111AM013|第111回 看護師国家試験 過去問
黄疸のある成人患者にみられる随伴症状はどれか。
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正解: 4
正答
4.搔痒感
この問題のポイント
黄疸(血中ビリルビンの増加による皮膚・粘膜の黄染)に伴ってみられる代表的な症状を問う問題です。黄疸のうち、閉塞性黄疸など胆汁うっ滞を伴うものでは、胆汁の成分が腸管へ排泄されずに血中にあふれます。このときビリルビンとともに胆汁酸なども増えるため、皮膚の搔痒感が生じます。問題文の「成人」という条件は、新生児の核黄疸の後遺症(聴覚障害など)と区別する手がかりになります。
解説
黄疸のしくみと分類
黄疸は、血中のビリルビンが増えて、皮膚や粘膜、眼球結膜が黄色く染まる状態です。ビリルビンは、主に老化した赤血球のヘモグロビンが分解されてできる色素です。
- 脾臓などで生じた間接(非抱合型)ビリルビンは水に溶けにくく、アルブミンと結合して肝臓へ運ばれます。
- 肝臓でグルクロン酸抱合を受けると、水溶性の直接(抱合型)ビリルビンになり、胆汁中に排泄されます。
- 腸管に出たビリルビンは、腸内細菌によってウロビリノゲンに変わります。大部分は便の色素(ステルコビリン)として排泄され、一部は腸管から再吸収されて、そのうち少量が尿中に出ます。
血清総ビリルビン値がおおむね2〜3 mg/dLを超えると、肉眼で黄染が分かるようになります(顕性黄疸)。最初に気づきやすい部位は眼球結膜で、観察は自然光の下で行います。
黄疸は、障害される段階によって次の3つに分けられます。
- 溶血性黄疸(肝前性):赤血球の破壊が亢進し、主に間接ビリルビンが増えます。胆汁へのビリルビン排泄はむしろ増えるため、便の色は濃くなり、尿中ウロビリノゲンが増えます。
- 肝細胞性黄疸(肝性):肝炎や肝硬変などで、肝細胞によるビリルビンの取り込み・抱合・排泄が障害されます。間接・直接の両方が増えます。
- 閉塞性黄疸(肝後性):総胆管結石、胆管がん、膵頭部がんなどで胆道が閉塞し、主に直接ビリルビンが増えます。
このほか、ジルベール症候群などの体質性黄疸もあります。黄疸があれば必ず胆汁が腸に届かないわけではありません。胆汁うっ滞を伴うかどうかで随伴症状が変わる点が重要です。
かゆみが起こる理由と閉塞性黄疸の所見
胆汁うっ滞とは、胆汁が腸管へ十分に流れない状態です。胆道が閉塞する閉塞性黄疸のほか、原発性胆汁性胆管炎や薬剤性肝障害など、肝臓の中で胆汁の流れが滞る病気でも起こります。胆汁うっ滞では、ビリルビンだけでなく胆汁酸も腸管へ排泄されず、血中にたまります。胆汁酸などの起痒物質が血中や皮膚に増えて皮膚の神経終末を刺激し、かゆみが生じると考えられています。
このため搔痒感は、閉塞性黄疸や、胆汁うっ滞を伴う肝疾患で目立ちます。
- かゆみの強さは、血清ビリルビン値の高さとは必ずしも一致しません。原発性胆汁性胆管炎では、黄疸が現れる前からかゆみを訴えることがあります。
- 溶血性黄疸では胆汁酸が増えないため、通常はかゆみを伴いません。
- かゆみは夜間や体が温まったときに強まりやすく、搔き壊しによる皮膚損傷や感染、不眠の原因になります。
閉塞性黄疸では、かゆみ以外にも次の所見がそろいやすくなります。
- 灰白色便:胆汁が腸管に届かないため、便に色がつかなくなります。
- 褐色尿:水溶性の直接ビリルビンが尿中に出るためです(ビリルビン尿)。腸管にビリルビンが届かないので、尿中ウロビリノゲンは減少〜陰性になります。
- 出血傾向:胆汁酸が腸に届かないと、脂溶性ビタミンの吸収が低下してビタミンKが不足します。その結果、ビタミンK依存性の凝固因子(第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子)がつくられにくくなり、プロトロンビン時間が延長します。
