111PM089|第111回 看護師国家試験 過去問
修正型電気けいれん療法について正しいのはどれか。2つ選べ。
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正解: 3・5
正答
3.筋弛緩薬を用いる。
5.薬物治療抵抗性のうつ病 depression は適応になる。
この問題のポイント
電気けいれん療法(ECT)の「修正型」が、従来の方法の何を改めたものかを問う問題です。修正型は、静脈麻酔薬による全身麻酔と筋弛緩薬を用いて、全身のけいれんと骨折などの合併症を防ぐ方法です。あわせて、代表的な適応(薬物治療抵抗性のうつ病など)と、現在よくみられる有害事象(一過性の健忘や頭痛など)を整理しておくと、すべての選択肢を判定できます。
解説
電気けいれん療法とは
頭部に置いた電極から短時間通電し、脳に人為的な発作活動を起こさせて精神症状を改善する治療です。発作そのものが治療効果に関わると考えられていますが、作用機序はまだ完全には解明されていません。
「修正型」は何を修正したのか
かつての従来型(非修正型)は、麻酔を使わず、意識のある状態で通電していました。そのため全身に強直間代けいれんが起こり、脊椎の圧迫骨折、関節の脱臼、歯や舌の損傷が起こりました。患者の恐怖心も大きな問題でした。
修正型では、次のような手順でこれらを防ぎます。
- 短時間作用型の静脈麻酔薬で全身麻酔を行い、意識を消失させる
- 筋弛緩薬(スキサメトニウムなど)を投与し、骨格筋の強い収縮を抑える
- 筋弛緩により自発呼吸が止まるため、マスクで酸素を投与し換気を補助する
- 心電図、血圧、SpO2、脳波を監視し、発作が起きたことは脳波で確認する
- 通電時に咬筋が直接刺激されて強く噛みしめるため、マウスピースを入れて歯と舌を守る
現在は、通電量を抑えられるパルス波治療器を用いるのが主流です。治療は一般に週2〜3回行い、計6〜12回程度を1クールの目安とします。
適応
- 薬物治療抵抗性のうつ病
- 強い希死念慮や拒食・低栄養があり、速やかな改善が必要な重症うつ病
- 昏迷、緊張病
- 躁状態や薬物抵抗性の統合失調症
- 副作用のため薬物療法が難しい高齢者や、妊娠中の患者
ECTは効果の発現が薬物療法より速い一方で、再燃が少なくありません。そのため、改善後も薬物療法や維持ECTで再発予防を図ります。
有害事象と注意点
頻度が高いのは、頭痛、筋肉痛、悪心、治療直後のもうろう状態・せん妄、記憶障害(前向性・逆行性健忘)です。多くは一過性ですが、治療前後の出来事の記憶が一部戻らないこともあります。
通電直後には迷走神経刺激による徐脈が、続いて交感神経刺激による頻脈や血圧上昇が起こります。このため、心血管疾患のある患者では注意が必要です。絶対的な禁忌はないとされますが、頭蓋内圧亢進(脳腫瘍など)、最近の心筋梗塞や脳卒中、脳動脈瘤などは危険性が高く、慎重な判断が求められます。
看護に生かす
治療前は次の点を確認します。
- 十分な説明と同意を得る
- 全身麻酔に準じて絶飲食とする
- 義歯・眼鏡・装飾品を外し、排尿を済ませる
- バイタルサインを確認する
治療後は次の点に注意します。
- 覚醒するまで意識、呼吸、循環を観察する
- 飲食の再開は、覚醒と嚥下を確認してからにする(誤嚥防止)
- ふらつきによる転倒を防ぐ
- 健忘や混乱に対して、見当識を支える声かけと繰り返しの説明を行う
選択肢の確認
1.磁気を用いる。:磁気で脳を刺激するのは反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)であり、修正型電気けいれん療法は電極から電気を流して発作を起こす治療です。rTMSは、頭皮上に当てたコイルから発生させた磁場で大脳皮質(うつ病では主に左背外側前頭前野)を刺激します。麻酔は不要で、けいれんは治療に必要なものではなく、避けるべき副作用です。日本でも、抗うつ薬で十分な効果が得られないうつ病に用いられています。同じ「脳刺激療法」として混同しやすいため、区別して覚えましょう。
2.局所麻酔下で行う。:修正型は、短時間作用型の静脈麻酔薬による全身麻酔下で行います。筋弛緩薬を使うと呼吸筋も麻痺して自発呼吸が止まるため、意識のある状態では行えません。また、頭皮への局所麻酔では、通電の苦痛も全身の筋収縮も防げません。「全身麻酔と筋弛緩薬がセット」であることが修正型の条件です。
3.筋弛緩薬を用いる。:正答。筋弛緩薬で骨格筋の強い収縮を抑え、骨折や脱臼を防ぐことが「修正型」の核心です。筋弛緩薬は四肢の筋収縮を抑えますが、脳の発作活動そのものは起こるため、治療効果は損なわれません。発作は脳波で確認します。スキサメトニウムによる筋線維束収縮が、治療後の筋肉痛の一因になります。
4.発生頻度の高い有害事象は骨折である。:骨折、とくに脊椎の圧迫骨折が問題になったのは、麻酔も筋弛緩薬も使わない従来型の場合です。修正型では筋弛緩薬によって骨折はまれになりました。現在頻度が高いのは、頭痛、筋肉痛、悪心、治療直後のもうろう状態、記憶障害で、多くは一過性です。従来型の合併症と、修正型の有害事象を取り違えないようにしましょう。
5.薬物治療抵抗性のうつ病 depression は適応になる。:正答。複数の抗うつ薬を十分な量と期間使っても改善しないうつ病は、ECTの代表的な適応です。強い希死念慮や拒食で生命の危険がある場合、昏迷や緊張病のように速やかな効果が必要な場合も適応になります。改善後は再燃予防の治療を続けることも押さえておきましょう。
覚えるポイント
- 修正型電気けいれん療法は、全身麻酔(静脈麻酔薬)+筋弛緩薬+酸素投与・換気補助で行い、脳には発作を起こしつつ全身のけいれんを抑えます。
- 骨折・脱臼は、主に従来型(非修正型)の合併症です。修正型で頻度が高いのは、一過性の健忘・もうろう状態、頭痛、筋肉痛、悪心です。
- 主な適応は、薬物治療抵抗性のうつ病、希死念慮や拒食の強い重症うつ病、昏迷・緊張病、薬物療法が難しい高齢者や妊婦です。効果の発現は速いものの、再燃予防が必要です。
- 磁気を用いるのはrTMSで、麻酔が不要で、けいれんを起こさせない治療です。ECTとの違いを区別します。
- 看護では、治療前の絶飲食と義歯などの除去、治療後の意識・呼吸・循環の観察、誤嚥と転倒の防止、健忘への配慮が重要です。
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