111PM096|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部 MRI 検査で、脳腫瘍 brain tumor と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。放射線療法と化学療法が開始されて10日が経過した。Aさんはガーデニングの趣味があり、庭が気になるため週末の外泊を希望し、主治医から許可が出た。外泊にあたりAさんへの説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 3・5

正答

3.「ガーデニングの時は手袋をしてください」
5.「性交渉の時はコンドームを使用してください」

この問題のポイント

放射線療法と化学療法の開始から10日目の患者が外泊するとき、自宅で守るべきセルフケアを判断する問題です。鍵は「開始から10日」という時期です。この時期は抗がん薬による骨髄抑制が現れやすく、感染しやすい状態にあると読み取ります。そのうえで、感染予防(土壌の微生物への対策)と、体液に排泄される抗がん薬からパートナーを守る曝露対策の2つの視点で選択肢を検討します。

解説

事例から読み取る情報

Aさんは38歳の女性で、夫と2人で暮らしています。脳腫瘍の開頭摘出術を受けたあと、放射線療法と化学療法を受けています。悪性神経膠腫などでは、術後に放射線療法と抗がん薬を同時に行う治療が標準的に行われます。判断に必要な情報は次の4点です。

  • 治療開始から10日:殺細胞性抗がん薬による好中球減少は、一般に投与後7〜14日頃に最低値(ナディア)となります。
  • 妊娠可能な年齢で、パートナー(夫)と同居している:抗がん薬の体液への排泄と、避妊が問題になります。
  • 趣味がガーデニングで、庭を気にしている:外泊中に土に触れることが予想されます。
  • 主治医から外泊の許可が出ている:外泊そのものを制限するのではなく、安全に過ごす方法を具体的に伝える場面です。

骨髄抑制期の感染予防

好中球が減ると、細菌や真菌に対する防御力が大きく低下します。脳腫瘍では脳浮腫を軽くするために副腎皮質ステロイドが使われることも多く、免疫がさらに抑えられます。また、脳腫瘍に対する放射線と抗がん薬の併用ではリンパ球が減りやすく、ニューモシスチス肺炎の予防薬が使われることもあります。

土壌や腐葉土、堆肥には、アスペルギルスなどの真菌、ノカルジア、破傷風菌などが存在します。土いじりでは、胞子を吸い込むことと、手指の小さな傷から菌が入ることの両方が問題になります。さらに血小板が減っていれば、小さな傷でも出血が止まりにくくなります。そのため、ガーデニングでは次のことを指導します。

  • 手袋を着用する
  • 必要に応じてマスクを着用する
  • 作業後は石けんと流水で手を洗う
  • 傷ができたら清潔にして報告する

加えて、頭部に照射している時期は頭皮が敏感です。屋外では帽子などで直射日光を避けることも伝えるとよいでしょう。趣味を禁止するのではなく、安全に続ける方法を示すことは、患者のQOLと治療意欲を支える看護になります。

抗がん薬の曝露対策と避妊

抗がん薬とその代謝物は、投与後しばらくの間、尿・便・吐物・汗・精液・腟分泌液などに排泄されます。多くの指針では、少なくとも投与後48時間程度を目安に注意するとされています。内服薬を毎日服用する治療では、その期間中ずっと注意が必要です。性交渉の際にコンドームを使うことで、パートナーが薬剤に曝露されることを防げます。

また、抗がん薬や放射線には催奇形性などのリスクがあります。治療中と治療後一定期間は確実な避妊が必要であることも、あわせて説明します。家庭内では、トイレは蓋を閉めてから流し、汚れた衣類は分けて洗うことも指導項目です。

正答に至る判断

外泊指導の2本柱は「感染予防」と「抗がん薬の曝露対策」です。土壌の微生物から身を守る手袋の着用(選択肢3)と、パートナーへの曝露を防ぐコンドームの使用(選択肢5)が、いずれにも合致する適切な説明となります。

選択肢の確認

1.「入浴は控えてください」:入浴やシャワー浴で皮膚を清潔に保つことは、骨髄抑制期の感染予防の基本なので、控えるよう指導するのは不適切です。頭部の照射部位(頭皮)については、こすらない、低刺激の洗浄剤を使う、熱すぎる湯を避ける、照射位置のマーキングを消さない、といった注意を加えて入浴を勧めます。発熱時や強い倦怠感があるときに一時的に控えることはありますが、一律に禁止する理由はありません。

2.「食べ物の制限はありません」:好中球が減っている時期は食品を介した感染にも注意が必要なので、制限がないという説明は適切ではありません。刺身・生卵・加熱不十分な肉、殺菌されていない乳製品、カビを用いたチーズ、長時間置いた作り置きは避けます。十分な加熱、新鮮な食材の選択、調理前後や食前の手洗いを指導します。極端な無菌食までは必要ないとされていますが、基本的な食品衛生の注意は欠かせません。

3.「ガーデニングの時は手袋をしてください」:正答。土壌には真菌や細菌が多く含まれており、手袋で皮膚の傷からの侵入と手指の汚染を防ぎます。作業後の手洗い、必要に応じたマスクの着用もあわせて指導します。血小板減少時の切り傷による出血を防ぐ意味もあります。

4.「発熱を伴わない咳は様子を見てください」:好中球減少時やステロイド使用中は炎症反応が弱く、肺炎があっても発熱が目立たないことがあるため、様子を見るよう伝えるのは危険です。咳は、ニューモシスチス肺炎を含む肺感染症や、抗がん薬による間質性肺炎の初期症状であることもあります。発熱がなくても、咳・息苦しさ・悪寒・倦怠感などが出たら早めに病院へ連絡するよう指導します。

5.「性交渉の時はコンドームを使用してください」:正答。抗がん薬とその代謝物は精液や腟分泌液などの体液にも排泄されるため、コンドームでパートナーへの曝露を防ぎます。38歳で妊娠の可能性がある年齢であり、治療中と治療後一定期間の確実な避妊が必要であることも説明します。

覚えるポイント

  • 殺細胞性抗がん薬による好中球減少は、投与後7〜14日頃にナディア(最低値)を迎えやすく、この時期の外泊指導は感染予防が中心になります。
  • 発熱性好中球減少症は、好中球数500/μL未満(または1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満になると予測される状態)で、腋窩温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を伴うものです。発熱がなくても感染徴候があれば早期に連絡します。
  • 骨髄抑制期の生活指導は、手洗い・マスク・人混みを避ける、入浴で清潔保持、生もの・加熱不十分な食品を避ける、土いじりは手袋とマスクで行い作業後に手洗い、が基本です。
  • 抗がん薬は尿・便・吐物・汗・精液・腟分泌液に排泄されます。家庭では、トイレの蓋を閉めて流す、汚染衣類を分けて洗う、性交渉時はコンドームを使う、治療中は避妊する、を指導します。
  • 放射線の照射部位の皮膚は、こすらない、刺激を避ける、直射日光を避ける、マーキングを消さない、が原則です。
  • 外泊指導では、趣味や生活を一律に禁止せず、安全に続けるための具体的な方法を伝えることがQOLの維持につながります。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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