- 脂肪便:脂肪の消化・吸収が障害されるためです。
看護への応用
かゆみへの援助は、黄疸のある患者の看護としてよく問われます。
- 爪を短く切り、搔破による皮膚損傷を防ぎます。
- ぬるめの湯と刺激の少ない洗浄剤を使い、こすらずに洗って皮膚を清潔に保ちます。入浴後は保湿します。
- 綿など刺激の少ない衣類を選び、室温や寝具を暖めすぎないようにします。
- 冷罨法や気分転換を取り入れます。
- 必要に応じて、医師の指示で止痒薬を用います。
あわせて、便・尿の色や出血傾向を観察します。出血傾向がある場合は、搔き傷からの出血や採血後の止血にも注意します。閉塞性黄疸の患者に、悪寒を伴う発熱や右上腹部痛が加わった場合は、急性胆管炎を疑います。発熱・黄疸・右上腹部痛はシャルコーの3徴と呼ばれ、この場合は速やかに報告します。
選択肢の確認
1.動悸:心臓の拍動を不快に自覚する症状で、主な原因は貧血、不整脈、甲状腺機能亢進症、発熱、不安などです。ビリルビンや胆汁酸の増加によって起こる症状ではありません。溶血性貧血では黄疸と同時にみられることがあります。しかしそれは、赤血球の減少(貧血)を補うための代償的な頻脈によるもので、黄疸そのものの随伴症状ではありません。
2.難聴:聴覚の障害は、中耳炎、メニエール病、加齢、アミノグリコシド系抗菌薬などの薬剤によって起こるもので、成人の黄疸に伴う症状ではありません。一方、新生児では、高度の高ビリルビン血症によって核黄疸(ビリルビン脳症)が起こると、後遺症として聴覚障害が残ることがあります。新生児は血液脳関門が未熟で、アルブミンと結合していない間接ビリルビン(アンバウンドビリルビン)が大脳基底核などに沈着しやすいためです。問題文の「成人」という限定は、この新生児の知識と取り違えないための条件と読み取れます。
3.関節痛:関節の痛みは、関節リウマチ、痛風、変形性関節症、全身性エリテマトーデスなどでみられる症状で、ビリルビンや胆汁酸の増加によって起こるものではありません。急性ウイルス性肝炎では、黄疸が現れる前の前駆期に、発熱や全身倦怠感、食欲不振とともに関節の痛みがみられることがあります。しかしそれは肝炎による全身症状であり、黄疸に伴う症状ではありません。
4.搔痒感:正答。胆汁うっ滞によって胆汁酸などの起痒物質が血中や皮膚に増え、皮膚の神経終末を刺激してかゆみを生じます。溶血性黄疸では通常みられないため、すべての黄疸に共通するわけではありません。しかし、閉塞性黄疸をはじめ、胆汁うっ滞を伴う黄疸の代表的な随伴症状です。選択肢1と選択肢3は、原因疾患の別の側面(貧血や肝炎の全身症状)による症状です。選択肢2は、新生児の核黄疸と結びつく知識です。胆汁うっ滞という黄疸のしくみから直接説明できるのは、この選択肢だけです。かゆみは夜間に強まりやすいため、搔破による皮膚損傷や不眠を防ぐ看護が必要になります。
覚えるポイント
- 黄疸は血中ビリルビンの増加による黄染です。血清総ビリルビン値がおおむね2〜3 mg/dLを超えると肉眼で分かり、眼球結膜から気づきやすくなります。柑皮症(みかんなどの摂りすぎ)では皮膚は黄色くなりますが、眼球結膜は黄染しません。
- 閉塞性黄疸の所見は、黄染、皮膚のかゆみ、灰白色便、褐色尿(ビリルビン尿)、尿中ウロビリノゲンの減少です。ビタミンKの吸収低下による出血傾向もセットで覚えます。
- かゆみの原因は胆汁うっ滞(胆汁酸など)です。溶血性黄疸は間接ビリルビン優位で、胆汁への排泄が保たれます。そのため通常はかゆみを伴わず、尿中ウロビリノゲンが増えます。
- かゆみへの看護の基本は、爪を短く切ること、ぬるめの湯での清潔と保湿、綿の衣類、暖めすぎないこと、冷罨法です。
- 新生児の核黄疸の後遺症(聴覚障害、アテトーゼ型脳性麻痺など)と、成人の黄疸の症状を区別して覚えます。
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