111AM011|第111回 看護師国家試験 過去問
右大腿骨前面を図に示す。大腿骨頸部はどれか。

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正解: 3
正答
3.③
この問題のポイント
大腿骨の上端(近位部)にある骨頭・頸部・大転子・小転子を図で見分ける問題です。最初の手がかりは「右大腿骨」「前面」という条件です。ここから、図の向かって右が内側(体の正中側)、向かって左が外側だと決まります。あとは「内側上方の球が骨頭、その根元のくびれが頸部、外側上方の大きな突起が大転子、内側下方の小さな突起が小転子」という位置関係で判断します。頸部は高齢者が転倒したときに骨折しやすい部位なので、名称と位置を骨折の特徴と結びつけて覚えましょう。
解説
図の向きを確かめる
図は縦長の骨です。上端に円形の部分と大きな突起があり、下端は幅の広い膝関節側の端です。上が近位(股関節側)、下が遠位(膝関節側)になります。
左右は次のように考えます。右脚を正面から見ると、その人の右半身は見ている側の左に、体の正中は見ている側の右にあります。このため、この図では向かって右が内側、向かって左が外側です。大腿骨頭は骨盤の寛骨臼に向かって内側上方へ突き出しています。そのため右大腿骨を前から見た図では骨頭が向かって右上に描かれ、この図の形と一致します。左大腿骨の前面や右大腿骨の後面の図なら、骨頭は向かって左に来ます。どの向きで出題されても、まず球形の骨頭を見つければ、残りの部位は骨頭との位置関係で決められます。
大腿骨近位部の構造と図の対応
大腿骨は人体で最も長い骨で、上端は次の部分からなります。
- 大腿骨頭:球状の関節面で、寛骨臼にはまって股関節をつくります。股関節は受け皿の深い球関節(臼状関節)で、体重を支えながら多方向に動きます。
- 大腿骨頸部:骨頭と骨幹部をつなぐ細くくびれた部分です。骨幹から内上方へ斜めに伸びて骨頭を支えます。
- 大転子:頸部の外側で上方へ大きく張り出す突起です。股関節を外転させる中殿筋・小殿筋などが付着し、太ももの付け根の外側で体表から触れることができます。
- 小転子:頸部と骨幹部の境目付近から後内側へ突き出す小さな突起で、股関節を屈曲させる腸腰筋が付着します。
- 大転子と小転子の間は、前面では転子間線、後面では転子間稜で結ばれています。この一帯を転子部と呼びます。
図では、番号から伸びる引き出し線の先の黒い点で部位が示されています。
- ①は向かって左上で外側へ大きく張り出した部分を指しており、大転子です。
- ②は向かって右上の円形の部分を指しており、大腿骨頭です。
- ③は円形の骨頭の輪郭のすぐ下を指しています。骨頭と大転子・骨幹部の間で輪郭が細くくびれた部分で、ここが大腿骨頸部です。
- ④は③より下で、内側(向かって右)の輪郭が小さく膨らんだところを指しており、小転子です。
よって正答は③です。骨頭と頸部は隣り合っているため、「球そのもの=骨頭」「球を支える首の部分=頸部」と区別して読み取りましょう。
臨床とのつながり
頸部は骨幹に対して角度をつけて骨頭を支えているため、体重や転倒の衝撃による力が集中しやすい部位です。骨粗鬆症で骨がもろくなった高齢者、とくに女性が、横向きに転倒して腰の外側(大転子のあたり)を打ったときに起こりやすい骨折です。大腿骨近位部骨折は、脊椎椎体骨折、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折とともに、高齢者に多い骨折の代表です。寝たきりや要介護状態のきっかけにもなりやすく、国民生活基礎調査でも「骨折・転倒」は介護が必要になった主な原因の一つに挙がっています。
大腿骨近位部の骨折は、次の2つに大きく分けられます。以前は内側骨折・外側骨折とも呼ばれていました。
- 頸部骨折:関節包の内側で起こる骨折(関節包内骨折)
- 転子部骨折:関節包の外側で起こる骨折(関節包外骨折)
頸部骨折は治りにくく、次の合併症が問題になります。
