111PM020|第111回 看護師国家試験 過去問
左片麻痺患者の上衣の交換で適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.右腕から脱がせ、左腕から着せる。
この問題のポイント
片麻痺患者の更衣介助の原則である「脱健着患(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)」を問う問題です。まず問題文の「左片麻痺」から、健側が右、患側が左であることを確定します。そのうえで原則に当てはめれば正答が決まります。この順序が患側の関節を守るためのものだと理解しておくと、点滴中の患者の寝衣交換やズボンの着脱にも応用できます。
解説
問題文の手がかりは「左片麻痺」と「上衣の交換」の2点です。左片麻痺では左の上下肢に運動麻痺があるため、左側が患側、右側が健側になります。脳卒中では病変と反対側に麻痺が出るので、左片麻痺は右大脳半球の障害で起こることが多いと押さえておきましょう。
更衣の順序は、患側の腕をできるだけ動かさずに済むように決められています。
- 脱ぐとき(健側から):健側の腕は自分で肘を曲げたり肩を動かしたりできるので、袖から楽に抜けます。健側の袖が抜けると衣服全体にゆとりができ、患側の腕はほとんど動かさずに、衣服のほうをずらして抜くことができます。逆に患側から脱ごうとすると、ゆとりのない袖から動かない腕を引き抜くことになり、肩や肘を無理にねじったり引っ張ったりしてしまいます。
- 着るとき(患側から):衣服にいちばんゆとりがある最初の段階で患側の腕を袖に通せば、患側の関節を大きく動かさずに済みます。健側を先に通すと残りの袖に余裕がなくなり、患側の腕を後ろへ回すなど、大きく動かさなければ袖を通せなくなります。健側は関節可動域が保たれているので、後から通しても問題ありません。
麻痺側の上肢では、肩関節を支える筋の働きが弱まり、腕の重みや牽引によって肩関節亜脱臼が起こりやすくなります。感覚障害を伴うと痛みを訴えにくく、損傷に気づくのが遅れます。そのため、袖を通すときは次の点に注意します。
- 手先を引っ張らない。
- 介助者の手を袖口から入れて患者の手を迎えに行き、肘や前腕を下から支える。
- 腕を袖に押し込むのではなく、衣服のほうを腕に沿わせてたぐり寄せる。
実践では、前開きでゆとりのある衣服や伸縮性のある素材を選ぶと、患者の負担が減ります。自立支援の観点からは、健側の手でできる部分は本人に行ってもらいます。本人が自分で更衣する場合も順序は同じで、患側の袖を先に通し、健側の手で衣服を背中側へ回してから健側の袖を通します。座位で行うときは、座位が安定しているかを確認し、転倒を防ぎます。
右大脳半球の障害では、左半側空間無視や着衣失行を伴うことがあります。その場合、左側の袖に気づかなかったり、衣服の左右や裏表を取り違えたりします。左側へ注意を向ける声かけや、手順を単純にする工夫が役立ちます。
この原則は、動かしにくい側や保護すべき側がある場合全般に使えます。骨折や創傷のある側、拘縮のある側、点滴やルートが入っている側は、「患側」と同じように扱います。点滴中の寝衣交換では、次の順序になります。
- 脱ぐとき:点滴のない腕から脱がせ、点滴側はルートに沿って袖を抜き、輸液バッグを袖に通します。
- 着るとき:新しい寝衣の点滴側の袖に輸液バッグを先に通してから、腕を通します。
選択肢の確認
1.左腕から脱がせ、左腕から着せる。:着るときに患側の左腕から通す点は原則どおりですが、脱ぐときも左腕(患側)から始めています。この手順では、ゆとりのない袖から動かない腕を引き抜くことになり、麻痺側の肩に牽引やねじれが加わります。脱ぐときの順序が「脱健」に反しています。
2.左腕から脱がせ、右腕から着せる。:脱ぐときは患側から、着るときは健側からとなっており、「脱健着患」を完全に逆にした手順です。脱ぐときも着るときも、患側の腕を大きく動かさざるを得ない場面が生じます。麻痺側の肩関節亜脱臼や疼痛、皮膚損傷を招く危険があります。
3.右腕から脱がせ、左腕から着せる。:正答。健側である右腕から脱がせ、患側である左腕から着せる、「脱健着患」の原則どおりの手順です。脱ぐときは健側が抜けたあとのゆとりを使い、着るときは最初のゆとりを使って患側に袖を通すため、麻痺側の関節を無理に動かさずに済みます。
4.右腕から脱がせ、右腕から着せる。:脱ぐときに健側の右腕から始める点は正しいですが、着るときも右腕(健側)から通しています。この手順では、残った左袖にゆとりがなくなり、患側の腕を後方へ大きく動かさなければ袖を通せません。着るときの順序が「着患」に反しています。
覚えるポイント
- 更衣は脱健着患です。脱ぐのは健側から、着るのは患側からで、衣服のゆとりを患側のために使うのが理由です。
- 左片麻痺では健側が右、患側が左です。右大脳半球障害で起こることが多く、左半側空間無視や着衣失行を伴うことがあります。
- 麻痺側の肩は亜脱臼を起こしやすいので、手先を引っ張らず、肘や前腕を支えて、衣服を腕に沿わせて通します。
- 点滴やルートのある腕、骨折・創傷のある側は患側と同じ扱いにします。脱ぐときは反対側から、着るときはその側から通し、輸液バッグは袖に先に通します。
- 片麻痺のほかの原則も一緒に押さえます。杖は健側の手で持ち、階段は昇りは健側、降りは患側の足から出します。車椅子は健側に置いて移乗し、食事介助は健側の口角から行います。
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