような方法を組み合わせて地区の姿を描きます。
- 人口や世帯構成などの既存資料の分析
- 地区踏査
- 住民や関係者への聞き取り
統計資料からは高齢化率や世帯構成が分かります。しかし、次のような生活の実情は数字には表れません。
- 誰がどの程度孤立しているか
- 近所の見守りがどのくらい機能しているか
- 住民同士の交流の場がどこにあるか
こうした情報を得るには、地区の事情に詳しいキーパーソンから話を聞くことが有効です。情報源を選ぶときは、次の点で比べます。
- 把握している範囲が、知りたい地区(B地区全体)と一致しているか
- 特定の層(会の参加者だけ、受診者だけ、マンション入居者だけなど)に偏っていないか
- 健康状態だけでなく、生活や人とのつながりの実情まで知っているか
民生委員の役割
民生委員は民生委員法に基づく制度で、次のような特徴があります。
- 都道府県知事の推薦により、厚生労働大臣が委嘱します。
- 非常勤の地方公務員で、給与は支給されず、任期は3年です。
- 児童福祉法による児童委員を兼ねます。
- 地域の実情に通じた住民から選ばれ、一定の担当区域を受け持ちます。
- 守秘義務が課されています。
職務には、住民の生活状態を必要に応じて適切に把握すること、援助を必要とする人の相談に応じて助言すること、福祉サービスの情報提供、関係行政機関の業務への協力などがあります。多くの地域で1人暮らし高齢者の見守りや訪問を担っており、孤立しがちな世帯の存在や、新旧住民の交流の実態について具体的な情報を持っています。
このように民生委員は、健康な人も医療につながっていない人も含めて、担当区域の住民全体を日常的に見ている立場にあります。そのため、B地区全体の健康課題を明らかにするための最初の情報源として最も適しています。さらに、この後に住民と協働して見守りの仕組みをつくる段階でも、中心的な協働相手になり得ます。実態把握の段階からつながりをつくっておくことは、その後の活動の土台にもなります。
選択肢の確認
1.A市の老人クラブの参加者:老人クラブは、おおむね60歳以上の地域の高齢者が自主的に組織し、健康づくりや社会参加、交流を行う団体です。参加者から高齢者の生活の声を聞くことはできます。しかしこの選択肢は「A市の」参加者なので、B地区以外の住民が多く含まれます。B地区の住民についても、会に参加している比較的活動的な人の情報に限られます。孤立のリスクが高いのはむしろ会に参加していない人で、近所付き合いの少ないマンション入居者の実情はとくに把握しにくい情報源です。仮にB地区の会に限ったとしても、参加者に偏るという限界は残ります。
2.マンションの管理組合の長:管理組合はマンションの区分所有者で構成され、建物や共用部分の維持管理を目的とする団体です。孤立死が起きたマンションの状況や入居者の特徴についてある程度の情報を持っており、マンション内で見守りを進める段階では重要な協力者になり得ます。しかし把握している範囲はマンション内に限られ、B地区のもとからの住民の状況は分かりません。また、入居者の健康や生活の把握は本来の役割ではありません。そのため、地区全体の実態把握の最初の情報源としては優先度が下がります。
3.B地区の民生委員:正答。担当区域の住民の生活状態を把握することが職務として定められています。もとからの住民とマンション入居者の双方を含むB地区全体の状況、とくに1人暮らし高齢者や孤立しがちな世帯の実情を具体的に知っている立場です。
4.B地区の開業医:開業医は、受診した患者の病状や健康状態については詳しい情報を持っています。しかし分かるのは受診者の情報に限られ、受診していない人、とくに孤立して医療にもつながっていない人の生活は見えません。また、患者の個人的な事情には医師の守秘義務がかかるため、聞き取れる内容にも制約があります。地区の疾病の傾向など医療面の情報を補う相手としては有用です。ただし、孤立や近所付き合いといった生活実態を把握する最初の情報源としては優先度が下がります。
覚えるポイント
- 地区診断は、既存資料(人口・世帯構成など)、地区踏査、住民やキーパーソンへの聞き取りを組み合わせて行います。数字に表れない生活実態は、地区に詳しいキーパーソンから得ます。
- 情報源を選ぶ基準は「対象範囲の一致」と「偏りの少なさ」です。会の参加者、医療機関の受診者、特定の集団の代表から得られる情報は、それぞれの範囲に偏ります。
- 民生委員は民生委員法に基づき、都道府県知事の推薦で厚生労働大臣が委嘱します。任期3年、給与なし、児童委員を兼ね、守秘義務があります。職務は、担当区域の住民の生活状態の把握、相談・助言、関係機関への協力です。
- 老人クラブは、おおむね60歳以上の高齢者による自主組織です。参加者は活動的な人に偏りやすく、孤立している人の実情は届きにくいことに注意します。
- 孤立死のリスクを示す手がかりは、単身世帯、地縁のない転入者、近所付き合いの乏しさ、配偶者との死別です。「今は夫婦世帯でも将来は単身になる」ことを見越して予防的に関わる視点が、公衆衛生看護では重要です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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