111PM094|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部 MRI 検査で、脳腫瘍 brain tumor と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。帰室後の看護として適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.ベッドの頭側を挙上する。
この問題のポイント
開頭術(脳腫瘍摘出術)直後の看護を問う問題です。手術の侵襲で脳浮腫が起こりやすい時期なので、頭蓋内圧を上げない体位管理と、頭蓋内圧亢進の徴候を見逃さない観察が判断の鍵になります。各選択肢について、頭蓋内圧を下げる方向に働くか、上げる方向に働くか、危険な徴候を見過ごすことにならないかを考えると正答にたどり着けます。
解説
開頭術後に起こりやすいこと
Aさんは脳腫瘍を摘出するために開頭術を受けました。脳組織を操作・切除する手術では、術後に脳浮腫や術野からの出血が起こることがあります。脳浮腫は術後2〜3日ごろに最も強くなりやすいとされます。
頭蓋内は硬い頭蓋骨に囲まれ、容積が限られています。脳実質・血液・脳脊髄液のどれかが増えると、はじめは他の成分が減って代償しますが、限界を超えると頭蓋内圧が急に上がります。頭蓋内圧が上がると脳灌流圧(平均動脈圧−頭蓋内圧)が下がって脳虚血が進みます。さらに進行すると脳ヘルニアを起こし、生命に関わります。このため術後看護の中心は、頭蓋内圧を上げる要因を取り除くことと、亢進の徴候を早く見つけることの2つです。
頭蓋内圧を上げない管理
- 体位:ベッドの頭側を15〜30度程度挙上し、頭頸部を正中位に保ちます。頸静脈から心臓への静脈還流が促され、頭蓋内の静脈血量が減って頭蓋内圧が下がります。ただし上げすぎると血圧が下がり、脳灌流圧も下がるため、指示された角度を守ります。
- 頸部の屈曲・回旋を避ける:頸静脈が圧迫されると静脈還流が妨げられます。枕の高さ、頸部の固定具、気管切開チューブの固定ひもの締めすぎにも注意します。
- 胸腔内圧・腹腔内圧を上げない:排便時の努責、激しい咳嗽、長時間の吸引は頭蓋内圧を上げます。緩下薬で排便を調整し、吸引は短時間で行います。
- 呼吸管理:低酸素血症や高二酸化炭素血症は脳血管を拡張させ、頭蓋内圧を上げます。気道を開通させ、十分な換気を保ちます。
- 体温・疼痛・不穏:発熱は脳の代謝と酸素消費を高め、脳浮腫を悪化させます。疼痛や不穏も血圧と頭蓋内圧を上げるため、鎮痛と安静の確保が大切です。
頭蓋内圧亢進の観察
次の項目を継続して観察します。
- 意識レベル(JCS・GCS)
- 瞳孔径と左右差、対光反射
- 麻痺の有無
- 頭痛・嘔吐、けいれん
- バイタルサイン
頭蓋内圧亢進が進むと、脳幹の虚血に対する反応として、収縮期血圧の上昇(脈圧の拡大)、徐脈、呼吸の異常が現れます。これをCushing(クッシング)現象(Cushing徴候)といいます。脳ヘルニアが切迫している危険な徴候なので、気づいたら直ちに医師へ報告します。副腎皮質ホルモン過剰によるCushing症候群とは別のものです。
正答に至る判断
4つの選択肢のうち、頭蓋内圧を下げる方向に働き、術後の標準的な看護として適切なのは頭側挙上だけです。ほかの3つは、頭蓋内圧を上げる要因を放置する、危険な徴候を見過ごす、または頭蓋内圧を直接上げる対応です。臨床では、挙上の角度、頸部の位置、体温、バイタルサインの変化を一体として観察することが、術後の急変を防ぐことにつながります。
選択肢の確認
1.発熱時の冷罨法は禁忌である。:開頭術後の発熱は脳の代謝と酸素消費量を高め、脳浮腫と頭蓋内圧亢進を悪化させます。そのため冷罨法は禁忌ではなく、積極的に行う看護です。頸部・腋窩・鼠径部など、太い血管が体表近くを通る部位を冷やすと効率よく解熱できます。ただし冷やしすぎて悪寒戦慄(シバリング)が起こると、熱産生と酸素消費がかえって増えます。震えが出ないよう観察しながら行います。発熱は創感染や髄膜炎の徴候のこともあるため、創部の状態や髄液漏の有無もあわせて確認します。
2.徐脈時は経過観察とする。:開頭術後の徐脈は、頭蓋内圧亢進によるCushing現象の一部として現れることがあり、様子を見てよい所見ではありません。血圧上昇(脈圧の拡大)、呼吸の異常、意識レベルの低下、瞳孔不同を伴っていないかを直ちに確認し、医師に報告します。ショックや出血では頻脈と血圧低下が起こります。頭蓋内圧亢進では血圧が上がって脈が遅くなるという、逆の組み合わせになる点を区別して覚えます。
3.ベッドの頭側を挙上する。:正答。頭側を15〜30度程度上げると、重力によって頸静脈からの静脈還流が促され、頭蓋内の血液量が減って頭蓋内圧が下がります。挙上するときは頭頸部を正中位に保ち、上げすぎによる脳灌流圧の低下を避けます。脳室ドレーンなどを留置している場合は、角度を変える前にドレーンをクランプします。角度を変えた後は、設定圧の基準点(外耳孔など)を合わせ直してから開放します。
4.頸部を前屈させる。:頸部を強く曲げると頸静脈が圧迫されて頭部からの静脈還流が妨げられ、頭蓋内圧が上昇するため、開頭術後は避けるべき姿勢です。枕の高さを調整し、頸部は正中位に保ちます。頸部を前に曲げる操作は、項部硬直(髄膜刺激症状)の確認手技や、腰椎穿刺の体位でも登場するため混同しやすいです。しかし術後の体位管理とは目的がまったく異なります。なお、頭蓋内圧亢進が疑われる状態では、脳ヘルニアを誘発するおそれがあるため腰椎穿刺そのものが禁忌です。
覚えるポイント
- 開頭術後は頭側を15〜30度挙上し、頭頸部を正中位に保ちます。静脈還流が促され、頭蓋内圧が下がります。
- 頭蓋内圧を上げる要因は、頸部の屈曲・回旋、努責、咳嗽、長時間の吸引、発熱、疼痛・不穏、低酸素・高二酸化炭素血症です。
- Cushing現象は、血圧上昇(脈圧拡大)・徐脈・呼吸異常の3つです。脳ヘルニア切迫のサインなので直ちに報告します。ショック(頻脈・血圧低下)とは逆の組み合わせです。
- 術後の発熱にはクーリングを行い、シバリングを起こさないよう注意します。
- 術後の観察項目は、意識レベル、瞳孔と対光反射、麻痺、頭痛・嘔吐、けいれん、バイタルサイン、ドレーン排液です。
- 頭蓋内圧亢進が疑われるときは、腰椎穿刺は禁忌です。
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