111AM012|第111回 看護師国家試験 過去問

有害物質を無毒化し排泄する臓器はどれか。

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正解: 2

正答

2.肝臓

この問題のポイント

体内に入った薬物やアルコール、代謝の過程で生じるアンモニアなどの有害物質を化学的に処理し、排泄しやすい形に変える臓器を問う問題です。手がかりは「無毒化」と「排泄」の2語です。物質の化学構造を変えて毒性を下げ、水に溶けやすくして胆汁や尿から体外へ出す働き(解毒)を担うのは肝臓です。消化器系の各臓器の主な働きを区別できるかが問われています。

解説

肝臓が解毒の中心になる理由

胃・小腸・結腸の静脈血は門脈に集まり、肝臓へ流れ込みます。このため、これらの臓器から吸収された糖質・アミノ酸などの水溶性の物質や多くの内服薬は、全身の循環に出る前にまず肝臓を通ります。肝臓は、消化管から入った物質の多くにとって「関所」の位置にあります。門脈血に混じる細菌などの異物はクッパー細胞(肝臓のマクロファージ)が貪食し、化学物質は肝細胞が処理します。内服薬が全身循環に入る前に主に肝臓で代謝され、全身に届く量が減る現象を初回通過効果といいます。同じ薬でも内服と静脈内投与で投与量が異なることがあるのは、これが理由の一つです。

ただし、吸収されたものがすべて最初に肝臓を通るわけではありません。

  • 長鎖脂肪酸などの脂質は、小腸上皮細胞で中性脂肪に再合成されてカイロミクロンとなり、リンパ管(乳び管)に入ります。胸管を経て左静脈角で静脈に合流するため、門脈を通らずに体循環へ入ります。脂溶性ビタミンも同じ経路で運ばれます。
  • 舌下の粘膜から吸収された薬物は、門脈を経ずに体循環へ入ります。直腸下部から吸収された薬物も、中・下直腸静脈から内腸骨静脈を経て下大静脈へ入り、門脈を通りません(直腸上部の血液は上直腸静脈から下腸間膜静脈を経て門脈へ入ります)。このため、舌下錠や坐薬は初回通過効果を受けにくくなります。ニトログリセリン舌下錠は、飲み込むと門脈を経て初回通過効果を受け効果が弱まるため、飲み込まずに舌下で溶かすよう説明します。

解毒の仕組みと代表例

肝細胞での薬物・異物の処理は、大きく2段階に分けられます。

  • 第Ⅰ相反応:シトクロムP450などの薬物代謝酵素による酸化・還元・加水分解
  • 第Ⅱ相反応:グルクロン酸・硫酸・グルタチオンなどとの抱合で、水溶性が高まります

水溶性になった物質は、胆汁に混じって十二指腸へ出て便とともに排泄されるか、血液を介して腎臓から尿中に排泄されます。問題文の「無毒化し排泄する」は、この一連の流れを指しています。肝臓で処理される代表的な物質は次のとおりです。

  • アンモニア:アミノ酸の分解や腸内細菌の働きで生じる有毒物質です。肝臓の**尿素回路(オルニチン回路)**で毒性の低い尿素に変えられ、腎臓から尿中に排泄されます。
  • ビリルビン:古くなった赤血球のヘモグロビンから生じる間接(非抱合型)ビリルビンは脂溶性です。肝臓でグルクロン酸抱合を受けて水溶性の直接(抱合型)ビリルビンとなり、胆汁中に排泄されます。
  • アルコール:エタノールはアルコール脱水素酵素でアセトアルデヒドに、さらにアルデヒド脱水素酵素で酢酸に分解され、最終的に二酸化炭素と水になります。中間産物のアセトアルデヒドは毒性が強く、顔面紅潮・悪心・頭痛の原因になります。

臨床での意味と他の臓器との区別

肝機能が低下するとこの処理が滞ります。アンモニアが血中に蓄積すると肝性脳症を起こし、意識障害や羽ばたき振戦がみられます。ビリルビンを処理しきれなければ黄疸が出ます。薬物の代謝も遅れて作用が強く長く出やすくなるため、肝障害のある患者や、加齢により肝血流量が減って薬物代謝が低下しやすい高齢者では、薬の副作用や過鎮静に注意して観察します。