- 骨頭へ向かう主な血管(内側大腿回旋動脈の枝など)は、関節包の付着部付近から頸部の表面に沿って上り、骨頭に入ります。頸部で骨がずれるとこの血流が断たれ、大腿骨頭壊死を起こしやすくなります。
- 関節包の内側にある頸部では、骨膜による仮骨形成があまり期待できません。骨折部が関節液にさらされることもあり、骨がつかない偽関節になりやすくなります。
一方、転子部は海綿骨が多く血流も豊富なので骨がつきやすい反面、出血量が多くなりやすい部位です。
症状は、転倒後の股関節部の痛み、立ち上がれない・歩けないこと、患肢が短くなり外側へねじれた位置(短縮・外旋位)をとることです。ずれの小さい骨折では歩けることもあるため、見逃さないよう注意します。
高齢者では、長く寝たままでいることで起こる廃用症候群、肺炎、深部静脈血栓症、褥瘡、せん妄を防ぐため、手術をして早く離床させるのが原則です。
- 頸部骨折:ずれが小さければ骨接合術、ずれの大きい高齢者では人工骨頭置換術が選ばれることが多いです。
- 転子部骨折:骨接合術が中心です。
人工骨頭置換術の後は脱臼に注意します。後方から進入した場合は、股関節の屈曲・内転・内旋が重なる姿勢(深くしゃがむ、横座り、脚を組むなど)を避けるよう指導します。術後早期には、外転枕などで下肢を軽く開いた位置に保つこともあります。
また、体表から触れる大転子は、側臥位で体圧が集中するため褥瘡の好発部位です。中殿筋への筋肉内注射の部位を決めるホッホシュテッターの部位でも、手のひらを大転子に当てて位置を決めます。
選択肢の確認
1.①:図の向かって左上で外側上方へ大きく張り出した部分を指しており、これは大転子です。右大腿骨を前から見た図では向かって左が外側なので、外側の最も大きな突起が大転子になります。頸部は大転子と骨頭の間のくびれで、大転子そのものではありません。また、大転子と小転子の間で起こる骨折は転子部骨折と呼ばれます。頸部骨折とは骨のつきやすさも主な治療法も違うので、混同しないようにします。
2.②:図の向かって右上の円形の部分を指しており、これは大腿骨頭です。寛骨臼にはまり込んで股関節をつくる球状の関節面で、右大腿骨の前面では内側上方にあります。頸部はこの球のすぐ下にあって取り違えやすいのですが、球そのものが骨頭、球を支える首の部分が頸部です。
3.③:正答。骨頭(選択肢2の部分)のすぐ下で、骨頭を大転子や骨幹部へつなぐ細くくびれた部分を指しており、これが大腿骨頸部です。頸部の大部分は股関節の関節包の内側にあり、骨頭を養う血管が頸部に沿って走っています。そのため、ここで骨折すると大腿骨頭壊死や偽関節を起こしやすくなります。
4.④:頸部より下で、内側の輪郭が小さく膨らんだ部分を指しており、これは小転子です。小転子は大腿骨の後内側に突き出しているため、前から見ると内側の縁にわずかに見える程度に描かれます。股関節を屈曲させる腸腰筋が付着する部位です。頸部に近い位置にありますが、頸部はこれより上の、骨頭の根元のくびれです。
覚えるポイント
- 大腿骨近位部は「内側上方の球=骨頭」「その根元のくびれ=頸部」「外側上方の大きな突起=大転子」「内側下方の小さな突起=小転子」と覚えます。
- 骨頭は必ず内側(寛骨臼側)を向きます。右の骨を前から見ると向かって右が内側です。左の骨を前から見たとき、右の骨を後ろから見たときは向かって左が内側です。
- 付着する筋は、大転子が中殿筋・小殿筋など(股関節の外転)、小転子が腸腰筋(股関節の屈曲)です。
- 頸部骨折は関節包内骨折で、骨頭への血流が断たれやすく、大腿骨頭壊死・偽関節を起こしやすくなります。転子部骨折は関節包外骨折で、骨がつきやすい一方、出血が多くなりやすい骨折です。
- 高齢者が転倒した後に、股関節部の痛み、立ち上がれない、患肢の短縮と外旋があれば大腿骨近位部骨折を疑います。治療は早期手術・早期離床が原則です。人工骨頭置換術の後(後方から進入した場合)は、屈曲・内転・内旋が重なる姿勢を避けます。
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