111PM095|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部 MRI 検査で、脳腫瘍 brain tumor と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。脳腫瘍摘出手術の結果、膠芽腫 glioblastoma と診断され、Aさんは放射線療法と抗癌薬内服による化学療法を行うことになった。放射線療法を開始して1週後、Aさんが頭皮のかゆみを訴えたため、副腎皮質ステロイド軟膏が処方された。Aさんへの説明として適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.「軟膏は放射線照射前に拭き取ってください」

この問題のポイント

頭部への放射線療法中に起きた放射線皮膚炎(頭皮のかゆみ)について、ステロイド軟膏の使い方と照射部位の皮膚の守り方をどう説明するかを問う問題です。手がかりは「放射線療法を開始して1週後」「頭皮のかゆみ」「副腎皮質ステロイド軟膏が処方された」の3点です。判断の鍵は、照射部位の皮膚に機械的・温熱・化学的な刺激を加えないこと、そして照射前には皮膚表面に何も残さないことです。

解説

事例の整理

Aさんは38歳の女性です。膠芽腫の摘出術を受けたあと、放射線療法と抗癌薬内服による化学療法を併用しています。膠芽腫は神経膠腫の中で最も悪性度が高い腫瘍(WHO分類グレード4)です。術後は、放射線療法とテモゾロミド内服を併用する治療が標準的に行われ、照射は6週間程度続きます。

開始1週後はまだ治療の初期です。頭皮のかゆみは、照射部位に起こる急性有害事象である放射線皮膚炎の初期症状と考えられます。照射が進むにつれて症状は強くなることが予想されるため、今後も続けられるセルフケアを説明することが求められます。

放射線皮膚炎と脱毛の経過

放射線は、細胞分裂が盛んな組織に早く影響を与えます。皮膚では表皮の基底細胞、頭部では毛母細胞が障害されます。

  • 初期には乾燥、かゆみ、発赤がみられ、多くは照射開始から2〜3週ごろに目立ってきます。
  • 進行すると色素沈着や乾性落屑が起こり、さらに湿性落屑やびらんへと進むことがあります。
  • 頭部への照射では、毛母細胞の障害により照射野に一致した脱毛が起こります。
  • 急性の皮膚反応は照射終了の前後から終了後1〜2週ごろに最も強くなることが多く、その後数週間かけて回復します。
  • 晩期には、皮膚の萎縮、色素沈着、毛細血管拡張が残ることがあります。

照射部位のスキンケアの原則

照射部位の皮膚は弱く傷つきやすい状態です。刺激を避け、清潔を保つことが基本です。

  • 機械的刺激を避けます。こすらない、掻かない(爪を短く切る)、カミソリを使わない、帽子や枕カバーは柔らかい素材にする、といった工夫です。
  • 温熱刺激を避けます。熱い湯、ドライヤーの温風、カイロなどは使わないようにします。
  • 化学的刺激を避けます。低刺激のシャンプーとぬるま湯でやさしく洗い、パーマ液、ヘアカラー、整髪料は控えます。
  • 紫外線は帽子などで防ぎます。
  • 照射位置を示す皮膚のマーキングは消さないようにします。

軟膏を照射前に拭き取る理由

軟膏が皮膚に厚く残ったまま照射すると、軟膏の層が組織と同じように放射線を受け止めます。その結果、皮膚表面の線量が高くなる現象(ボーラス効果)が起こり、皮膚炎を悪化させるおそれがあります。酸化亜鉛など金属を含む外用薬は、特に照射前の使用を避けます。

そのため、軟膏は照射後に薄く塗り、次の照射前には拭き取るよう説明します。拭き取るときもこすらず、ぬるま湯で湿らせたガーゼなどで押さえるように取り除きます。

ステロイド外用薬でかゆみと炎症を抑えることには、掻き壊しによる二次的な皮膚損傷や感染を防ぐ意味もあります。テモゾロミドには骨髄抑制があり、化学療法中は易感染状態になりやすいため、皮膚のバリアを守る看護の重要性はさらに高まります。

実践での視点

Aさんは38歳の働く女性です。頭部の脱毛は外見の変化としてボディイメージに大きく影響します。脱毛の時期や再生の見通しを事前に伝え、帽子やウィッグの準備を一緒に考えるなど、心理面への支援も必要です。

選択肢の確認

1.「定期的に髪の毛をそります」:カミソリで髪をそると頭皮に目に見えない細かな傷ができ、放射線で弱った皮膚の損傷や感染の誘因になるため勧めません。照射部位の毛は放射線による脱毛で抜けることが多く、あえてそる必要もありません。脱毛が起きたら帽子やスカーフで頭皮を保護し、刺激と紫外線を避けるよう説明します。外見の変化への心理的配慮もあわせて行います。

2.「かゆみが強いときは温めてください」:温めると皮膚の血流が増え、炎症とかゆみがかえって強くなるため逆効果です。熱い湯、ドライヤーの温風、カイロなどの温熱刺激は避けるよう指導します。かゆみが強いときは、冷水で絞ったタオルなどで冷やしすぎない程度に軽く冷やし、処方された外用薬を使うよう説明します。温罨法が有効な場面(筋緊張の緩和など)と取り違えないよう注意します。

3.「軟膏は放射線照射前に拭き取ってください」:正答。皮膚に軟膏が残ったまま照射すると、ボーラス効果で皮膚表面の線量が高くなり、皮膚炎を悪化させるおそれがあります。軟膏は照射後に塗り、照射前にはこすらずにやさしく拭き取るよう説明するのが適切です。

4.「かゆみは放射線照射の終了日にはおさまります」:放射線皮膚炎は照射終了と同時に治まるものではありません。終了前後から終了後1〜2週ごろに最も強くなることが多く、その後数週間かけて回復します。開始1週でかゆみが出ているAさんは、照射が続くにつれて症状が強くなる可能性があります。事実と異なる見通しを伝えると、症状が続いたときに不安や医療者への不信を招きます。症状が続く見通しと、その間の対処方法を伝えることが大切です。

覚えるポイント

  • 放射線の急性有害事象は、細胞分裂が盛んな組織(皮膚の基底細胞、毛母細胞、粘膜、骨髄)に出やすいです。
  • 放射線皮膚炎は照射開始から2〜3週ごろに目立ち始め、終了前後〜終了後1〜2週ごろに最も強くなり、数週間かけて回復します。
  • 照射部位の皮膚には、機械的刺激(こする・掻く・カミソリ)、温熱刺激(温める・熱い湯・ドライヤーの温風)、化学的刺激、紫外線を避けます。かゆみには軽い冷却と処方薬で対応します。
  • 軟膏やクリームは照射後に塗り、照射前には拭き取ります(ボーラス効果で皮膚表面の線量が高くなるため)。皮膚のマーキングは消しません。
  • 頭部照射では照射野に一致した脱毛が起こります。多くは一時的ですが高線量では永久脱毛になることもあり、ボディイメージへの支援が必要です。
  • 膠芽腫は最も悪性度の高い神経膠腫で、術後は放射線療法とテモゾロミド内服の併用が標準的です。骨髄抑制による易感染にも注意します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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