胃は食物の貯留と消化、膵臓は消化酵素とホルモンの分泌、大腸は水分の吸収と便の形成が主な働きです。胃酸の殺菌作用や大腸からの便の排出を「無毒化」「排泄」と結び付けて迷わないよう、「化学的に処理して無毒化する臓器は肝臓」と整理しておきましょう。なお、腎臓も排泄の主要臓器ですが、水溶性の物質を尿中に出すことが中心です。脂溶性の物質を水溶性に変える処理の中心は肝臓です。

選択肢の確認

1.胃:食物を一時的にためて消化を始める臓器で、壁細胞から塩酸と内因子、主細胞からペプシノゲンが分泌されます。塩酸には食物とともに入った細菌を殺す作用があり、生体防御に役立ちますが、これは消化管の内腔での殺菌です。吸収された有害物質を化学的に処理して無毒化し、排泄に回す臓器ではありません。「塩酸を分泌する臓器」や「ビタミンB12の吸収に必要な内因子を分泌する臓器」として問われたときに選ぶ臓器です。

2.肝臓:正答。門脈や肝動脈から流れ込む血液中の薬物や有害物質を、薬物代謝酵素による酸化などの反応と抱合によって水溶性の形に変え、胆汁や尿を通じて排泄できるようにします。アンモニアを尿素に変える尿素回路、ビリルビンのグルクロン酸抱合、アルコールの分解も、この臓器の肝細胞で行われます。選択肢のうち、問題文の「無毒化」と「排泄」の両方にあてはまるのはこの臓器だけです。

3.膵臓:消化酵素を含む膵液を十二指腸へ分泌する外分泌と、血糖を調節するホルモンを分泌する内分泌の両方を担う臓器です。膵液にはアミラーゼ・リパーゼ・トリプシノゲンなどの消化酵素と、酸性の消化液を中和する重炭酸イオンが含まれます。内分泌としては、ランゲルハンス島のα細胞からグルカゴン、β細胞からインスリンが分泌されます。有害物質を化学的に無毒化して排泄する働きは担っていません。「消化酵素を分泌する臓器」や「血糖を調節するホルモンを分泌する臓器」として問われたときに選ぶ臓器です。

4.大腸:水分と電解質を吸収して便を形成し、排出する器官です。便を出すことは排泄にあたりますが、有害物質を化学的に処理して無毒化する働きはありません。むしろ、腸内細菌がたんぱく質などを分解してアンモニアを産生する場です。肝性脳症の患者で便秘を避けたり、ラクツロースを用いたりするのは、ここで生じるアンモニアの吸収を減らすためです。

覚えるポイント

  • 解毒(有害物質の無毒化)の中心は肝臓です。第Ⅰ相(酸化・還元・加水分解)と第Ⅱ相(抱合)で水溶性にし、胆汁や尿から排泄します。
  • 胃・小腸・結腸から吸収された糖質・アミノ酸や多くの内服薬は、門脈を経てまず肝臓へ運ばれます。そのため内服薬は初回通過効果を受けます。例外として、長鎖脂肪酸などの脂質はカイロミクロンとしてリンパ管(乳び管→胸管→左静脈角)から体循環に入ります。舌下錠や坐薬(直腸下部から吸収)は門脈を経ないため、初回通過効果を受けにくくなります。
  • アンモニアは肝臓の尿素回路で尿素になり、尿中へ排泄されます。肝機能が低下すると高アンモニア血症から肝性脳症(意識障害、羽ばたき振戦)を起こします。
  • 間接ビリルビン(脂溶性)は肝臓でグルクロン酸抱合を受けて直接ビリルビン(水溶性)となり、胆汁中へ排泄されます。
  • 肝臓のその他の働きとして、アルブミンや凝固因子の合成、グリコーゲンの合成と貯蔵、胆汁の生成、ホルモンの不活化も押さえます。
  • 臓器ごとの主な働きは、胃が塩酸・ペプシノゲン・内因子の分泌、膵臓が消化酵素とインスリン・グルカゴンの分泌、大腸が水分吸収と便の形成です。

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