111AM019|第111回 看護師国家試験 過去問
高齢者の義歯の取り扱い方法で正しいのはどれか。
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正解: 1
正答
1.就寝時に外す。
この問題のポイント
高齢者の口腔ケアのうち、義歯(入れ歯)の基本的な取り扱いを問う問題です。義歯の管理は、次の3つの目的から考えると、各選択肢の正誤を根拠をもって判断できます。
- 粘膜を休ませる
- 材料(レジン)を変形・破損させない
- 義歯と口腔を清潔に保つ
着脱の手順(どこを持ち、どの順に外すか)も、あわせて問われやすい知識です。
解説
就寝時に外す理由
義歯の床(歯ぐきに当たるピンク色の部分)は、日中、咀嚼の圧を顎堤の粘膜に伝えています。装着したまま眠ると、粘膜が圧迫され続けて血流が低下し、粘膜が回復する時間がなくなります。その結果、次のような病変を起こしやすくなります。
- 義歯性潰瘍(褥瘡性潰瘍)
- カンジダなどの真菌が関与する義歯性口内炎
また、就寝中は唾液の分泌が減り、口腔の自浄作用が低下します。そのため義歯の表面や粘膜面に付着した細菌の塊(デンチャープラーク)が増えやすくなります。これを含む唾液を眠っている間に不顕性誤嚥すると、誤嚥性肺炎の原因になります。高齢者を対象とした研究でも、義歯を装着したまま眠る習慣と肺炎の発症リスク上昇との関連が報告されています。
そのため、就寝前に義歯を外し、義歯と口腔内(残存歯・粘膜・舌)の両方を清掃して粘膜を休ませるのが原則です。ただし、歯科医師が個別に夜間装着を指示している場合は、その指示に従います。例として、残っている歯が対向する粘膜を傷つける場合などがあります。
義歯の材料と洗浄・保管
義歯床の多くは、アクリルレジンという合成樹脂で作られています。レジンには次の性質があります。
- 熱に弱く、高温で変形する
- 乾燥すると変形やひび割れを起こす
- 研磨剤で表面に細かい傷がつく
この性質から、次のような管理が導かれます。
- 洗浄は流水下で、義歯用ブラシを用いて機械的に汚れを落とします。お湯を使う場合はぬるま湯までとし、熱湯は使いません。
- 研磨剤を含む歯磨剤は表面に傷をつけ、その傷に細菌が付着しやすくなるので使いません。
- 義歯洗浄剤への浸漬は化学的な清掃として有効ですが、ブラシによる清掃の代わりにはならず、両者を併用します。
- 保管は、水または義歯洗浄剤の溶液に浸し、ふた付きの専用容器で行います。
- 洗うときは洗面器に水を張るなどして、手から落としても割れないようにします。
着脱の手順と観察
総義歯は、床と粘膜の間の陰圧(吸着)で口の中に保持されています。外す手順は次のとおりです。
- 前歯部をつまんで持ち、そこを起点に義歯の後方(奥歯側)に空気を入れるように傾けて吸着を解きます。
- 上顎の総義歯は奥を下げるように、下顎の総義歯は奥を持ち上げるように動かします。
- 吸着が解けたら、義歯を回転させながら、口角を傷つけないように取り出します。
上下とも総義歯の場合は、外すときは下顎から、装着するときは上顎から行うのが一般的です。部分床義歯は、人工歯をつまんで引っ張らず、クラスプ(留め金)に爪をかけて左右均等に外します。
高齢者では、体重減少や顎堤の吸収によって義歯が合わなくなることがよくあります。外したときには、粘膜の発赤・潰瘍、義歯の破損や適合不良を観察し、必要に応じて歯科受診につなげることも看護師の大切な役割です。
選択肢の確認
1.就寝時に外す。:正答。就寝中に外すことで顎堤粘膜の圧迫を解いて休ませ、義歯性潰瘍や義歯性口内炎を防ぎます。唾液が減る夜間に義歯表面で細菌が増えるのを防ぐため、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。外したときに義歯と口腔内の両方を清掃し、粘膜の状態を観察する機会にもなります。
2.熱湯で洗浄する。:義歯床のアクリルレジンは熱に弱く、熱湯に触れると変形して適合が悪くなるため、洗浄は水かぬるま湯で行います。食器や医療器具の熱湯消毒と同じように考えて取り違えやすい選択肢です。変形した義歯は粘膜を傷つけたり外れやすくなったりします。除菌を目的とする場合は、熱ではなく義歯洗浄剤を用います。
3.保管時は乾燥させる。:レジンは乾燥すると変形やひび割れを起こすため、外した義歯は水または義歯洗浄剤の溶液に浸して保管します。ティッシュペーパーに包んで置くと、乾燥に加えて、誤って捨ててしまう紛失事故の原因にもなります。ふた付きの専用容器に入れ、保管場所を決めておきます。
4.総義歯は奥歯を起点に外す。:総義歯は前歯部をつまんで持ち、そこを起点に後方へ空気を入れて吸着を解いてから外すため、この記述は手順と逆です。奥歯側から指を入れて外そうとすると、吸着が解けにくく、しっかり把持しにくくなります。さらに、口の奥に指を入れることで咽頭反射(嘔吐反射)を誘発しやすくなります。「持つのは前歯部、空気を入れるのは奥側」と整理すると混同を防げます。
覚えるポイント
- 義歯は原則として就寝時に外し、粘膜を休ませます。義歯性潰瘍・義歯性口内炎・誤嚥性肺炎の予防が目的です。
- 洗浄は流水下で義歯用ブラシを使います。熱湯と研磨剤入りの歯磨剤は使いません。義歯洗浄剤はブラシ清掃と併用します。
- 保管は水または義歯洗浄剤に浸して行います。乾燥は変形・ひび割れの原因です。ティッシュに包むのは紛失事故のもとです。
- 総義歯は前歯部を持ち、後方に空気を入れて吸着を解いて外します。上下とも総義歯なら、外すのは下顎から、入れるのは上顎からです。
- 部分床義歯はクラスプに爪をかけて外し、人工歯をつまんで引っ張りません。
- 義歯を外したら口腔内(残存歯・粘膜・舌)も清掃し、発赤・潰瘍・適合不良を観察します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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