112PM016|第112回 看護師国家試験 過去問

モルヒネの副作用(有害事象)はどれか。

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正解: 3

正答

3.便秘

この問題のポイント

医療用麻薬であるモルヒネの代表的な副作用を問う問題です。モルヒネはμ(ミュー)オピオイド受容体に作用する薬で、この受容体は脳だけでなく消化管にも分布しています。このことを知っていれば、腸の動きが抑えられて起こる便秘を選べます。ほかの選択肢は抗凝固薬、抗菌薬、抗がん薬など別の薬の代表的な副作用であり、「薬と副作用の組合せ」を区別できるかが問われています。

解説

モルヒネの作用と副作用の考え方

モルヒネは強オピオイドに分類される鎮痛薬で、がん性疼痛の治療の中心となる医療用麻薬です。主にμオピオイド受容体を刺激して鎮痛効果を示します。この受容体は、痛みの伝達に関わる部位のほかにも、延髄の呼吸中枢、嘔吐に関わる化学受容器引き金帯(CTZ)、大脳、消化管、膀胱などに広く分布しています。そのため副作用は「受容体がどこにあり、そこで何が起こるか」から理解すると覚えやすくなります。

なお、「有害事象」は因果関係を問わず、薬の使用中に生じた好ましくない事象全般を指す言葉です。本問では、ほぼ副作用と同じ意味で使われています。

主な副作用と機序

  • 便秘:腸管の神経叢にあるμ受容体を介してアセチルコリンの遊離が抑えられ、蠕動運動が低下します。腸液の分泌も減ります。腸の内容物がとどまる時間が長くなるので水分がより多く吸収され、便が硬くなります。さらに肛門括約筋の緊張が高まり、排便しにくくなります。出現頻度が最も高く、耐性がほとんど生じないため、投与を続けるかぎり持続します。
  • 悪心・嘔吐:CTZへの刺激、前庭器の感受性の亢進(体動時に悪化しやすい)、胃内容の排出の遅れによって起こります。投与開始時や増量時に多く、多くは数日から1〜2週間程度で耐性が生じて軽くなります。
  • 眠気:これも耐性が生じやすい副作用です。強い眠気が続く場合は、過量のサインとして評価します。
  • 呼吸抑制:延髄の呼吸中枢で二酸化炭素に対する反応が鈍くなり、呼吸数が減ります。痛みに合わせて適切に増量していれば起こりにくいとされます。一方、過量投与、腎機能低下(活性代謝物のモルヒネ-6-グルクロニドが蓄積する)、ほかの中枢抑制薬の併用で起こりやすくなります。通常は眠気が先に現れます。拮抗薬はナロキソンですが、モルヒネより作用時間が短いため、投与後に呼吸抑制が再び現れないか観察を続けます。
  • その他:尿閉などの排尿障害、せん妄、瘙痒感、口渇、縮瞳などがあります。

看護実践での生かし方

便秘には耐性ができないため、症状が出てから対処するのではなく、投与開始と同時に下剤を予防的に併用するのが原則です。用いる下剤は次のとおりです。

  • 浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど。腎機能低下時は高マグネシウム血症に注意)
  • 大腸刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートなど)
  • 末梢性μオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジン(脳へ移行しにくく、鎮痛効果を妨げずに腸管の作用だけを打ち消す)

看護師は、排便の回数と便の性状、腹部膨満、腸蠕動音、食事や水分の摂取量を毎日確認します。あわせて、水分や食物繊維の摂取、可能な範囲での活動、排便習慣を整える援助を行います。何日も排便がなく腹痛や嘔吐を伴う場合は、腸閉塞も念頭に置いて医師に報告します。

悪心には開始初期に制吐薬を用い、呼吸数・意識レベル・瞳孔を観察して過量の徴候を早くとらえます。また、「麻薬は中毒になる」「最期に使う薬だ」という不安をもつ患者や家族は少なくありません。痛みに対して適切に使えば精神依存は起こりにくいことを説明し、安心して鎮痛を続けられるよう支えることも大切な役割です。

選択肢の確認

1.出血:モルヒネは血液凝固因子や血小板の機能を障害しないため、血が止まりにくくなる作用は代表的な副作用に含まれません。この種の有害事象を起こしやすいのは、ワルファリンやヘパリンなどの抗凝固薬、アスピリンなどの抗血小板薬、血栓溶解薬です。同じ鎮痛薬でも非オピオイドのNSAIDsは、プロスタグランジンの産生を抑えて胃粘膜の防御を弱めるため、消化性潰瘍(吐血や下血)の原因になります。オピオイドとNSAIDsの副作用を取り違えないようにしましょう。

2.難聴:聴力障害(第8脳神経障害)を起こす代表的な薬は、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗菌薬です。ほかに、ループ利尿薬のフロセミド、抗がん薬のシスプラチン、大量投与時のアスピリン(耳鳴)も知られています。モルヒネの代表的な副作用には含まれないため、該当しません。

3.便秘:正答。モルヒネは腸管のμオピオイド受容体を介して蠕動運動と腸液の分泌を抑え、肛門括約筋の緊張を高めるため、排便が滞ります。オピオイドの副作用の中で最も頻度が高く、悪心や眠気と違って耐性がほとんど生じません。そのため、投与開始時から下剤を予防的に併用し、排便状況を継続して観察します。

4.骨髄抑制:白血球(特に好中球)、赤血球、血小板が減少する造血機能の障害は、分裂の盛んな細胞を傷害する細胞傷害性抗がん薬の代表的な副作用です。多くの薬剤で投与後1〜2週間前後に最低値(ナディア)を迎えます。ほかにメトトレキサートや一部の免疫抑制薬、クロラムフェニコール(再生不良性貧血)でも注意が必要です。モルヒネはがん患者に使われることが多いため抗がん薬の副作用と混同しやすいのですが、モルヒネ自体に造血を抑える作用はありません。

覚えるポイント

  • モルヒネ(オピオイド)の三大副作用は便秘・悪心嘔吐・眠気です。重大な副作用は呼吸抑制で、拮抗薬はナロキソンです。
  • 悪心・眠気は数日から1〜2週間程度で耐性が生じますが、便秘は耐性がほとんど生じないため、開始時から下剤を予防的に併用します。
  • 便秘の機序は、蠕動運動の低下、腸液分泌の減少、水分吸収の増加、肛門括約筋の緊張亢進です。ナルデメジンは末梢のμ受容体だけを遮断し、鎮痛効果を保ちます。
  • 呼吸抑制のリスクは、過量投与、腎機能低下(活性代謝物の蓄積)、中枢抑制薬の併用で高まります。呼吸数・意識レベル・縮瞳を観察し、眠気の増強を前ぶれとしてとらえます。
  • 薬と副作用の組合せも覚えておきましょう。聴力障害はアミノグリコシド系抗菌薬・ループ利尿薬・シスプラチン、骨髄抑制は抗がん薬、出血は抗凝固薬・抗血小板薬、消化性潰瘍はNSAIDsです。

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