111PM019|第111回 看護師国家試験 過去問
大腸の狭窄による便秘はどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.器質性便秘
この問題のポイント
便秘の原因が「腸管の形や通り道の異常」なのか、「腸の働きの異常」なのかを区別できるかを問う問題です。手がかりは問題文の「狭窄」という言葉で、これは腸管そのものの構造に変化があることを示します。形の異常による便秘は器質性便秘、形に異常がなく腸の運動や反射の乱れによる便秘は機能性便秘です。選択肢2〜4はいずれも機能性便秘の下位分類です。
解説
手がかりは「狭窄」
狭窄とは、腫瘍、炎症後の瘢痕、癒着、外部からの圧迫などで管腔が物理的に狭くなった状態です。大腸が狭くなると、腸が正常に動いていても便は通過できません。原因は腸の「働き」ではなく「形(構造)」にあり、これを器質的な原因といいます。
便秘の分類
看護師国家試験で基本となる分類は次のとおりです。
- 器質性便秘:腸管の形態的な異常によって便の通過が妨げられるものです。原因には、大腸癌、クローン病や虚血性大腸炎による狭窄、開腹手術後の癒着、子宮筋腫や卵巣腫瘍など腸管外からの圧迫、ヒルシュスプルング病などの先天的な異常があります。
- 機能性便秘:腸管に形態的な異常はなく、腸の運動や排便反射の乱れで起こるものです。一過性(急性)のものと慢性のものがあり、慢性の機能性便秘がさらに次の3型に分けられます。
- 弛緩性(弛緩型)便秘:大腸の緊張と蠕動運動が低下し、便が長く大腸にとどまります。その間に水分が吸収されるため、便は硬く太くなります。高齢者、長期臥床、運動不足、腹筋力の低下、食物繊維の不足などが背景となり、機能性便秘の中でも多くみられる型です。
- 痙攣性(痙攣型)便秘:ストレスなどによって自律神経のバランスが乱れ(副交感神経の過緊張)、大腸が部分的に痙攣性に収縮して便の通過が妨げられます。兎糞状(コロコロした)の便、下腹部痛、残便感が特徴で、便秘と下痢を繰り返すこともあります。便秘型の過敏性腸症候群でみられます。
- 直腸性便秘:便が直腸に達しても排便反射が起こりにくく、便意を感じにくくなるものです。便意の我慢を繰り返す習慣、浣腸や下剤の乱用、寝たきりや加齢による直腸の感受性低下が原因で、習慣性便秘とも呼ばれます。
慢性便秘症の診療ガイドライン(2017年)でも、原因による分類として器質性と機能性を分けています。器質性はさらに狭窄性と非狭窄性に分けられ、大腸の狭窄による便秘は「器質性・狭窄性」に位置づけられます。
臨床での意味
便秘への対応では、まず器質性便秘を見逃さないことが大切です。大腸癌などで狭窄が進むと、次のような徴候がみられることがあります。
- 便が細くなる
- 血便がある
- 体重が減少する
- 短期間に便通が変化する
- 腹部膨満や腹痛が強い
- 便秘と下痢を繰り返す
こうした警告徴候があれば、大腸内視鏡などによる精査が優先されます。器質性便秘の治療は原因疾患への対応(手術など)が中心で、下剤による排便コントロールだけでは解決しません。狭窄が高度で腸閉塞が疑われる場合には、刺激性下剤は蠕動を強めて腹痛の増悪や穿孔を招くおそれがあるため使用しません。看護師は排便回数だけでなく、便の太さ、血液の付着、腹部症状の変化まで観察し、異常があれば報告につなげます。
一方、機能性便秘では型に応じた生活援助が中心になります。
- 弛緩性:食物繊維と水分の摂取、適度な運動、腹部マッサージや温罨法で蠕動を促します。
- 痙攣性:ストレスの軽減を図ります。腸を刺激する香辛料や、不溶性食物繊維のとりすぎは控えます。
- 直腸性:便意を我慢せず、朝食後の胃結腸反射を活かして決まった時間にトイレに行く習慣をつけます。
選択肢の確認
1.器質性便秘:正答。大腸癌、炎症性疾患による狭窄、術後の癒着、腸管外からの圧迫などで腸管の形態が変化し、便が物理的に通過できなくなる便秘です。大腸の狭窄は腸管の構造そのものの異常なので、ここに分類されます。腸の運動が正常でも起こり得る点が、機能性便秘との本質的な違いです。
2.痙攣型便秘:ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、大腸が部分的に強く収縮して便の通過が妨げられる機能性便秘です。一時的に通り道が狭くなるように見えますが、腸管の形に異常があるわけではなく、原因は腸の運動の乱れです。兎糞状の便と腹痛を伴い、過敏性腸症候群でみられます。「狭くなる」という印象から狭窄と取り違えやすいので注意します。
3.弛緩型便秘:大腸の緊張と蠕動運動が低下して便の通過に時間がかかる機能性便秘で、腸管の狭窄は伴いません。高齢者、長期臥床、運動不足、食物繊維の不足などで起こり、硬く太い便が特徴です。「腸の動きが弱いタイプ」と整理しておくと、他の型と区別しやすくなります。
4.直腸性便秘:直腸に便が届いても排便反射が起こりにくくなる機能性便秘で、原因は形の異常ではなく反射の鈍化です。便意を我慢する習慣、浣腸や下剤の乱用、寝たきりなどが背景にあり、習慣性便秘とも呼ばれます。排便習慣の確立が対応の中心になります。
覚えるポイント
- 便秘はまず器質性(腸管の形の異常)か機能性(腸の働きの異常)かに分けます。「狭窄」「閉塞」「癒着」「圧迫」「腫瘍」という言葉があれば器質性便秘です。
- 慢性の機能性便秘の3型は、弛緩性=蠕動低下(高齢者・長期臥床、硬く太い便)、痙攣性=部分的な過剰収縮(ストレス、兎糞状便と腹痛、過敏性腸症候群)、直腸性=排便反射の低下(便意の我慢・下剤乱用、習慣性便秘)です。
- 血便、便の狭小化、体重減少、急な便通の変化は器質性疾患(特に大腸癌)を疑う警告徴候で、精査が優先されます。
- 腸閉塞が疑われるときは刺激性下剤を使用しません。器質性便秘は原因疾患の治療が基本です。
- 型別の援助は、弛緩性=食物繊維・水分・運動・腹部マッサージ、痙攣性=ストレス軽減・刺激物を避ける、直腸性=便意を我慢しない・胃結腸反射を活かした排便習慣です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。